【旧寺崎邸】 陶ぼう空 府川和泉さんの器

会期
2023.5.11 (木) 〜2023.5.29 (月)

うなぎの寝床 旧寺崎邸

店休日
火、水(祝日営業)
営業
11:00〜17:00
住所
福岡県八女市本町327
電話
0943-24-8021
駐車場
10台

【旧寺崎邸】 陶ぼう空 府川和泉さんの器

土、窯、薪、炎がつくる一点もの
使って完成する器

ど・れ・に・し・よ・う・か・な、と迷ってしまうのが府川さんの器。

同じように作られていても、土、窯、薪、炎、自然の力を借りて生まれてくる器は同じではありません。薪で焼く登窯で作られる陶ぼう空 府川さんは、自然ととも生き、土が生まれ変わって喜ぶような器作りを目指してされています。器との付き合いに慣れていないと、この器にはどういうものを盛り付けるのが良いのだろうと難しく考えてしまいますが、府川さんと話していてもそこにはこだわりがなく、「自由に使って欲しい」と言わます。府川さんの気を衒わずにつくられた器は、使う人の気持ちが入る余白があるのかもしれません。

唐津焼には「作り手8分、使い手2分」という言葉があり、作って完成ではなく使って初めて完成するという考え方があります。陶器はどういう使い方をするかによって経年変化の仕方が違ってきます。もし気に入る器に出会えれば、それは他に同じものはない私のために生まれてきた器とも言ってもよいのではないかなと。日常での使い方により、さらに自分の器になっていく。そういう一点ものの楽しみが府川さんの器にはあると思います。

5月のうつわ特集では、陶ぼう空の器をギュギュっと展開してご紹介します。飯碗、マグカップ、そばちょこ、焼酎カップ、小鉢、お皿、酒器、花器などが並びます。絵唐津、黒唐津、朝鮮唐津、斑(まだら)唐津、三島など技法も様々です。是非店頭にて手に取ってお気に入りを見つけてみてください。

<開催概要>

旧寺崎邸
会期 : 2023/5/11(木) 〜 5/29(月)
時間 : 11:00 〜 17:00
住所 : 福岡県八女市本町327 旧寺崎邸 1F
定休⽇:火・水
展示・販売 : 碗、皿、カップ、酒器、花器など

 

豊臣秀吉と朝鮮陶工と唐津焼
自然と共にある府川さんの器づくり

唐津焼は豊臣秀吉の朝鮮出兵を機に連れてこられた朝鮮の陶工達によってもたらされた技術によって隆盛し、その流れは浮き沈みがありながらも続いており、現在も多くの唐津焼の陶芸家がいます。そんな中で府川さんは古唐津と呼ばれる16世紀後半の創世記の唐津焼を手本に、唐津の素材を集めて粘土や釉薬を作り、薪を割り、土を練り成形し、薪で焼く登り窯で器を作っています。

佐賀県唐津市七山という場所で作陶されている府川さんとは、14年ほど前に知人の紹介でお手伝いすることになった府川さんの個展で知り合いました。唐津へは器を買いに行ったことはありましたが、実際に陶器を作っている方と会うのは初めてで、工房にもお邪魔して色々とお話を聞きました。

それから4年後にうなぎの寝床を立ち上げると決めた時、改めて挨拶しに行って取り扱いをさせて頂くことになりました。それから仕入れのたびに府川さんの抹茶碗でお抹茶をいただきながらお話しします。上に書いた「作り手8分、使い手2分」や「灰かぶり」「景色」など陶器を語る時に使われる言葉に出会い、登窯での焼成というものがどういうものかを少しずつ知りました。その会話の中で「自然に作らせてもらっている」というようなことを言われていたのが印象に残っています。実際に作品、工房の佇まい、暮らしからもその意思が感じられるし、キッチリしすぎず適度に力の抜けたところがある府川さんから人間味のある自然を感じます。実際に作品は同じものでも微妙に一点一点違うので、自分好みを見つけて使う楽しみがそこにはあります。府川さんの器からは唐津の技法の幅や薪窯の焼成などによる表現だけではなく、近代化し均一化することで見えずらくなった焼き物の奥深さの一端が見れるのではないかと思っています。

 

府川さんと地域文化の関係図

府川さんの器を通して地域文化をどうみていくのか。最初のきっかけはうなぎの寝床の立ち上げ前だし、その視点を持って選んだわけではありませんが、府川さんの唐津焼を20代半ばに知って良いなと思い(自分が渋いものが好みだったとも言えますが)、使いやすさを感じていたのは間違いありません。その後いろいろな窯元も見ていましたが、普段使いの唐津焼の入り口として府川さんの器はバランスが良いと思っています。さらに府川さんの唐津焼の器や仕事との向き合い方などを通して、佐賀県唐津を中心とした地域の文化、茶陶文化などにも繋がれるものがあると考えています。

