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染のあるネイティブスケープ【3】 染の技術から見る、筑後地域の染め(2022. 9)
このコラムは、「染のあるネイティブスケープ展(2022年8月開催)」に付随した特集記事を転載しています。
あらゆるものを様々な色に変えることができる「染」。どんな色に染めて、どんな色で身の周りを彩るか。
そもそも、人類が「色」をいつ発見したのか、残念ながらはっきりとはわからないようですが、先人たちは、太陽が昇り、月が昇り、星が輝き、植物が育つ自然や地球の営みのなかで色を発見し、それを利用してきたようです。そして、暮らしや身の回りに色や模様を取り入れる生活は、現代も変わらず続いています。
無地の布を色で染め、さらに柄や模様を入れることにより、染はさらに豊かになりましたが、模様をだすためにどんな技術があるのか、そして筑後地域の染めについて調べてみました。
■ 染の技術のはじまりは、古代の染め 「三纈(さんけち)」から。
織り・染めの技術は、中国や朝鮮半島から日本へ伝わったと言われています。織物の技術が伝わると、本格的な染めの技術や技法も伝わってきました。それまでは色をつけるには、色とりどりの花、緑の葉などをつんで布に摺りつけて色をつける摺染(すりぞめ)だったのが、織りあげた布を染めたり、防染して模様を表現する技法が伝わりました。
主な染め技法には「絞り染め」、「板締め」、「ろうけつ染め」があり、それぞれ纐纈(こうけち)、夾纈(きょうけち)、﨟纈(ろうけち)と呼ばれ、3つの技法を合わせて三纈(さんけち)と言われ、7世紀ごろには日本でも高い水準のものが生産されていたそうです。
・纐纈(こうけち)=絞り染め
生地を糸や紐でしばったり、生地を縫ったりすることで、その部分が染まるのを防ぐ防染の技法です。日本では愛知の有松絞り、京都の京絞りが有名です。
・夾纈(きょうけち)=板締め
同じ模様を彫り込んだ2枚の板の間に生地をきつく挟み込むことで、その部分を防染する技法です。型染めの技法もここから発展しました。
・﨟纈(ろうけち)=ろうけつ染め
溶かした蝋ろうを防染剤として生地に塗り、ろうを塗った部分だけが染まらずに模様となる技法です。
■ ふろしきの流行により日本で生まれた「注染(ちゅうせん)」
「注染」という染め技法は、明治時代に日本で生まれました。注染は文字どおり、染料を注いで染める技法で、従来の染料に浸して染める単色の浸染(しみぞめ)から多色染めの「そそぎ染」へと大きな変化を生みました。
この技法は、明治初期に手拭いが生活雑貨の定番となり、ファッションの一部となったことから生まれたそうです。注いで染める技法は、その後も発展し、より効率の良い機械がうまれ、手拭い全面(約90cm)にわたる大柄が簡単に染められる様になり生産効率も大幅に向上しました。
注染の染物は、裏表なくきれいに染められ、一度に複数の色を染めることから色と色が混じりあう「にじみ」や「ぼかし」ができるのが特徴で、現在も浴衣や手拭いの染め技法として使われています。この注染の技法は、布を染めるだけでなく糸を染めることにも使われます。
ひとつひとつを手作業で染めていた古代の染物と比較すると、19世紀には化学染料が登場し、機械が発明され一度に大量に染めることができるようになりました。一度に染めることができる量が増え、染めに使う染料は自然由来ではないものに代わり、柄や模様を表現する方法もプリント印刷になるなど、染めの技術は、時代と共に変わっています。
しかし、絞り染や型染めなどの古代からある染めの技術は大きくは変わらず、今も継承されています。日本では、それらをさらに発展させながら、現在も美しい染めものがつくられています。
■ 多様性にあふれている筑後地域の染め
久留米絣がある筑後地域の「染」をあらためて見てみると、この地域には様々な染物があることに気づきます。天然染料である藍草を発酵させた藍甕(あいがめ)で手間を惜しまずに染める久留米絣織元の藍染め(広川町)、機械で大量に化学染料で染める染織工場でありながら、注染の糸染めやインド藍での染めもできる筑後協同染織協同組合(筑後市)、その中間で伝統のものと現代のものを組合わせることで様々なバランスを取りながら、絞り染め・板締めなどの技法をつかい手染めブランドを展開する宝島染工(大木町)。
筑後地域は、染める方法、染めに使う染料、染め技術など、歴史あるものから現代に即したものまで、いろいろな染めの要素がつまった地域です。そして、その土台となる背景には山や川、先人が残した水路であるクリークなどにより豊富な地下水があり、染めに必要な「水」に恵まれた土地であることに改めて気づかされました。
うなぎの寝床では、絞り染、板締め、注染、型染など様々な技法により染められた商品やMONPEを取り扱っていますが、今回の企画展では、どうやって、どこで染められたものかも商品と併せて紹介しています。企画展「染」のあるネイティブスケープ展にも足を運んでいただけると嬉しいです。
(研究員K)
<参考文献>
・日本服飾史 HP
・iroai.jp(2017. 11. 19)「三纈(さんけち)とは何か?古代の染色技法である纐纈(こうけち)、夾纈(きょうけち)、臈纈(ろうけち)について」
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