木葉猿窯元
木葉猿は、熊本県玉名市玉東町の木葉山山麓で作られている、猿の形をした素焼きの土人形です。歴史は非常に古く、約1300年前「虎の歯(このは)の里」に侘住まいをしていた都の落人が、夢枕に立った老翁のお告げにより奈良の春日大明神を祀り、木葉山の赤土で祭器を作って残りの粘土を捨てたところ、それが猿に化けたという伝説から生まれたと言われています。江戸時代、玉名は宿場町だったこともあり、木の葉猿は土産品として全国に広まります。型を使わず指先だけで粘土を捻る「手びねり」で作られ、馬乗猿、飯喰猿、子抱猿、など様々な種類のものがあります。かつては無彩でしたが、赤、青、白の彩色が施されています。素焼きの荒いタッチの素朴さと、とぼけた味わいが特徴で、厄除け、子孫繁栄の縁起物として親しまれています。現在、木葉猿を継承しているのは木葉猿窯元の一軒のみで、7代目永田禮三さん・英津子さん夫妻と、夫妻の娘で8代目の川俣早絵さんが制作にあたっています。
■ 歴史・土地性 : 木葉の赤土から生まれた猿。豊前街道を介して全国へ
養老7年(723年)の元旦に、都の落人が見た夢が起源とされる木葉猿は、1300年前の伝説と同じように現在でも地元の赤土を使って作られています。玉名や隣接する荒尾は小代焼など窯元も多く、焼き物作りに適した土地でもあります。その後玉名は、肥後(熊本)から豊前小倉に至る「豊前街道」が通る宿場町として発展。大名行列が行き交う参勤交代の道になったこともあり、賑わいを見せました。木葉猿は宿場町の土産物として全国に広まり、1916年の全国土俗玩具番付では「東の横綱」にも選ばれるほどでした。木葉猿は、悪病・災難除け、夫婦和合、子孫繁栄の守り神として、地元では古くから大切にされてきた存在なのです。
■ 素材・技術 : 手びねりで形作られ薪窯で焼く、土着的な郷土人形
木葉猿は、他の多くの土人形と異なり、型を使わない「手びねり」であることが大きな特徴の一つです。土練機でよく練られた赤土の粘土を、指先だけでひねって形を作り、目や指などの細部は自製の竹のヘラを使って削っていきます。その後、3日から1週間ほど乾燥させ、昔ながらの薪窯で素焼きします。素焼きの段階では赤茶色をしていますが、最後に煙をいぶして焼く「いぶし焼き」によって、黒っぽい色合いに仕上がります。もちろん薪窯の特性上、均一に焼き上がらないこともあり、赤茶色と黒がまだらに表れるなど、一体ごとに個性があることも味わいにつながります。さらに絵付けをする場合、白を基調に赤や青の絵の具を使って独特な模様を描いていきます。指先で一つずつ形作られ、命を吹き込まれた木葉猿には、何か不思議な土着的な力が宿るのかもしれません。
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