石と土からできるネイティブスケープ【1】陶磁器とクッキーって同じかも?

うなぎの寝床では、約30のつくりてによる陶磁器を取り扱っています。
「ざらざら」した肌触りの茶碗、「つるつる」した綺麗な絵付けのコップ、料理が映える白いお皿。毎日の食事でつかう「やきもの」である陶磁器は、身近にある「石と土」のひとつです。

日本の食文化では、椀物を手に持ち上げて食事をするなど器の手触りを楽しむ機会が多くあります。そのため、食卓で使用する器にこだわりを持つ人が多いのではないでしょうか。

今回は、私たちの身近にある「石と土」のひとつである「やきもの」について、バイヤー春口からの聞き取りをもとに考えてみると、やきものとクッキーの関係性がみえてきました。

 

■ 「石もの」と「土もの」、取り扱い方の違いは原料の違い

「やきもの」には「土もの」と呼ばれる陶器と、「石もの」と呼ばれる磁器があります。これらは器の原料の違いによって呼び分けられており、「土もの」の陶器にはざらざらしたものや色のある器が多く、「石もの」の磁器にはつるつるした真っ白のものや発色のよい色の柄・模様が施してあります。そしてガラスも、石に由来するものからできています。

このように原料が異なるために、同じ「やきもの」でもそれぞれの器によって扱い方が異なります。例えば、電子レンジが使用できるものと避けた方がよいものがあったり、使っていくうちにシミや臭いがつきやすいものもあります。

 

土が水を吸収するように「土もの」である陶器は水を吸収する性質があります。そのため、特に使いはじめは最初に触れる水分や油分を吸収してしまい、それがシミになったり、臭いやカビの原因になったりします。一方、石が水をはじくように、「石もの」である磁器とガラスは水分を吸収しにくい性質をもっています。

他にも、陶器は熱くなりにくく冷めにくいが、磁器は熱が伝わりやすく冷めやすいなどの異なる性質をもちます。このように、原料が異なるために陶器と磁器はさまざまな異なる性質をもちます。

 

■ 「土もの」はひと手間かけることで、長く楽しめる器

「土もの」である陶器になるべくシミをつくらずに、買った状態を維持したい場合は、器を使い始める前に「目止め」を行うとよいです。米のとぎ汁などのデンプン質の液体に器を浸け置き、器全体をデンプン質でコーティングすることで、シミや臭い移りを防ぐことができます。

もしくは、「目止め」は行わずに買ったものの経年の変化を楽しむこともできます。実際に、山口県の萩焼は「萩の七化け」などと言われ、長年つかうことによる器の変化を楽しむ陶器として有名です。もし万が一、割れてしまっても「金継ぎ」という日本古来の方法で修理することができます。

 

■ 小麦粉でクッキーをつくるように、粘土で器をつくる

「石もの」「土もの」の陶磁器づくりは、クッキーをつくるのに似ているかもしれません。クッキーは、小麦粉、バター、卵、牛乳などの原料を混ぜて生地をつくります。それを形づくってオーブンで焼き上げると、ぐねぐねした生地が固まって美味しいクッキーになります。材料であるバターや牛乳の割合や、焼くときのオーブンの温度の違いによって、サクサクしたものや、しっとりしたもの、こんがり色がついたものなど様々なものができます。

同じように器づくりでも、つくりたい器を考えて原料となる粘土を準備します。土に由来する粘土、石に由来する石英、長石などを粉々にした粘土の割合を考えて、粘土をつくります。それらで形をつくり、絵や模様をつけて窯に入れます。それぞれの粘土の比率や、窯の温度や焼き上げる時間などによって、焼き上がりに割れてしまったり、いろいろな色に変化したり、水が漏れにくく生活のなかで使える器ができます。

 

■ 地球の資源が化けたもの=やきもの

クッキーも器も、火で焼くことで化学変化が起きます。固まった後に、元に戻ることはありません。そして、焼かれることで、原料のなかに含む成分が化学変化し、色も変化します。クッキーでは、バターが含む脂肪や、卵が含むタンパク質が熱により変化します。器では、粘土が含む鉄やうわぐすりにつかう銅などが鉱物が熱により様々な色に変わります。クッキーをつくる人も、器をつくる人も化学自然界の物質を操る科学者なのです。

陶磁器は石と土、それが含む鉱物などの地球の資源からつくられます。そして、石は地球のマグマがゆっくりと冷え固まってできたもので、土は石が長い年月をかけて風化してできたものです。

クッキーを買うときに、どこの国の小麦粉でつくられているか確認するように、器を見るときも、どこで採れた石と土からつくられているのか、どんな鉱物が化けてこの色になったのかに思いを馳せながら器を見てみると、また違った楽しみ方ができるかもしれません。

 

企画展「石と土からできるネイティブスケープ展」では、福岡県八女市の土山口県萩市の石英玄武岩熊本県天草市の陶石など、各地域の石と土からつくられた器を展示・紹介しています。ぜひ、店舗にて「ざらざら」「つるつる」な各地域の石と土を触って感じてみてください。(研究員K)

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■ 参考

・うなDIGTIONARY #2 / 磁器 – 石が化けたもの –

・うなDIGTIONARY #6 / 陶器 – 土が化けたもの –

・萩焼協同組合 HP / 萩焼について

・パナソニックキッズスクール HP ふしぎの図書室 / 土と植物のふしぎ「土はどうやってできたの?」

・TED-Ed / クッキーの美味しい化学反応 ― ステファニー・ウォーレン(2013. 11. 10)

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