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【#7】 香川の手袋 – ひとつの産地の成り立ち事例 – UNA DIGTIONARY vol.7

【産地】
1. ある物品を産出する土地。生産地
2. その土地の特徴を知るきっかけになるもの
3. そのものがつくられるようになった経緯をたどるきっかけになるもの

今回のうなDIGTIONARY #7 では「手袋の産地・香川県」を通して、うなぎの寝床が考える「産地」の捉え方について少し掘ってみようと思います。

全国各地、また世界にも色々なところに大なり小なり様々な「産地」があります。「産地」という言葉はよく耳にする言葉だと思いますが、そもそも産地ってなんだろうとか、どうやって始まったんだろうということは、知っているようで実はよく知らないことも多いです。または、考えてみたこともないということもあります。
「産地」の始まりは、単に生活に必要なものを身近な材料を使って作っていたものだったり、運搬という地の利があったということや、海や山や川など資源が豊富な場所だったり、といった色々な要素と関係があります。
うなぎの寝床は、九州のものに加え他の地域の商品も少しずつ取り扱いを始めています。各地にある色々なものを集めることは、産地形成のパターンの事例を集めるということでもあります。産地形成のパターンは、規模の大小あれど、ものづくりがどうやって発展してきたのかの「事例」のようなものだと思っています。

今回は、うなぎの寝床が考える「事例」の一つ、手袋の産地香川県について紹介します。

目次
◯ 手袋県 香川県
◯ 改めて「手袋」について
◯ 手袋の産地になるきっかけとは?
◯ 事例は資料
◯ おわりに
◯ 香川の手袋3社(手袋商品一覧はこちら

手袋県 香川県

あなたが普段使っている手袋はどこで作られたものでしょうか。その手袋が日本製であれば9割は香川県で作られたものです。

うどん県として知られる香川県は、実は「手袋県」でもあり、現在手袋の国内生産の9割を占めているのが県の東側、東かがわ市とその周辺地域です。現在香川県内、福田手袋株式会社株式会社クロダ株式会社ダイコープロダクトの3社の手袋をうなぎの寝床では取り扱いしていますが、同じ産地内でも材料や用途など3社それぞれに違った特徴があります。同じ産地内のいくつかの特徴があるものを紹介することで、産地の一部だけではなく産地全体の特徴や幅を知ることができます。

改めて「手袋」について

手袋の主な目的は手の保護として人の手を暑さや寒さ、危険物から守ることや装飾品としての用途です。

手袋といえばまず防寒用が思い浮かびますが、軍手を代表とする作業用の手袋や、家庭用ゴム手袋、食品用の手袋、レジャー用手袋や医療用手袋、そして様々な専門職用の手袋など多くの手袋の種類があります。また特に欧米諸国では、王族や貴族など権威の象徴でもあります。13世紀頃から女性の間ではドレスとともに着用する絹やリネンの刺繍などの装飾が施された手袋が流行し、現在も手袋はファッションの一部として捉えられ着用されます。そのため日本に比べてカラフルな色合いのものが好まれるということもあるようです。日本では鎌倉時代に鎧の籠手(コテ:腕から手の甲までを守る防具)として発展します。江戸時代にはオランダなど欧米諸国からもたらされたメリヤス手袋が武士の間に広まり、幕末になると手袋作りは下級武士の内職にもなりました。現在はスマホ対応手袋も登場しています。

手袋産地になるきっかけとは?