今の地域文化商社という呼び方はうなぎの寝床を開業してから4~5年ほど経って見えてきた言葉です。その間にいろんなジャンルの作り手の方々と出逢いがありました。陶磁器で言うと九州の焼物文化のこと、唐津焼の歴史的な位置付けや土地のこと、土や薪を自ら集めて登り窯で器を作る府川さんの取り組みを知り、少しずつ地域文化が立体的に見えてきています。

九州の中だけをみても、個人の陶芸作家から、職人を抱えている窯元、有田・波佐見焼などの産地内で分業して職人仕事として焼き物を作る産地など幅広く多様です。一貫生産もあれば、細分化すると生地の専門、絵の専門、型の専門、焼く専門、そういう陶器の仕事の世界も知りませんでしたし、まだ紹介しきれていません。それは今でも続いていますし、今後もあちこちで知ったことが繋がって、その結果、地域文化とはなんぞや?の輪郭がよりはっきりと見えてくるのではないかとの仮説を立てながらその探索を続けています。自分が生まれる前から土地の風景の中に存在し暮らしの中にも当たり前にあった陶器から、人とその土地、風土の中にある営みを感じられることに面白みを感じています。そしてそれが今も使えるものとして器があるということにも。

陶磁器を比べることで見えてくる、良し悪し、好き嫌い、強い弱い、合う合わない、高い安い。使うか使わないかは自分次第ですが、唐津焼の器の個性を知ることで次の良き出会いのきかっけになることを願っています。

 

*「灰かぶり」というのは薪の窯ならではで、焚き口近くの器に薪が燃えた後の灰がかぶって、その部分だけが埋もれて表面の表情が変化する「窯変(ようへん)」の一種です。それは窯の中の出来事なので焼成を終えてみないと仕上がりがわからないコントロールのできないものです。また焼き上がりの表情、釉薬の流れなどを「景色」と呼びます。

 

九州を中心に約25軒
特別な時間に使うお気に入りを

今年は少しずつうなぎの寝床で取り扱っている器を紹介していきます。
パッと見の派手さがないものが多いですが、日々の生活に寄り添う器として魅力があるものを備えています。

店頭でたまに聞かれるのが「何を入れるものですか?」という質問。特に決まりがあるものではないので、飯椀に煮物など入れて小鉢のようにつかっても良いですし、蕎麦猪口だけどお茶でもジュースでもコーヒーでもなんでも良いですという答えになってしまいます。実際には用途をイメージして作られているものではありますが、それに囚われすぎず、自由に付き合ってよいものです。作者とお話ししても、「それはご自由に。」という返答が多いです。難しいことを考えずに、着せ替え人形のように今の食事をただ盛り付け変えるだけで、日々の食卓の何かが変わるはずです。

ご飯、パン、味噌汁、スープ、目玉焼き、パスタ、カレー、紅茶、コーヒー、お茶、酢の物、煮物、揚げ物、サラダ、おひたし、冷奴、ポテチ、ケーキ、おまんじゅう…。一人や家族、友人と楽しむ時の器、音楽鑑賞、ゲーム、読書、趣味のお供になる器、昼食でインスタントのカップスープを入れる器、デスクワークの相棒としての器などなど。

毎日付き合う道具の中にお気に入りを少し取り入れることで、より充実した日々になるのではないかと思います。うなぎの寝床の食器コーナーで日々付き合える特別な器が見つかると嬉しいです。

その一方で、人と土地の関係性や過去を紐解く糸口になる器たちでもあると考えています。
奥深い焼き物の世界の入り口として、現在九州のつくりてを中心に約25軒の陶磁器を取り扱っています。個人の作家や専門の職人を抱える工房、産地で分業しているものづくりまで様々です。簡単にいうと、陶磁器は原料を成形して施釉や加飾をして焼いたら出来上がります。ただ原料、成形、釉薬、加飾、焼成の選択肢は多岐にわたります。土を掘ってきて粘土作りからしているところもありますし、製法はろくろや型、鋳込みなどがあり、釉薬も天然のものや化学的なもの、焼成方法はガス、薪、電気など、技術と経験や勘、時には自然に委ねて、それぞれが目指す物を作り続けています。それらは数百年前から続く技術の上に成り立っていますし、時代の変化で近年生まれた技術もあります。時代のニーズや資源不足などの環境の変化でそれぞれの変遷を経て、現代に受け継がれているものです。それは今も変わらず、みなさんが日々直面しているようにつくりても試行錯誤を続けています。その先には未来を考えるヒントも潜んでいるはずです。

うなぎの寝床では陶磁器を通して、日々の食卓の風景と地域文化とはなんぞやを見つめていきます。

春口

▷関連する読み物
うなDIGTIONARY  【#6】 陶器 – 土が化けたもの –

 

【店頭うつわ特集】 陶ぼう空 

うなぎの寝床 旧寺崎邸

店休日火、水(祝日営業)
営業11:00〜17:00
住所福岡県八女市本町327 (会場アクセス
電話0943-24-8021
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展示・販売

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