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宮田織物

（織元・袢天メーカー/福岡県・筑後市）

https://miyata-orimono.co.jp/

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宮田織物株式会社は、1913年に久留米絣の機織りをしていた宮田サカヱさんが創業し、現会長である息子の宮田智さん、智さんの娘で3代目の吉開ひとみさんへと引き継がれています。智さんは久留米絣の需要に陰りが見え始めた1958年に、久留米絣の着尺の小幅織機から洋裁用の広幅織機へ大きく転換します。1965年からは代名詞となるわた入れ袢天の製造を開始。繊維産業が海外に移行し厳しい状況の中、綿100％の生地を主軸において袢天だけでなく洋服まで一貫生産を行い販路を広げます。「見えないところに手を抜かない」の信念を大切にし、一本の糸選びから、生地のデザイン、織り、縫製など、試験生産から本生産まで一貫して行っています。木綿の織物久留米絣の織元としてのルーツを汲みながら、時代とともに柔軟に変化し、機械による効率化と手仕事が融合した新たな布作りに取り組み続け、筑後地域の織物産地の中で重要な一角を担っています。

■ 素材：調湿と保温。天然繊維の綿の特性を生かす

宮田織物は、創業から一貫して「綿」という素材にこだわった、ものづくりを続けています。綿（コットン）は、綿花の種子から採れる塊状の天然繊維で、繊維の内部に空洞があるため、調湿効果や保温性に優れており、昔から重宝されていた素材です。宮田織物では、袢天や洋服に使うオリジナルの綿織物を自社で織っているほか、「綿入れ袢天」の中綿も、筑後市の布団綿メーカーの新川桂株式会社と共同で、独自のブレンドで生産しています。外からは見えない中綿ですが、袢天の着心地や質の違いを生む重要な素材。綿100%・綿80%+ポリエステル20%・真綿(絹)100%など、厳選した素材で値段に応じた配合を行なっています。
※「真綿」は植物繊維の綿（コットン）ではなく、蚕の繭を茹でて綿状にした絹繊維（シルク）のこと

■ 技術：手作業と機械の融合で、宮田織物しかできない織物を

1958年頃、小幅シャトル織機から広幅織機への転換をはかった宮田織物。現在、工場では46台のレピア織機と、3台の広幅シャトル織機が稼働しています。織機には「綜絖（そうこう）」という、たて糸の動きや表情を左右するパーツがありますが、宮田織物ではこの綜絖を駆使した技術と手作業により、他のメーカーでは真似できないような模様や立体感のある織物を生み出しています。また袢天づくりに関しては、背中や裾など補強しながら手で中綿を入れ、ひと針ひと針手縫いで綴じています。外からは見えませんが、裏地・中綿・表地を貫通させながら縫っていくことで、着用していても中綿が落ちない質の高い袢天が作られているのです。

■ 土地性・思想：次世代に「綿」の先染め織物を残すために

江戸時代、福岡県南部の筑後地方では少量ながらも綿栽培がされており、「有馬木綿」と呼ばれていました。1800年初頭頃からは、織る前に糸をくくって染めることで柄をつくる綿織物「久留米絣」が作られはじめ、綿産業の産地として発展していきます。そんな筑後で久留米絣の織元として創業した宮田織物は、1960年代に久留米絣を織らなくなってからも「綿」というアイデンティティを大切にし、「綿入れ袢天」という新たな特産品を生み出しました。現在は、これまで培われた技術と土地の伝統を大切にしながら、新たな技術やニーズも取り入れ、次世代に先染めの綿織物を残していくための商品開発や取り組みを続けています。

※あくまでもうなぎの寝床が解釈する、つくりてのものづくりへの思いや思想です。