では、香川県はなぜ手袋産業が盛んになったのでしょうか。

産業として香川県で手袋作りが行われるようになったのは明治時代のことです。両児舜礼(ふたごしゅんれい)と妻タケノから手袋作りは始まります。舜礼は東かがわ市のお寺の副住職で、二人は駆け落ち同然で大阪に移り住みます。大阪に移り住んだ後、生計を立てるために近所のメリヤス製品の縫製を手伝っていましたが、舜礼は商人などの情報から今後メリヤス手袋の需要は高まると確信してメリヤス手袋の製造に専念します。その後故郷から棚次辰吉などを呼び寄せて事業拡大を目指し、舜礼が病気で急死した後は、棚次辰吉が遺志を継ぎ、タケノとともに事業を続けていきます。

その頃故郷である東かがわは地場産業が落ち込んでいました。香川県は温暖で降雨量が少なく製糖業や製塩業が発達した地域でしたが、砂糖も塩も海外からの輸入が増えたことで生産量が減少していき、これらの産業に従事していた人たちの生活も苦しくなっていきます。そんな故郷の人々から相談を受けた辰吉は、手袋製造の技術とともに故郷へ戻り、タケノとともに手袋工場を創業し、ここから東かがわでの手袋製造がスタートします。その後、第一次世界大戦による産業としての基盤確立や太平洋戦争後の復興などを経て香川県を代表する産業へと成長していきました。

事例は資料

夫婦二人の生業からスタートした手袋製造が、国内生産の9割を占める産業として現在も続いているという産地形成の事例として、手袋の産地香川県を紹介しました。

産地形成のきっかけは、生業としてそこにあったものの場合も多くあり、またこの他にも武士の内職から始まり今も続いているものや、農家の閑散期に作られていたもの、一次産業の副産物など、そのいろいろなものが土地の利や環境、戦前戦後などの時代背景などのいくつもの条件と関係しながら発展していきました。これまでにうなDIGTIONARYで紹介してきた、陶磁器やムーンスターの靴なども事例の一つ一つとしてみることができます。

  1. 磁器(【#2】 磁器 – 石が化けたもの –・・・江戸時代に朝鮮からきた陶工が有田で陶石を発見し、磁器産地として発展
  2. ゴム産業(【#3 / #4】 地域に根ざしたゴム靴メーカー・・・長崎で学んだ座敷足袋の技術を久留米に持ち帰り、後にゴム底付きの地下足袋製造を開始。ゴム産業として発展
  3. 陶器(【#6】 陶器 – 土が化けたもの –・・・日本全国、やきものに適した土があるところに人が集まっていき陶器が焼かれるようになり、それぞれに特徴をもった産地として発展

耳に新しい「アマビエ」もこの先どこかで疫病退散のお守りとして作り続けられたりするかもしれません。九州北部豪雨復興支援プロジェクトの一貫としてデザイン、製作された「おきあがりこぼし」は朝倉地方の被災杉を使って作られた玩具です。ゆくゆくは朝倉地方の郷土玩具になってほしいとの思いも込められています。このようなアマビエやおきあがりこぼしが、この先今この時が歴史の一部となった時に産地としてや、その土地の工芸品として登場するものになるのかもしれません。

産地形成のきっかけというのは、一見すると難しそうに思うことも案外シンプルなことがあります。知ることで、それまで思っていたことと事実とのギャップを埋められることがあります。産地形成の事例を集めることは、ものづくりの未来を考えるうえで参考になる資料を集めることでもあります。また、知ってもらうことでギャップを埋めて理解しやすくなったり、きっちりではなくざっくり分類したりすることで、世の中にあるものをシンプルに見ることができるようになるのではないかとも思います。うなぎの寝床は、うなぎの寝床なりの方法で世の中の事象の読み解き方を模索しています。

おわりに

今回は手袋県香川県を例として紹介することで、「産地」について掘り下げてみました。
「産地」をものづくりの発展の仕方の「事例」としてみるという一つの視点を加わることで、ものづくりのその先を考えることに繋げることができるのではないかと考えています。うなぎの寝床は、八女市に拠点を構え九州のものを中心に紹介することからはじめ、現在は他の地域のものも取り扱いを始めています。九州のものを取り扱うだけでは、技術や産地の特徴、産地の成り立ちについてなど、伝えきれないことや他の産地を見ないと知ることができないことがあります。九州に限らず、他の地域のものも取り扱いを始めて紹介していくことで、ものを通していろいろな地域のことや土地、産地について知ってもらうきっかけを作ることができればと思います。

