CLOSE
  • カテゴリーCategory
  • つくりてMaker
  • 素材Material
  • カラー・柄Color, Pattern
UNA PRODUCTSUnagino Nedoko Original
Clothing
Tableware & Foods
Houseware
ご進物・法人Gift & Order
つくりてMaker, Designer
素材Material
カラー・柄Color, Pattern
白水

創業者・顧問
白水

春口

キュレーター
春口

富永

交流・交易
富永

渡邊

リサーチャー
渡邊

「あべこべ」だからおもしろい。久留米絣に気づかされること / MONPE WhO(2025.07)

このコラムは「壁紙ブランド「WhO」とのコラボプロダクト(壁紙 & MONPE)」に関連した特集記事を転載しています。

うなぎの寝床は、地域文化商社として久留米絣を伝える新たなチャレンジとして、壁紙ブランド「WhO(フー)」と2つのプロダクトを開発しました。織元、WhO、デザイナー、うなぎの寝床とで対話を重ねながら、久留米絣の基本技術を応用した技法で久留米絣の生地を制作。うなぎの寝床からはその生地を使ったMONPEを。WhOからは生地をデザインソースに壁紙を再構築しました。これまでの「当たり前」というその枠の少し先まで進んでみて、どんな景色が広がるのか。これからの久留米絣、産地、地域文化のために、何ができるかを考えるための取り組みの一つです。

生地制作:丸亀絣織物野村織物坂田織物(順不同)
デザイン:pole-pole(ポール トゥ ポール)

詳細はこちら↓
【新作予告】 壁紙ブランド「WhO」とのコラボプロダクト(壁紙 & MONPE)

機械なのか?手しごとなのか?
現地視察で見つけた久留米絣のギャップ

「機械織のはずなのに、全然機械化されていない。膨大な作業がほとんど人の手作業でされている」

「他の生地産地と比べた時に、効率的な工程や生産ロットとは言えない。でも、だからこそできることがある」

「織元は柄や文様を綺麗に合わせようと途方も無い努力をしている。なのにどうしても柄がズレてかすれてしまう」

これは、壁紙とMONPEの生地開発に参加したpole-poleの言葉です。彼らが実際に久留米絣の生産現場を見て感じたこと、それはつくりてに対するリスペクトと、ポジティブな驚きを含んだいくつかの矛盾でした。産地を視察して久留米絣への理解を深める中で生まれた生地デザインのテーマは「あべこべ」。デザイナー自身が発見し、価値があると感じたことを素材や技法に寄り添うかたちで落とし込んでもらいました。

このくらい、がダメ

見学中「このくらい、がダメなんです」と、語気を強めて話されたのは、野村織物4代目の野村周太郎さん。1枚の反物が出来上がるまでに、何人もの職人の手を渡っていくため、始めはほんの少しのズレであっても、その誤差は最終的にとんでもないことになるといいます。古い機械のためすべてが思うようにはいかないものの、それでも一人ひとりが任された工程を大切につくったり、常にコミュニケーションを取り合って次の工程にバトンを渡していくことで、いかに100%に近いものをどれだけつくれるかが重要とも。

久留米絣は、図案に基づいて糸を括り、染め分けてから織ることで文様をつくります。天候や気温、湿度の影響で糸は収縮を繰り返し、旧式の織機の機械の調子もまた一定ではありません。30もの工程を経て完成するため、熟練者の技術を持ってしても、わずかな文様のかすれは必ず発生してしまいます。実際に現場を見ると、むしろ「何の乱れもなく織れることの方が、奇跡なんじゃないか…?」と思えてくるほど、いろいろな要素が複雑に絡み合ってできるものだとわかります。久留米絣には、人の手ではどうしてもコントロールしきれない領域があるのです。

pole-pole(ポールトゥポール) はこれらの生産背景を知り、「久留米絣は単にズレている(かすれる)ことが魅力なのではなく、どうにかして図柄を綺麗に合わせようとする職人さんたちの気持ちが美しさをつくっている」ことこそが久留米絣の価値であり、魅力であると捉えました。つくりての気持ちを大切にしつつ、久留米絣の魅力であるあべこべさを表現するために、三角、ストライプ、ボーダーのシンプルに見える3柄と久留米絣の技術を掛け合わせたデザインになっています。

今回の取り組みを通して日頃、何気なくお店で見ている乱れのない絣製品の見え方が変わる心地がしました。それだけを見ていると、あたかもその状態が当たり前のように思えるけれど、決してそうではなくて、たくさんの人の緻密な仕事や、気の遠くなるような調整をいくつも経てようやくはじめて出来上がるものということ、今回の展示やMONPEを通して、少しでも多くの方に知っていただけたらと思います。

田中

読み込み中…