yohaku

カットソーブランド/東京都台東区

yohakuは衣服の製造・販売を行う株式会社サンカーベの自社ブランドです。1969年メリヤス(肌着類)のメーカーとして創業。秋田の自社工場で肌着の生地の生産、卸、アパレル向けOEMをやっていましたが、代表の渡辺展行さんが跡を継ぐ形で入社してからは徐々に自社製品に移行。2009年小売事業を開始、2012年yohakuを立ち上げました。東京の蔵前に店舗を構えています。うなぎの寝床のKATA Tシャツシリーズやもんぺしたはyohakuが作っています。自社商品は、余った生地や服が廃棄されていく現状を知った渡辺さんが日本でも低コストで服が作れるのではないか?と残布や残糸を使った再生シリーズをきっかけに始めました。また、各地の織物や染物の技術を伝える産直シリーズの取り組みも行っています。海外でも評価の高い日本のカットソー素材を身近に着て欲しいという思いから、ふと手が伸びる服、無意識に選ぶ服をめざし、できるだけ無駄のないやり方でコストを抑え、売る人、買う人、作る人に寄り添った服作りを行っています。

■ 歴史:OEMに危機感をもち、自社ブランドyohakuへの進化 

もともとyohaku代表の渡辺さんは、実家の裁断・縫製工場を継ぐ形で株式会社サンカーベに入社し、他社ブランドのカットソーを製造するOEM事業を担当していました。しかし、依存性の高いOEM主体の企業構造では自社の先が見えないと、渡辺さんは危機感を抱きます。そこで、当時の事務所で簡易的に製品の販売を始めました。これが自社ブランドyohakuを立ち上げた現在の形に繋がります。現場の人々との信頼関係を何よりも大切にする渡辺さんの方法は、工場の技術を全面的に信頼し、細かな縫製方法などは工場のやりやすいように製造してもらいます。これによって、生産効率も上がるのだそうです。コストを削減しながら、日本独自の手工芸も取り入れる、という実現が難しいと思われていた課題も、渡辺さんと工場の職人さんとの直接のやりとりによって可能にしました。こうした「人と人」の関わり合いで、yohakuは進化を続けています。

■ 素材:人が意識を向ければ「ゴミ」ではない 残反や茶綿からの再生 

ohakuの服作りは、工場の製造工程で出る残反(ざんたん)を使い自社企画の服を作る「再生」から始まりました。洋服を作る過程では、必ず裁断で使わない部分がゴミになってしまいます。そこでyohakuは、反毛 (はんもう) によって生地から綿の状態に戻し、再利用する「生地のセカンドライフ」、再生シリーズの取り組みを始めました。また、yohakuが扱う茶綿 (ちゃめん) は、カラードコットンと呼ばれる、種類によって異なるニュアンスの茶色のついたコットンです。現在はコットンと言うと白が主流ですが、白いコットンは染色のしやすさを求めて品種改良を重ねた結果生まれたものであり、コットンの原種は茶色いワタをつけていたと言われています。近年、ナチュラルでオーガニックな生活に注目が集まるにつれ、茶綿のよさも見直され始め、人気を集めています。 

■ 技術・土地性:時代や人は変化するからこそ、不安定さに向き合う 

素材や人、時代の流れで変わらざるを得ないものづくりは、常に同じものを安定して求められる「定番商品」をつくることが難しい、とyohaku代表の渡辺さんは話します。服作りの過程でも、付属品の価格高騰や、縫製で使っていたミシンの廃盤などの変化が起こります。だからこそ、yohakuは「安定したモノではなく、不安定なモノをつくる」ことを目標に、日本各地の工場や職人が持つ特色が活かすものづくりをしています。「にんげんのふく」や「かんかく」のシリーズには、一つ一つ手刷りで染める京都の「手捺染」、シャリンバイという樹木でやや赤みがかった泥色に染色する奄美大島・金井工芸の「泥染め」、岡山で活動するソメヤスズキの草木染、天然染料で染められた糸と旧式のシャトル織機によって生み出される広島の「備後節織」が活かされています。縫製には、秋田の自社工場が活躍します。同じ糸番手の同じ編み・同じ染色をしたとしても、僅かなブレや違いが生まれてできるyohakuの服は、まさに「捉えどころがなく流行に縛られない服」を表現しているのです。 

■ 思想:現場主義で、人と物の「余白」を心地よさに繋げる 

yohakuは「人と物の間にある空間(余白)をどう埋めるか、意識するかで「物」の見え方や感じ方が変わり、新たな人と物の繋がりが生まれるのでは」という想いで、ものづくりに取り組みます。代表の渡辺さんは、デザイナー主体で「製作が難しい服を低コストで大量に作る」という現状に疑問を感じ、従来の服作りとは違った、工場や職人が主体となる「現場主義」の服作りを思いついたそうです。服をデザインする側と作る側の距離を近くすることで、同じ編み機でも使う人によって異なる仕上がりになることや、収穫時期や場所で質が変わる植物としての綿の特徴といった「自然な不安定さ」を心地よさに繋げられるのではと考えます。東京の本社では、共有スペースでのワークショップなどを通して「開かれた場」として地域に発信できるよう、取り組みを続けています。 

※あくまでもうなぎの寝床が解釈する、つくりてのものづくりへの思いや思想です。

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