うなぎの寝床はものを通して知るきっかけを増やしたり、興味を持つ入り口を増やしたりする、きっかけ屋や入り口屋のような側面も持ちつつ活動していければと考えています。

2021年2月記

【うなぎの寝床で取り扱う香川の手袋3社】

福田手袋株式会社 / 香川県東かがわ市

https://unagino-nedoko.net/product/tax_maker/fukudatebukuro/
1. 1913年(大正2年)創業の老舗手袋メーカー
2. 各工程を専門の職人の手作業で仕上げる繊細で高品質な手袋
3. 色合いが豊富で使い心地の良い女性用ファッション手袋を製造

株式会社クロダ / 香川県東かがわ市

https://unagino-nedoko.net/product/tax_maker/kuroda/
1. 1974年(昭和49年)創業の手袋メーカー
2. 革製手袋を主とした高品質レザーファッション手袋を製造
3. オリジナルデザイン手袋の企画から販売まで自社一貫生産

株式会社ダイコープロダクト / 香川県さぬき市

https://unagino-nedoko.net/product/tax_maker/daiko/
1. 1963年(昭和38年)創業の手袋メーカー
2. 消防士や電気技師などが使用する特殊用途作業用グローブやアウトドア用のグローブになどを中心に製造
3. 培った技術を活かした高機能かつファッション性のある男性向け手袋を製造

過去現在を知り、明日を想像してみる?

ひと昔前ではそれぞれの暮らしに沿った等身大のものづくりがなされていて、困った時に必要なものを準備することがサイクルとして無理なく存在していたのだと思います。物を生み出すので、ある意味では産地なのだけれど、意味合いが今のそれとは少し違いそうです。始まりはどうであったとしても、一人二人の規模から徐々に様々な要因で大きくなったり、分業したり、そのままの規模だったり。

とある人から、地元が焼物の町で親戚中が何らかの形で焼物の仕事に関わっていた、と聞いたことがあります。ひとつの大きな産業があると一つの町の中がそのようになるのかとそれを聞いて驚いた記憶があります。よくよく考えたら私の親の出身地も畜産が盛んな町なので親戚は畜産に関わる人ばかりでした。田舎の方や、都会でも空襲などを免れた場所では、ひと昔前の人の繋がりやものづくりの繋がりが何かしらの形で手掛かりとしてまだ存在しており、今でもその形を見ることができることもあります。産地は突如始まったわけではないので、それらの歴史を紐解き、類推してみることでその地域だけでなく、各地の理解が深まることもあります。人が考えることなので、きっかけや起こりは意外と似たり寄ったり。旅の僧侶、鉱山、石炭、殿様、海山川、火山、基地、港、鉄道、戦争、産業革命、丁稚、舶来、インターネットなどなど。

交流・交易により、人(思考と身体と人格)、技術、素材(資源)が交わり、時代に合わせてある部分は更新され、新たなものや仕事が生まれ続けてきたのだとしたら、そこから地域文化のひとつの側面がぼんやりと見えそうな気がします。この先どうなるかわからない明日を想像をするのに、産地ってなんだ?というところにも視点を置いて、九州や日本の各地、海外のものを取り扱いしてみようと思います。

キュレーション 春口

【うなDIGTIONARY】とは

うなぎの寝床が掘って掘って(調べて聞いて)得た情報や知識を、うなぎの寝床の視点を通しつつ記録していくものです。日々活動していく中で、商品やつくり手、産地、素材について調べたり、聞いたりすることで情報を得ていきます。ある情報を知ると、そこから別の情報を知るきっかけを発見したり、疑問が浮かんできたりします。そして、また調べて情報や知識を得ることができます。リサーチして得た情報は次へ次へと繋がっていきます。今後も深く深く掘り続けていきたいと思うので、手にした情報は随時更新していきたいと思います。この「うなDIGTIONARY」を通して、何かを掘り始めるきっかけを手にしてもらうことができれば幸いです。

* DIGTIONARYは、DIG(掘る)とDICTIONARY(辞書)を掛け合わせた造語です。