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【#3】 地域に根ざしたゴム靴メーカー 前編 / ムーンスターから見えるNATIVESCAPE UNADIGTIONARY vol.3
【NATIVESCAPE】とは
1.うなぎの寝床による「造語」
2.土地性、歴史性を大事にし、未来を思考し続けて営みを続けながら活動する風景
3.NATIVE→その土地らしさを感じることができる文化( ※ local →都市に対する地方 )
4.SCAPE→風景
※造語・・・既存の言語を組み合わせるなどして新しい意味や概念を表す言葉を作ること。またはその言葉。
詳しくはこちらより
photo by Koichiro Fujimoto
今回のうなDIGTIONARYでは、ムーンスターについて二つの視点から前編・後編にわけて、紹介していきたいと思います。
–
前編 「ムーンスターから見えるNATIVESCAPE」
後編 「技術から見るムーンスター」
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九州では、学校の指定靴や上履きなどで馴染みのある方も多いムーンスター。うなぎの寝床でも定番として扱わせていただいており、ムーンスターはスニーカーを中心にゆるぎない品質の靴を真摯に作り続けている職人集団だと思います。そんなムーンスターとはいったいどんな会社なのか、改めてご紹介できればと思います。
目次
◯ ゴムのまち久留米
◯ ムーンスターのある『福岡県久留米市』はどんな街?
◯ 学校指定靴と上履き
◯ 学校靴を土台にした靴づくり
◯ 後編予告
ムーンスターのオンライン販売はこちらから
photo by Koichiro Fujimoto
ゴムのまち久留米
ムーンスターのある福岡県久留米市は「ゴムのまち」と言われ、ゴム産業に関わる会社が多くあり、世界最大手のタイヤメーカーに成長したブリヂストンの創業の地でもあります。ブリヂストンと並び「3大ゴム産業」と言われたのが、ゴム靴メーカーである、ムーンスターとアサヒシューズです。
ゴム産業がなぜ久留米で発展したのか。そのきっかけは「足袋」です。ムーンスターの創業者である倉田雲平さんが、1873年(明治6年)に「つちやたび店」として座敷足袋の製造を開始し、とても評判が良く、久留米は足袋生産で有名になります。その後、「つちやたび店」は大正時代にアメリカ製のキャンバスシューズからヒントを得て底にゴムを付けた「地下足袋」を開発・商品化します。そして、地下足袋のゴム部分に使用するゴムの輸入が盛んに行われるようになりました。タイヤメーカーであるブリヂストンも、「しまやたび(現 アサヒシューズ)」が座敷足袋の製造からスタートし、底ゴムの地下足袋の開発・製造・販売を始め、そこからタイヤ部門が誕生し、現在に至ります。「座敷足袋」から「地下足袋」、「タイヤ」と時代の流れとともにゴム加工技術が培われていき、久留米はゴム産業の一大産地となっていきました。
ムーンスターのある『福岡県久留米市』はどんな街?
