ミマツ工芸

木工デザイン/佐賀県神埼市

ミマツ工芸は、1972年に家具の部品を製造する会社として創業。筑後川をはさんで隣接する福岡県大川市とともに、家具づくりが盛んな産地にあり、主に婚礼箪笥の装飾やテーブルや椅子の脚の部品などを制作していました。しかし不況の波を感じるようになった2代目の実松英樹さんは、2008年に「大人のギフト」をテーマとしたデスクインテリア小物を手掛ける自社ブランド「M.SCOOP」を立ち上げます。ブランドを立ち上げ、外部のデザイナーと組んだことで、自分たちの持つ技術力を活かした製品が完成しました。長年家具の町で培われてきた部品製造の高い技術が反映された製品は、日々使用するけど家の中で埋もれがちな物に対して居場所を作り、「置く」という些細な行動と空間を少しだけ豊かにする、そうした空間を届けるギフトです。当初は海外の木材を使用していましたが、自分たちの環境に誇りを持ち、現在は佐賀県産の木材なども使用した物つくりを行っています。

■ 歴史・土地性:対岸の大川市と並び「木工のまち」へ 

佐賀県神埼市の中でも筑後川沿いのエリアは、1935年には旧国鉄佐賀線が開通したことで、全国的に有名な家具産地である福岡県大川市からの人の往来が増え、新たな木工技術が伝わりました。1955年には筑後川に諸富橋と大川橋が開通、交流がますます盛んになり対岸の大川市に次ぐ「木工のまち」として栄えた地域でした。ミマツ工芸は1972年、佐賀県の神埼市に家具の部品を受注して製造する事業所として創業。1989年には「有限会社ミマツ工芸」として会社が設立されました。ミマツ工芸は佐賀県で家具に関連した仕事を、という想いで「諸富家具振興協会」に入り、主に家具に施される彫刻の部品や、椅子のパーツ、テーブルのろくろ脚(曲線的な装飾が入った脚)などを製造していたそうです。しかし、時代とともに安価な輸入品や、シンプルなデザインの家具が好まれるようになり、売上が減少。その打開策として、自社ブランド「M.SCOOP」を2006年に立ち上げ、技術を生かした商品の販売を行っています。 

■ 素材:木の特徴を引き出すこだわりで、無駄のないものづくりに 

ミマツ工芸では、家具で主流のウォルナット材やチェリー材といった外国産の木材も使用しますが、佐賀の木や国産材を利用して、その魅力を引き出す製品を揃えています。小さなパーツを組み合わせて、木目を生かした製品をつくっているからこそ、結果的に木を無駄にしないことに繋がっているのだそうです。特に一本の杉の年輪をモチーフにした NENRINは、丸太で作っていた工程を小さなパーツを活かす現在の方法に変えてから、無駄に処分することが減ったのだそうです。木は、一本一本に個性があり均一な素材ではありません。さらに、使えるかどうかは切ったり割ったりしないと分からない上に、一度切ってしまうと後戻りもできません。こうした素材を扱うからこそ、木の特徴をどう生かしていくかという点にこだわったものづくりになっています。 

■ 技術:お洒落でユーモラス、しかし計算され尽くした「居場所」 

2代目の実松秀樹さんは「大人のギフト」というコンセプトを掲げ「こだわりの空間の提案」を実現しています。シンプルで上質な作りはもちろん、日本刀の刀置きをモチーフにしたペン置きなど、「置く」という動きをクスッと笑ってしまうような、ユーモアに溢れたデザインが特徴です。 M.SCOOPでは、元々の加飾仕事ではあまり使わなかった杉や檜といった国産材に着目し、その良さを引き出すために試行錯誤しています。例えば、NENRINや時計置きになるLeafのシリーズでは、どこにどの木目が使われるか、さらに木目がデザインの邪魔になっていないかまで緻密に設計します。こうした道具の「居場所」づくりは、ミマツ工芸の家具職人として培われてきた曲線美を生み出す技術はもちろん、木材の選び方から機械だけでは難しい小さなパーツの加工といった、細やかなこだわりに支えられているのです。

■ 思想:スタイリッシュさと佐賀への愛を両立し、さらなる心地よさを 

ものが溢れている現代だからこそ「ものの居場所」を作ってあげたい、という想いで始まったミマツ工芸の自社ブランド「M.SCOOP」。数年ごとに製品のテーマを更新していきながら、職人も進化し続けています。2000年代後半はシンプルなデザインにこだわり、震災後には愛着が深まる木製のもの、さらに海外での販売を通して「日本の素材」を使用する価値を見直してきました。製品の色にも佐賀へのこだわりを反映し、背振山をイメージしたグリーンや、稲を刈った後のベージュなど、工場の周りの風景からインスピレーションを受けた、こだわりのラインナップになっています。創業当時から追求するスタイリッシュさと、佐賀県産の杉やヒノキにこだわる地元愛の両立を実現したミマツ工芸は、心地よい暮らしの提案を続けていきます。 

