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「柄」で楽しむ久留米絣② 絵を描く絣編(2024. 03)
10年越しの久留米絣定番MONPEリニューアル!
初心に帰って久留米絣の魅力を深掘るコラムシリーズ(全5編-2)
よこ絣でできる「まるで絵」のような表現
様々な模様がある久留米絣ですが、中には「まるで絵」のような繊細な曲線や模様を表現する絣もあります。 こうした絵柄は、主によこ糸をくくりで染め分けた「よこ絣」で表現されており、設計次第でモノや風景など、様々なモチーフを描くことができます。
今回は、「絵を描くような絣」の表現、特に「よこ絣」に焦点を当てて深掘りしてみようと思います。
「MONPE まるさんかくしかく」の商品一覧はこちら
「久留米絣関連コラムまとめ」はこちら
よこ絣のキホン「1柄 = 約24cm」
よこ絣では、並んだたて糸の間に、くくりによって染め分けたよこ糸が行き来することで、柄が現れます。描きたい絵柄ごとに図案を作成。図案を元にくくりで糸を染め分けた後、よこ糸として使うためにトング(木管)と呼ばれる道具に糸を巻き付けます。このトング1巻で図案1柄分(長さ約24cm)を織ることができます。
写真の「まるさんかくしかく」では、6つの図案を組み合わせて柄を織っています。
1. 丸(大) 2. 丸(小) 3. 三角(大) 4. 三角(小) 5. 四角(大) 6. 四角(小)
よこ糸をトングに巻く工程。染め分けた糸束を引き割り、柄の位置を目視で合わせながら巻き取っていきます。機械織では中量生産を可能にするために、写真のように20本のトングを一度に巻きつけるなど、道具の工夫がされています。効率化が図られつつも、この工程でのズレが絵柄に影響するため、巻いたり戻したりの微調整が繰り返されています。
もはや風景画「幻の絣」
左)大阪城(布団地 / たてよこ絣):大正時代
右)高砂の翁媼(布団地 / たてよこ絣):明治末期
提供:久留米絣技術保存会
久留米絣では、複数の図案をつなぎ合わせることで、まるで風景画のような大きな柄を表現することもできます。
例えば、昔の久留米絣では、布団用の生地に縁起物を描いた大柄模様が手織りでつくられていました。複雑な図案をいくつも用いて絵柄を設計し、4〜5枚の生地をつなぎ合わせることで大きな模様を表現しています。家庭の衣服を自分たちで賄ってきた時代に、親から子へ、幸せを願って託す嫁入り道具として、長い年月をかけてひとつの織物を作る風習が存在していたようです。
しかし、洋装化に伴い着物としての生地の需要が減少したり、嫁入り道具としての需要がなくなってからは、こうした複数の図案を組み合わせた大柄の模様を作ることは少なくなりました。
「表現と生産」バランスから見る久留米絣の可能性
大きな模様を見る機会は少なくなった久留米絣ですが、試行錯誤を経て生まれた多種多様な柄や模様は久留米絣の面白さであり、楽しみ方の一つであるのは今も昔も変わりないと思います。だからこそ、こうした背景とも向き合いながら、よこ絣の楽しみ方や可能性を伝えることはできないか?と考え、「まるさんかくしかく」のMONPEをつくりました。
生地の生産は丸亀絣織物工場。よこ絣を中心にした小柄から大柄まで、個性あふれる柄の久留米絣も手がけています「さんかく」「しかく」の図案を織り始めたのが4代目丸山重徳さん。そこに「まる」の図案も取り入れたのが5代目の重俊さん。丸亀絣織物で代々続いてきた図形のモチーフを用いて製作して頂いています。
複数の図案を用いたよこ絣は1つの図案を繰り返す場合よりも、糸の仕込み(くくり、染色など)の量も増え、また柄を順番通りに正しく出すために時間も手間もかかりますが、丸亀さんではこうした工程の管理も徹底されています。生産段階を見に行ったスタッフによると、工房の職人さんは「久々にやりがいがある!」と楽しんで制作されていた様です。
「まるさんかくしかく」の生地をよく見ると、たて糸に細い縞が入っています。濃淡のある色味と揺らぎのある模様が相まって、ポップだけど派手すぎない、ぱっと見よりも穿きやすい一本に仕上がりました。
こうしてできた6つの絵柄を1本のMONPEに全て柄が入るように仕上げています。ポップな柄の中にも、久留米絣の面白さや魅力が詰まった「まるさんかくしかく」。ぜひ見て、穿いて、生地ができるまでを想像して、楽しんでいただけたらと思います!
【おまけ】 「模様を何に見立てるか」で久留米絣を楽しむ
まる、さんかく、しかく。一見すると単純な図形ですが、先人たちはこの図形に様々な解釈をしてきました。
江戸時代の禅僧・画家 仙厓 義梵(せんがい ぎぼん)の描いた禅画の一つに「○△□」というものがあります。この作品は「仙厓が残した最もミステリアスな作品」とも呼ばれ、シンプルな構成でありつつも、捉え方次第で様々な解釈が生まれています。
例えば、「◯」は宇宙そのもの、「△」は坐禅の姿、「□」は常識に囚われた姿を表し、囚われた心が坐禅の姿を通して宇宙(普遍の真理)に近づくという禅の考えを表しているという説や、三つの単純な図形がこの世の存在全てを表し、「大宇宙」を小画面に凝縮させたという説など、様々な解釈や意見があるようです。
どれが正しいというわけではなく、人それぞれがこの単純な図形の並びに世界を写しているのが面白いなぁと思います。柄や模様を見て、何を感じるか、どう捉えるか。柄から何かを想像したり、それぞれに違う見方を共有し合うことも楽しみ方の一つです。まる、さんかく、しかく、あなたには何に見えますか?
生地制作:丸亀絣織物工場
「MONPE まるさんかくしかく」の商品一覧はこちら
初心に帰って久留米絣の魅力を深掘るコラムシリーズ。次回は「え、これも絣なの?」と思ってしまう「MONPE よろけ縞」に焦点を当てて、「現代生活上の絣」について考えていきます。
続きはこちら↓
「柄」で楽しむ久留米絣③ これも絣なの?編
荻野
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