
「もんぺ巡業」や「もんぺ出張」では、自分たち自身が各地に足を運び、直接もんぺを届け、これまで見聞きしたり、学んだりしてきたことを私たちの言葉で伝えていきたいと考えています。オンラインで情報を得たり、買いものできたりする時代ではありますが、画面の上だけでは伝えきれないことも、まだまだたくさんあります。各地でお客様や現地の方と顔を合わせることで感じたこと、知れたことを記していきます。
瀬戸内の自然に囲まれた、元銭湯のギャラリー

MONPEを穿くことにも、だいぶ慣れてきた。
入社から半年ほど経って、久留米絣のことや、そのほかの産地の生地について、ごくごくほんの少しだけわかった気になってきたころ、もんぺ巡業の話を聞いた。いつもとは違う場所で、MONPEがどんなふうに受け取られるのか、見てみたい。そんな興味もあり、すぐに「行きたい」と立候補した。
会場となる「すずめ草」は、染色家・デザイナーの小野豊一さんが主宰する染工房「よつめ染布舎」と、陶芸家・岡美希さんのアトリエに併設されたギャラリー。2025年に大分県国東半島から広島県呉市川尻町に活動拠点を移したお二人が、2026年4月にオープンしたばかりで、もんぺ巡業の開催は今回が初めてだ。
広島駅から在来線で、最寄りの安芸川尻駅へ。駅から歩いて5分ほど、瀬戸内の美しい海と豊かな山々に囲まれた場所に、すずめ草はある。
岡さんのお祖母さまが営んでいた、趣のある元銭湯を改装した建物。周りの住宅や畑の中でひときわ目を引く独特な雰囲気を醸し出しているが、玄関の回転扉や古い番台が残っていて、どこか懐かしくも感じられる素敵な空間だ。すぐそばには、小野さんご家族が飼っているニワトリ小屋があり、ニワトリたちの姿も、こののどかな場所の風景の一部になっている。

試着は楽しい発見の場
さあ朝が来て、すずめ草でのもんぺ巡業がスタートし、朝からたくさんの方が来てくれた。記事や告知を見て、楽しみにして来てくださった方も多かった。
実は前日、設営が終わったころに近所のご夫婦が見に来られて、「明日は絶対大変なことになりますよ! 人がいっぱいで。もうみんな知ってるから」とおっしゃっていた。期待しつつも半信半疑だったのだが、その言葉どおりのスタートになった。
もんぺ自体が初めてという方や、もんぺは知っていても「うなぎの寝床」は知らないという方も多い。普段、八女で接している方々とはお話しする内容も少し違っていて、新鮮で楽しかった。
久留米絣について、名前を知っているという方が多かった一方で、実際にどのようにつくられているのかまでは知らないという方も多かった。そんなときには、制作工程の動画や、実際のくくり糸を見ていただきながら説明すると、「なるほど。すごい! 来てよかった」と盛り上がってくださる方もいた。久留米絣について知ってもらうきっかけをつくることができ、巡業の意義を感じる出来事だった。
MONPE選びの場面では、はっきりとした意見をお持ちの方が多かった。試着の際には「これが好き」「この色・形は似合わない」と、“方向性のヒント”を伝えてくれる。そうすると、ほかのMONPEをお持ちするとき、あるいは今穿かれているMONPEが似合っていると思ったときに、「なぜなのか」という具体的な提案が必要になる。お客様が好まれそうな生地や産地、色味や柄について、言葉でお伝えするのは難しかったが、普段よりも一段深い視点でMONPEを見るきっかけになった。
たくさん試着して、お客様と一緒に探していく時間そのものが楽しい発見の場になっていく。その感覚が心地よく、忘れられない時間になった。
すずめ草の人々と日々
今回の巡業では、すずめ草のみなさんと過ごした時間も印象に残っている。
小野さんと岡さんはご夫婦。たまに言い合いにもなるそうだけれど、やはり仲が良く、お二人ともはっきりとした性格で、とっても面白い。スタッフのみなさんも明るく元気で、すずめ草はいつも良い雰囲気だった。それに、みなさんがMONPEを気に入って穿いてくださっているのもうれしい。
巡業期間中は、岡さんがギャラリーで接客されていることが多く、MONPEを試着しているお客様にも「めっちゃ良いですね!」と声をかけてくださる。まさに天真爛漫といった感じで、岡さんがいるだけで場がすごく明るくなるのでありがたかった。
お帰りのお客様には、娘さんが案内役となって工房にも連れて行ってくれる。この日は小野さんが工房で制作をされていて、今どんな作業をしているのかを説明したり、実際に見せたりしていた。
奥へ進むと、岡さんの工房がある。カラフルでとてもかわいらしく、岡さんの美意識が感じられる空間だ。
岡さんが特別に作ってくださった、手作りの賄いカレー。盛り付けた器も、岡さんの作品
小野さんは、ご実家が創業130年の染工場を営んでおり、2014年に「よつめ染布舎」を設立された。染色だけでなく、イラスト制作やロゴ制作、パッケージデザイン、ブランディングなど、デザインの分野でも幅広く活動されている。うなぎの寝床にも小野さんデザインのMONPEがたくさんあり、今回の巡業でもとても人気だった。
制作中の小野さん。伺った時期、工房の中はとても暑い。
それでも、制作中の様子を見られるのは面白く、みなさん興味深そうに見入っていた。
そんな小野さんから、うなぎの寝床のMONPEについての考えも聞かせていただいた。
「うなぎの寝床のMONPEの良さは、これまで培われてきたものを新しい形にしていることにあると思う。
現代アートに取り組んだ経験から、改めて歴史は大事だと感じるようになった。自分がつくるものも、すべて何らかの形で歴史とつながっている。伝統をベースにしながら新しい解釈を加えたり、異なるものを掛け合わせたりすることで、より多くの人に受け入れてもらいやすくなる。
自分自身、創業130年の染工場を営む実家の歴史があり、その流れの中で制作を続けている。その背景は、自分を紹介するときにもまず伝えるようにしている。
その意味で、うなぎの寝床のMONPEは伝統をそのまま残すのではなく、これまで培ってきたものを現代に合わせて新しくしているところに良さがある。新しい解釈や切り口で紹介しているところが素晴らしいと思う。」
自分たちが普段つくって販売しているものを、つくりての目で外から見ると、どう見えるのか。その視点を直接聞けたことも、今回の巡業で新たな気づきにつながった。
MONPEがつないだ、人と場所
電車がまさに通り抜けようとしているのは、日本一短い「川尻トンネル」
今回の巡業では、MONPEを通してたくさんの人と出会った。
知らない土地へ行き、さまざまな人と話し、いつもの場所を少し離れて見つめることで、普段とは違う角度からMONPEのことを考えることができた。穿き心地だけでなく、柄や生地、裾ゴムといった細かな部分に魅力を感じてくださる方も多く、MONPEという型そのものの強みを、あらためて実感した。
「川尻に住んでいるけれど、ここには初めて来た」という方もいらっしゃった。岡山県など遠方から、わざわざ足を運んでくださる方もいた。もんぺ巡業をきっかけに、MONPEを知ってもらうだけでなく、「こんな場所があったんだ」と、すずめ草や川尻という土地そのものに興味を持ってくれる人が増えたらいいなと思う。
そんなふうに、MONPEをきっかけに人と場所がつながっていくことも、巡業の面白さなのかもしれない。

巡業終わりに呉を観光。夏の白い制服姿で並んで歩く海上自衛隊員を見ることができた
八女本店 薄田
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