※あくまでもうなぎの寝床が解釈する、つくりてのものづくりへの思いや思想です。 

参考文献:ミマツ工芸公式HP M.SCOOP、佐賀県産業労働部 流通・貿易課「諸富家具」

佐賀県のつくりて 全30社

佐賀県唐津市

ストリーム

婦人衣料 縫製
ストリーム ストリーム

株式会社ストリームは唐津市鏡山の麓で婦人服の縫製を行う工場で、2代目の堀尾隼さんが代表です。大手シャツメーカーで生産管理をしていた父の仁行さんが1989年に縫製…

佐賀県唐津市

唐津シャツ工房

シャツ縫製
唐津シャツ工房 唐津シャツ工房

唐津シャツ工房株式会社は唐津市街にあるシャツ専門の縫製工場です。1995年に力武正二さんらがアイディー工房として創業後、2017年に力武さんが社名を改め設立しま…

佐賀県佐賀市

副島硝子工業

手吹きガラス
副島硝子工業 副島硝子工業

1903年創業の副島硝子工業は、肥前びーどろを100年以上作り続けています。肥前びーどろは以前は佐賀ガラスと呼ばれ、昭和に入り肥前びーどろの名前が定着しました。…

佐賀県唐津市

陶ぼう空 府川和泉

唐津焼窯元
陶ぼう空 府川和泉 陶ぼう空 府川和泉

佐賀県唐津市七山で作陶をする府川和泉さんは1963年富山県生まれ。女子美術短期大学絵画教室で油絵を学びました。唐津焼に魅せられ、会社勤めを経たのち26歳で唐津市…

佐賀県神埼市

尾崎人形保存会

郷土玩具
尾崎人形保存会 尾崎人形保存会

尾崎人形は佐賀県神埼市神埼町尾崎西分地区に伝わる素焼きの人形です。県内の陶磁器の中で最も古く言い伝えによれば、鎌倉時代中期、蒙古(モンゴル帝国)が襲来した元寇の…

佐賀県鹿島市

のごみ人形工房

郷土玩具
のごみ人形工房 のごみ人形工房

のごみ人形は、佐賀県鹿島市で作られている郷土人形です。1945年、戦後の荒みがちな世の中を明るく楽しいものにという想いから、染色家の鈴田照次さんが作り始めます。…

佐賀県神埼市

KUSU HANDMADE

木材総合メーカー
KUSU HANDMADE KUSU HANDMADE

株式会社中村は1955年に、家具のまち福岡県大川市で木材販売会社として事業を開始します。その後化粧合板製造に着手し、株式会社中村ツキ板として法人化。1994年に…

佐賀県有田町

JICON

有田焼窯元
JICON JICON

今村製陶の「JICON 磁今」は、陶悦窯13代目今村博氏の次男、今村肇さんが2012年に立ち上げたブランドです。今村家は三川内焼の窯元で平戸藩の御用窯として代々…

佐賀県嬉野市

224porcelain

肥前吉田焼窯元
224porcelain 224porcelain

224porcelainは、温泉やお茶で有名な佐賀県嬉野市の陶磁器の産地「肥前吉田」で生まれた磁器ブランドです。かつての佐賀・長崎を「肥前」といい、自然や資源が…

佐賀県嬉野市

副千製陶所

肥前吉田焼窯元
副千製陶所 副千製陶所

肥前吉田焼の産地佐賀県嬉野市吉田地区では江戸時代より藩主による陶磁器産業の奨励のもと、日用雑器を中心とした磁器が盛んに焼かれました。副千製陶所は本家である副正製…

佐賀県佐賀市

飛鳥工房

諸富家具
飛鳥工房 飛鳥工房

佐賀県佐賀市諸富町にて、1986年から子供向けのおもちゃを製造している飛鳥工房。創業当初は家具の取っ手やつまみを作る加飾メーカーでしたが、娘さんが生まれたのを機…

佐賀県西川登町

江口人形店(弓野人形)

郷土玩具
江口人形店(弓野人形) 江口人形店(弓野人形)

佐賀県武雄市弓野地区は古くから窯業が盛んで、弓野焼や弓野人形などの焼物が作られていました。弓野人形は、博多人形師によって誕生します。人形師の原田亀次郎が博多人形…

佐賀県みやき町

ロイス

石鹸メーカー
ロイス ロイス

株式会社ロイスは「真空加圧製法」という独自の製法で石鹸を製造するメーカーです。この製法は従来の釜炊き製法や機械練り製法とは全く異なり、石鹸を90tの圧力で固めて…

佐賀県有田町

一新堂

貼箱専門メーカー
一新堂 一新堂

1956年に有田で創業した一新堂は、地場の工芸品である有田焼を運ぶためのダンボール梱包箱から始まりました。地場産業とともに発展しましたが、有田焼の出荷量が減少す…

