大鹿株式会社

毛織物卸商/愛知県一宮市

大鹿株式会社は、愛知県一宮市で1922年に創業しました。軍服生地の生産から紳士服地専門問屋、紳士向け既製服の製造・販売を経て、現在は自社オリジナル商品blanketや再生ウール「毛七」の製造・販売を、様々な企業による分業の枠を超えた取組のなかで行っています。
一宮市が位置する尾州産地は、木曽川がつくる肥沃な濃尾平野の恩恵を受け、昔から農業や織物など繊維産業が盛んな土地で、現在も日本国内の毛織物生産量の約8割を占める日本最大の毛織物の産地です。大鹿株式会社は、原料となる羊毛糸を厳選し、昔ながらのションヘルやレピアなどの織機で生地を織り、裁断、縫製、販売に至るまでの全ての工程を提携工場と連携して、尾州産地のモノ作りの歴史・背景を強みとした高品質な毛織物生地・商品に製販一体で取り組んでいます。また、一般の消費者が「尾州のいいもの」を手に取る場所として尾州カレント新見本工場を立ち上げ、新しい尾州の形をより多くの人々に伝えるための取組を積極的に行っています。

■ 歴史:綿花から羊毛への転換 軍服生地の生産から高級毛織物づくりへ

綿織物が日本全国に普及した江戸時代、尾州地域は絹から綿の産地となり大阪に次ぐ綿織物の一大産地でした。1891年の濃尾大地震やインド綿花の輸入が始まったことなどから綿織物業は次第に衰退していきました。尾州の先人たちは”綿織物に替わる何か”を模索するなかで羊毛に着目し、ドイツから毛織織機を輸入し、輸入毛糸を用いて織る和服用織物(セル(梳毛糸・そうもうし))の製織に挑戦し生産体制を確立していきました。このセルが戦時中の軍用服生地として使われ生産量が増えたことを機に、尾州地域の毛織物生産高は日本一となり今に至る毛織物の尾州産地*が誕生しました。 大鹿株式会社は、戦時中には満州で軍服生地の生産工場を立ち上げて製造し、戦後は生地問屋、紳士服の製造・販売を行っていました。現在は製造に加え検査、検品、ラベル付などを行う流通センターをもつ製販一体のものづくりを行い、尾州産地の持続のために企業や分業の枠を飛び越えて、高級毛織物のオリジナル商品を生み出しています。

*尾州産地:愛知県の一宮市、稲沢市、津島市、江南市、名古屋市及び岐阜県羽島市
毛織物生産高は日本一であり、尾州はイギリスのハダースフィールド、イタリアのビエラと並んで世界三大毛織物産地と呼ばれています。

■ 土地性:尾州産地をかたちづくった伊勢湾と木曽川の存在

日本は羊の家畜化に幾度も挑戦しましたが、いずれも失敗に終わった歴史をもちます。そのため、日本の羊毛産業は羊毛を輸入し、加工する形で発展しました。羊毛の輸入は、伊勢湾内における最大の商業港として栄えていた三重県の四日市港を拠点に行われ、1965年頃には全国羊毛の6割を陸揚げする日本一の羊毛輸入港でした。伊勢湾に隣接する尾州地域では、海から仕入れた羊毛を原料とし、伊勢湾から木曽川に沿って繊維関連企業が集まり産地が形成されていきました。羊毛の輸入拠点である伊勢湾が近くに存在したこと、繊維の染色加工や仕上げ整理に適した木曽川の軟水があったことは、尾州地域が毛織物はじめ様々な繊維産業が発展した要因となりました。大鹿株式会社がある一宮市は、岐阜と名古屋の中間に位置し、製造や販売の様々な企業との結節点となっています。

■ 素材:優れた羊毛の特性は、その構造と成分にあり

羊毛がもつ優れた特性は、その構造と成分にあります。羊毛の繊維は「スケール」と呼ばれる鱗で覆われており、表面は松ぼっくりに似ています。このスケールが開いたり閉じたりすることで、羊毛は湿気を吸収し、放出することができるため、ムレにくく、汗をかいても臭くなりにくい特性をもちます。また、動物性のたんぱく質で窒素と水分を多く含む羊毛は、発火温度が570℃と非常に高く燃えにくい素材です。そのため、高級ホテルや、旅客機の内装や車の断熱材としても使用されています。衣服を着たときにチクチクと感じる肌触りは、ウール繊維の太さに左右され、繊維の太さが太いものはチクチク感じますが、繊維が細いものはチクチクすることはありません。このように優れた素材をもつ羊毛を、より多く得るために長年にわたり羊の品種改良がされた結果、世界には3000種以上の羊がいます。現在は、細く柔らかく繊維をもち肌触りがよい毛をもつメリノという羊種から採れるメリノウールが主に使われています。

■ 技術:長年にわたり蓄積した技術で挑む 尾州の新しいものづくり

毛織物づくりには、輸入した原毛をわたから糸にし、糸から生地にするための技術が必要です。尾州産地には紡績、撚糸、染色、製織、編立、整理加工といった一連の工程を地域の中で一貫して行える分業・協業体制があります。それぞれの工程を担う企業は、長年にわたり継承し蓄積してきた専門的かつ高度な知識と技術を持っており、尾州全体は一つの大きな工場とも言えます。この地域の一貫した管理体制と高度な技術の蓄積が、他の産地では真似のできないものづくりを可能にしています。尾州では約半世紀以上も前から存在し「毛七」として親しまれていたリサイクル羊毛の文化や、「ガラ紡」と呼ばれる綿わたから糸を紡ぐ明治初期に日本で発明された機械が現役で生産を続けていたり、羊種サフォーク種の羊の毛をウールにし純国産の羊毛製品がつくられていたり、日本独自の技術をつかいながら多種多様な素材の組み合わせや新しく豊かな表情のテキスタイルをつくり続けています。

■ 想い:産地の想いを形にして見せる 毛織物の文化をつなぐ役割

軍服生地の生産から紳士服地専門問屋、紳士向け製服の製造・販売など、毛織物産業のなかで少しずつ事業形態を変えてきた歴史をもつ大鹿株式会社。戦前、戦後、現在とその社会状況に応じて臨機応変に取組んだ結果、現在の姿に至ります。近年は、日本の毛織物産地の技術の結晶として毛布の一大産地である泉州*(大阪府南部地域)の企業と協力してつくりあげたこだわりぬいたコート「blanket」、厳選された稀少なウールのみを使用した最高の着心地のカットソーブランド「糸と色」、貴重な資源である羊毛を循環させる再生羊毛生地ブランド「毛七」を生みだし、歴史のなかで培ってきた技術と、尾州でのものづくりの魅力を目に見える形で伝えています。分業制で成り立つ「尾州」を産地として伝え、そのすべてを見せるためにつくった「新見本工場」には、この産地の想いが詰まっています。デザイナーの彦坂さんが中心となり、産地の内部のひとたちも産地の外部のひとたちも巻き込みながら、日本の毛織物の文化を次の世代へとつないでいっています。

*泉州産地:大阪府南部の堺市、高石市、泉大津市、和泉市、忠岡町、岸和田市、貝塚市、熊取町、泉佐野市、田尻町、泉南市、阪南市、岬町の13市町(9市4町)
古くから紡績・織物・繊維などの繊維産業が栄えてきた地域で、国内カーペット生産の約8割を占める毛織物の産地であり起毛加工などの特殊技術が集積しています。

※あくまでもうなぎの寝床が解釈する、つくりてのものづくりへの思いや思想です。

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