【考えたこと】百貨店でも物の裏側を知る機会をつくることが必要。

熊須碁盤

必要なものは、もう必要ない。
機能的には。

年に1、2回、百貨店に伺って販売する機会を与えてもらってます。その時に、展示の最初か最後に、ぐるーっと百貨店の中を回ったりするのですが、物でいうと、ちゃんとした物はたくさんあります(当たり前か)。でも、なんだか僕にとっては物足りないのです。なんでだろう。それは売る為に並べられているから。大体値札と物が並べられていて終わりという形が多いです。それは物産展でも一緒です。

すご腕まな板屋(副業)から学ぶこと。
まな板のことなら、僕に聞いてくれ。

僕らの隣でまな板屋さん(本業は将棋盤、囲碁盤をつくる工房 / 熊須碁盤店)が販売をしているのですが、お客さんは足をとめ、じゃんじゃん買って行きます。何故かというと、トークが最高に上手いから。僕もまな板の説明は大体できるようになりました。まな板はたてに立てるのはダメです。木には木目というものがあって、木が立っているとしたら、垂直の方向に板がとられており、木は根っこから水を吸い上げ、葉に水を行き渡らせます。なので、縦方向は水を吸いやすい。まな板を縦方向に置くと、横方向より3倍も水を吸って、すぐ黒ずみの原因となるようです。まな板屋さんは、黒ずんで変えてもらった方が儲かるから、ちゃんと教えない。

次に、板目のまな板と柾目のまないた。板目はタケノコのような模様がでる方で、柾目は線がスーット通っているもの。戸建住宅にすんでいる方は柾目でも板目でもどちらでも良いです。マンションの3階以上の方は柾目でしかダメです。何故かというと、柾目より板目の方が木が狂いやすく、マンションも上にいけばいくほど乾燥が進むからだそうです。

さらに、もう一つ、このまな板は榧(かや)の木を使われています。「檜(ひのき)千年、槇(まき)万年、榧(かや)限りなし」と呼ばれるほど固くて水に強く腐れにくい気です。そして、黒ずみにくい、香りもよい。この榧という木は幻の木と呼ばれていて、全然採れないようです。この工房は本業は将棋盤や囲碁版なので、その材をとったあとに残ったものでまな板をとるので、手に入るようです。

さらにさらに(なんかジャパネット高田みたいになってきました)、もう一つ強みが。この工房は削り直しを無料でやってくれます。今は大工さんが鉋を持たなくなったので、削れる人がいなくなりました。この工房は一度買ってもらったら、家にあるまな板どれでも削ってくれます。さらにさらにさらに、このまな板は、東京で有名な老舗の料亭やお寿司屋さん、誰もが名前を聞いたことがあるような名店(今回は名前を伏せますが)でも使われているまな板です。

まだまだ言えることはたくさんあるのですが(まな板やか!!)、今日はこの辺のしときましょう。

ま、と言ったことをまな板の霊がとり憑いたイタコさんのように永遠とお客さんに話続けます。

結局、人は自分で物を判断できない。
では、作り手や仲介のお店が、
しっかりと材の特徴や使い方、工程を
伝えるべきではないか?

この熊須さんは素晴らしいと思いました。どれも的確な情報です。ちょっとキャッチな情報ももちろん営業トークとしてありますが、実際に生活に役に立つ知恵と、作り手としての技術、材の見極め、バランス良く話をされます。何度聞いても聞き入ってしまう感じです。そして僕も覚えてしまいました。

これは、営業トークというより、技術と知恵と知識の裏付けからきているものだと思います。平安時代からの碁盤の流れと、自分で作る技術からくる、木の特性への体感的理解。それが説得力と自信になって、お客さんに伝わっていると思います。その根底には、商売という側面と、まな板、樹に対するちゃんとした知識をお客さんに教えて、育てるという意識が両方ともあると思います。

僕らも、百貨店だと思い、物(もんぺ)だけを展示していましたが、やはりくくり糸や、綿の状態。世界の絣(インドやグアテマラ)、書籍、そしてもんぺの歴史を知れる資料。その辺をしっかり展示して、説明しなくてはなりません。熊須さんのおかげでいろんな気づきがありました。僕らは、物を販売したくてやってるんじゃないです。やはりその背景をしっかり理解してもらうことのために、物を販売する。そのスタンスに百貨店であれ、自分達のお店であれ、ちゃんと取り組まないといけないなと痛感しているところです。

ということで、来年のもんぺ博覧会や、百貨店での催事のスタンスが見えてきました。百貨店の方とも話しているところです。少しずつ修正しながらがんばっていこうと思います。ではでは。おわり。

白水

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