佐賀県武雄市

へちまや群生舎

へちま農家
へちまや群生舎 へちまや群生舎

へちまや群生舎を営む相良さんのへちま畑は佐賀県武雄市にあります。武雄市は自然豊かな山があり、清らかな水が流れ、ホタルの里としても知られています。その地で完全無農…

佐賀県有田町

ヤマト陶磁器

有田焼商社
ヤマト陶磁器 ヤマト陶磁器

ヤマト陶磁器株式会社は1920年創業。有田焼を中心に肥前地区の焼物を企画販売しています。400年の歴史がある有田焼は江戸時代に佐賀県有田で生まれ、窯元が長年培っ…

佐賀県唐津市

紙漉思考室

手漉き和紙
紙漉思考室 紙漉思考室

紙漉思考室は、佐賀県唐津市七山にある手漉き和紙の工房です。運営する前田崇治さんは、土佐和紙に魅せられ産地である高知県で、手漉き和紙の知識や技術だけでなく道具や原…

佐賀県神埼市

ミマツ工芸

木工デザイン
ミマツ工芸 ミマツ工芸

ミマツ工芸は、1972年に家具の部品を製造する会社として創業。筑後川をはさんで隣接する福岡県大川市とともに、家具づくりが盛んな産地にあり、主に婚礼箪笥の装飾やテ…

佐賀県佐賀市

名尾手すき和紙

名尾和紙
名尾手すき和紙 名尾手すき和紙

創業1876年、佐賀県佐賀市大和町にある名尾手すき和紙。和紙の原料のひとつである梶の木の栽培から一枚の紙ができるまでの全ての工程を一貫して製作しています。名尾和…

佐賀県多久市

吉田刃物

鍛冶工場
吉田刃物 吉田刃物

佐賀県多久市に工場を構える吉田刃物株式会社。佐賀刃物のルーツをたどると、肥前の国を鍋島藩が統治していた時代にさかのぼります。御用刀鍛冶として初代・忠吉から八代新…

佐賀県有田町
有田焼ブランド

2016/Kueng Caputo

「2016/」は有田焼が誕生して400年の節目に、多様なデザイナー達が有田焼を再解釈し、窯元と共に新しい有田焼を生み出すプロジェクトです。有田町の錦右エ門窯は創…

Flower Vase S
佐賀県有田町
有田焼ブランド

2016/Shigeki Fujishiro

「2016/」は有田焼が誕生して400年の節目に、多様なデザイナー達が有田焼を再解釈し、窯元と共に新しい有田焼を生み出すプロジェクトです。有田町の錦右エ門窯は創…

Cup
佐賀県有田町
有田焼ブランド

2016/Kirstie van Noort

「2016/」は有田焼が誕生して400年の節目に、多様なデザイナー達が有田焼を再解釈し、窯元と共に新しい有田焼を生み出すプロジェクトです。伊万里の瀬兵窯は他の窯…

CUP S
佐賀県小城市
麦わら帽子製造・スポーツ店

森山製帽所

森山製帽所は1920年創業。戦前は急成長した麦わら帽子市場ですが、現在では麦わら帽子を製造する工房は九州で3軒、全国でも数軒のみとなっています。戦後生産拠点が海…

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佐賀県佐賀市
卵殻再生事業

グリーンテクノ21

佐賀県佐賀市にある株式会社グリーンテクノ21は、マヨネーズや製菓工場で大量に出る「卵殻(炭酸カルシウム)」を再利用して、グラウンド用白線や園芸資材、黒板用チョー…

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佐賀県小城市
飲料メーカー

友桝飲料

佐賀県小城市にある1902年創業の株式会社友桝飲料は、清涼飲料と酒類の共同開発や自社商品開発・製造・販売するメーカーです。清涼飲料の歴史は江戸末期の黒船来航時に…

no image
佐賀県有田町
有田焼窯元

李荘窯業所

李荘窯業所は、初代寺内信一氏が1930年に「李荘工房」を創業し、現在寺内信二さんで4代目となります。有田焼は朝鮮半島から多くの朝鮮陶工が日本に来たことに始まり、…

no image
佐賀県小城市
紙管製造工場

佐賀板紙

佐賀板紙株式会社は、製紙用紙管や食品フィルム等の紙管、貼合板紙などの製造・卸を行っています。1916年に佐賀県小城市に肥前板紙株式会社が設立され製紙工場としてス…

紙紐君 60m巻き
佐賀県神埼市
雑貨店・郷土玩具

佐賀一品堂

佐賀一品堂は2014年に暮らしのための雑貨店として開業。伝統工芸や手仕事のものを中心に扱っています。店主の城島正樹さんは、ある温泉街で伝統工芸品に出会い、それが…

寒水のガラガラ
佐賀県有田町
有田焼ブランド

2016/Pauline Deltour×幸右衛門窯

「2016/」は有田焼が誕生して400年の節目に、多様なデザイナー達が有田焼を再解釈し、窯元と共に新しい有田焼を生み出すプロジェクトです。幸右ヱ門窯は江戸末期に…

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