どうも、春口です。仕入れの時に考えていることの記録を”地域文化採集記”として記していきます。
“地域文化”って何だろう?と日々考えながらモノを通して地域文化のことを見るようにしています。その視点でうなぎの寝床で取り扱わせてもらっているモノを選ぶようにしているのですが、その探している過程を言葉にすると採集という言葉が合っているような気がします。蝶々のようにヒラヒラとどこかに飛んでいってしまうものを追いかけているような…答えがあるわけではない地域文化をどうやって顕在化するか、実態があるモノですが”人と自然の関わりから生まれる現象の総体”としての文化の断片、端のないパズルのピースを集めるような感覚に近いです。あると言えばあるし、見ようとしなけれれば無いとも言えます。知らないものは、その人にとっては世の中に存在しないのと同じなので、まずは”存在を知れた”にたどり着くための手がかりを大切にしたいなと思っています。点と点を見つけて、それらを繋げて、線、面、立体へと、地域文化への理解が深め、地域文化をつなぐ活動に繋げようとカケラ探しをしています。繋がりが見えにくい物事が多く、よく見ようとしないと見えてこないので、長くやっていると見る癖のようなものが身についてきている気がします。そのせいか採集癖(くせ)、が癖(へき)化してきたかもしれません。そんな採集癖の記録としてつらつらとまとめていきたいと思います。
食とモノ
いのちとの繋がり
さて、突然ですが、「食育」って言葉がありますけど、「モノ育」ってあまり聞かないですよね。「食育」という言葉が浸透して、命をいただくことに関心が高まる一方で、身の回りの「モノ」がどこから来たのかを知る機会は減ってるなと。そういえば「木育」は聞ききますね。 今日紹介する宮崎県産黒毛和牛のレザーブランド”NO SIGN”のことを考えていて、ふと「モノ育」という言葉が湧いてきました。食べること(食育)と同じように、使うもの(モノ育)の背景にある技術や素材のルーツ、さらに命のつながりまで広げることもできるよなーと。以前(数十年前?)は町工場や個人の職人さんが身近にいて、そこらで遊んでいるとか生活していたら見かける機会が多かったし、誰が、どこで、どんなもので作っているかが見えていたでしょうけれど、工場の大規模化や海外移転、IT化によって、自分たちは「モノの正体」が見えない環境に暮らすようになって久しいんだなと…。
うなぎの寝床では、モノ=商品+情報の2つで考えていて、さらに商品=機能+価格、情報=歴史+土地性+素材+技術+思想(つくりての考え)という捉え方をしています。商品価値は当然大事なのですが、情報価値に重きを置いています。一見不要とも捉えられる情報価値から商品価値の流れを意識しており、その情報を伝える手段として、”地域文化につながるモノ”を店舗で紹介しています。 NO SIGNは、宮崎という土地で、食の循環から抜け落ちていた和牛の「皮」が、「革」になり、情報価値をまとって現代に新しく生まれた「食とモノ」や「命」との関係がみえる稀有な製品だと捉えています。そんなNO SIGNについて紹介していきます。

野球グラブと「未利用資源」
なぜ”NO SIGN”が宮崎で生まれたかと言うと、ボールパークドットコムという野球関連の施設運営やバットなどの野球関連商品を扱う会社に辿り着きます。宮崎県は毎年プロ野球チームがキャンプをする場所として、読売巨人軍、福岡ソフトバンクホークス、埼玉西武ライオンズ、オリックス・バファローズ、広島東洋カープ、千葉ロッテマリーンズの6つのチームが県内各地でキャンプが実施する野球にも馴染みのある県です。その宮崎県で、2017年に開催された東京六大学野球オールスターゲームをきっかけに、地元の宮崎県産黒毛和牛に着目してその皮でグラブを作ろうと考え、県内外の事業者と協力して最初の和牛革グラブが誕生しました。今では WAGYU JBというグラブ・ミットとして日本のプロ野球選手やメジャーリーガーなどにも愛用者がいて高い評価を得ています。
さらっと和牛の革をグラブにしたと書きましたが、実はその黒毛和牛の革は元々すぐ使える革があったのではなく、その革を作るところからスタートしています。宮崎県産の和牛が県内の屠畜場で屠殺(とさつ)され、食肉用として加工されて流通します。それが国内外各地の飲食店などで美味しく調理され人々の胃袋へ消えていきます。一方で食肉加工された際に端材として出る皮は海外へ出されていたようで、国内では利用されていなかったとのこと。そこで、ボールパークドットコムの代表 山内さんが国内では未利用であった皮を革として使えるように、牛皮の鞣し(なめし)ができる技術を持つ兵庫のタンナーへ送り、革として使える状態に仕上げて、グラブ開発に繋げました。