では、ゴムのまち久留米市とはどんな街なのか。
久留米市は福岡県の南部に位置し、現在福岡県第3位の人口を有する中核都市で、交通の要衝(交通・軍事・通商の上で大切な地点)として鉄道や高速の交差する場所にも近く、福岡県南部筑後地方の中心都市です。九州最大の河川「筑後川」の豊かな恵みをうけた筑紫平野で最大の都市で、江戸時代には有馬藩の城下町として栄え、近代以降は久留米絣やゴム産業のまちとして発展してきました。筑後川は農業に豊かな恵みをもたらしてきたのははもちろんですが、上流の林業にも物流の手段として重要な役割を担っていて、筑後川の恵みにより農業の中心地として繁盛した久留米市は、筑後川の舟運の重要な拠点でもあり、そこに産業が興っていき、商業の町としても賑わっていきました。明治に入ると物流の中心が舟運から陸運に取って変わっていき久留米にも九州鉄道(明治の私設鉄道会社)によって鉄道がひかれました。物流の主役が鉄道になり、1980年代頃まではブリヂストンやアサヒシューズ、ムーンスターの工場への専用路線もあったそうです。現在もこれらの工場はJR久留米駅にほど近い場所に位置しており、大きな工場が地域に溶け込んでそこにある風景を目にすることができます。
ムーンスターの学校指定靴と上履き
九州の人にとって、ムーンスターは「学校指定靴」と「上履き」で老若男女、子供の頃からお馴染みです。うなぎの寝床スタッフにそれぞれの出身地でどうだったか聞いてみると、福岡はもちろん、佐賀、熊本、宮崎、鹿児島、など、皆、上履きや指定靴でムーンスターの靴を履いていました。そして九州だけでなく全国でムーンスターの上履きや指定靴は使用されているそうです。上履きや指定靴を作っている靴メーカーは多くなく、国内の主なメーカーは久留米のムーンスターとアサヒシューズ、栃木に工場があるアキレスの3社です。
学校の上履き文化は靴を脱ぐ文化のある日本独特のもので、法令により学校の上履きが採用される前は、座卓で床や畳に座り授業がおこなわれていたので、建物内に入ると外靴を脱ぎ足袋か草履か裸足でした。しだいに学校の建物も洋風化が進み机や椅子が導入されていきましたが、日本の靴を脱ぐ文化は残り、現在の上履きへと変わっていきます。ムーンスターの社史には、1927年(昭和2年)に児童用前ゴム(甲の部分にゴムをはめ込んだ靴)が製造開始され、昭和30年頃には「バレーシューズバンド付」の靴が発表されたとあり、現在の上履きの原型となっています。ムーンスターの学校向け商品はおよそ70種類ほどあり、上履き、体育館履き、通学履きなどで、上履きが品種・足数など多くなっているそうです。国内では久留米や佐賀の工場、海外では中国・ベトナム・インドネシアの協力工場などで作られています。学校向けの靴を履くシーンは様々で、そのシーンにあった機能や製法、素材の使い分けを心掛けて製造されているそうです。特に耐久性については、3年間履かれる商品もある学校靴の品質基準は厳しく、学校靴に対する品質基準がムーンスター社内での基本的な品質基準となっています。久留米在住のスタッフの話によると、小学生の時、学期の始めにムーンスターから数足の靴が学校に送られてきていたそうです。靴の使用データを集める為にその靴はサイズのあう生徒が学期中履き続け、学期が終わると回収されます。そしてまた学期が始まる時には新しい靴が送られてきたそうです。ムーンスターは、細かい学校側のニーズなどにも培ってきた技術と知識を用いて、機能やバリエーションで応えてきました。ロングセラーとして現在も多くの成長過程の子供や学生の足元を守っています。
学校靴を土台にした靴づくり
上記で述べたように、私達に馴染みのある学校指定靴や上履きをずっと作り続けてきたムーンスターは、学校向けの靴の他にも医療や厨房、農作業や土木など専門職用の業務用靴も作り続け、佐賀の工場では官公庁向けの革靴も作り続けてました。これらの靴を作り続けてきた技術が「MADE IN KURUME」の普段履きのスニーカーに活かされ、学校靴や業務用の靴をモデルにした新しいプロダクトを生み出すなど、更に進化を続けています。また地下足袋製造の頃から向き合い続けてきたゴム加工の技術も、活かされ、更に試行錯誤が繰り返され進化を続けています。学校向けの靴や業務用の靴などを作り続けてきたことが、日常履きとしての靴つくりに繋がってきました。
学校靴をはじめ、これらのムーンスターの靴は「インジェクション製法」「ヴァルカナイズ製法(加硫製法)」「セメント製法」などの製法で作られており、種類によって製法を使い分けて作られ、また、靴に使用するゴムも使用する靴の種類、使用する箇所によって配合を変えるなどして作られています。
次回、後編「技術から見るムーンスター」ではムーンスターが学校靴や業務用の靴つくりで培ってきたこれらの技術や製法とはどういうものなのか、それぞれの特徴はどんなものなのかなどについて紹介します。
オンライン販売はこちらから
後編はこちらから
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株式会社ムーンスター:https://www.moonstar.co.jp
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