産地の純度
陸の孤島だからできること
宮崎県は交通の便が悪く、よく「陸の孤島」と言われます。宮崎出身の私もたまに言います。そんな陸の孤島だから、このグラブの革は宮崎県産黒毛和牛革と言えるようです。他県の屠畜場は隣県が近いため県を跨いで牛が持ち込まれるのですが、宮崎の屠畜場は県内の牛しかその屠畜場には来ないとのことで、勝手にトレーサビリティ(追跡可能性)が保たれると言う珍しい環境だったようです。食文化と地理的環境、畜産現場がつながり素材の出生が保たれていました。 その皮がタンナーの技術力により、和牛の特徴である細やかな筋繊維に適度な脂分を残すことで、強度や耐久性がほど良く、軽量で型崩れしにくく、しなやかな粘りのある革に仕上げられています。
実は国内で流通しているグラブのほとんどは一般的に海外の牛の革が使われており、グラブに適した革の堅さや性質であると言われています。一方で和牛は海外の牛より身体が一回り小さく、革の採れ高が悪いことや鞣しの扱いにくさなどからあまり使用されてこなかった背景があったようです。 その希少な素材を使い、グラブの製作技術を奈良県で身につけた職人を抱えて宮崎県でグラブ作りの工房を立ち上げて製作をしています。グラブ作りが軌道に乗る一方で、グラブを作る際に型抜きをした後の残革やしわ、キズ痕などなどで使用できない革も出てしまいます。せっかくの貴重な革もグラブに使えず廃棄にするにはもったいないのでどうしたものかと模索していました。そこでそれも味として活かそうと生まれたのが”NO SIGN”です。

グラブ革から生まれた
NO SIGN
NO SIGNはしなやかさと美しい艶を持つ、 希少な素材黒毛和牛の革を使った財布やバッグなどの革小物を中心に、日常使いできるWagyu Leatherのブランドです。NO SIGNとは野球用語で「あなたに委ねるから自由にしていいよ」の意味。和牛革の余りに価値を新たに与えて生まれたモノ、それがいいかどうかはあなたの感性で手に取って判断して欲しい。そういう思いから名付けられています。食と繋がる革として、モノ育?的な視点でもユニークさがあるレザーブランドだと思っています。
現在アクロス福岡店にて展開中です。一部期間限定品がありその後は常設します。きめ細やかな革の質感を確かめに、ぜひアクロスへお越しください。
バイヤー 春口

NO SIGN|The Made in Japan — 革が製品になるまで

▷こぼれ話◁
余談ですが、宮崎牛ではなく宮崎県産黒毛和牛と言い続けていますが、宮崎牛は肉になって等級が4、5等級以上といった肉としての価値に対する名前なのだそうです。県庁の畜産課で教えてもらいました。なので、肉塊に加工されるまで宮崎牛かどうかわからないとのこと。知らないとついつい宮崎牛革!と言ってしまいそうです。
さて、食文化とものづくりの関係の視点でうなぎの寝床で紹介している商品から二つほど例を挙げると、熊本県南関町の”竹の、箸だけ。”のヤマチクは孟宗竹を使ってお箸づくりをされています。いま筍狩り真っ盛りですね。アク抜きに手間が入りますが、炊いたり炒めたり天ぷらにしたり美味しい季節ですね。この頃の八女市近隣の道沿いには「たけのこ買います!!!」と缶詰工場の看板が空き地に立ってるので、あー季節が巡ったなと思います。孟宗竹は厚みがあり繊維が硬いので、お箸やヘラなどに加工されて生活用品として使われています。道具の資源として観点でも竹は育成が早いので消耗品に適したサイクルなのだなと思います。もう一つは、東京墨田区の豚革で革小物を作っているトウキョウレザーファクトリー。関東圏は豚食文化で近隣の県で育てられて豚が品川の屠畜場で屠殺されてお肉として各方面へ、皮は墨田区の方でなめされて革になるようです。品川・蒲田あたりにヤキトンの店が多いのもそう言うことみたいです。他にも繋がるものが色々と出てきますがこの辺にしておきます。
●【こぼれ話に関連する商品】
●春口のモスキートラジオ 音声配信
モスキートラジオ (spotify)
モノを通して地域文化を考える、福岡県八女市にある地域文化商社 ” うなぎの寝床 ” のバイヤー 春口が蚊の鳴くような声で、お店で取り扱っているモノとその周りの事を気ままに話します。伝統工芸、民藝、織物、編物、ガラス、木工、化粧品、靴、食品などなど。車中で喋ってるので雑音たっぷりでお届けしております。静かな場所でお聴きください。
●過去の視点関連の記事
●参考
宮崎大学農学部附属農業博物館 企画展示「新生 宮崎の畜産」
一般社団法人 全国肉用牛振興基金協会
その他のお知らせ
【新商品】lesbutte x うなぎの寝床 ゆるリブソックス 9色
【掲載情報】ことりっぷMahazie vol48 ちいさな列車旅
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【愛媛・大洲店】2026年3月、4月の運営について










