テキスタイルはそもそも錯視である? / HANA MITSUI Fukuoka Textile展

HANA MITSUI fukuoka textile展(6/26〜7/13)」に関連した特集記事の前編です。

錯視*の可視化
我々は常に騙されている?

あたりまえのことではありますが、織物は糸からできています。 単体の糸(線)が、タテヨコで交わることで織物という「面」が生まれ、糸の素材や配列、組織構造(織り方)など、現実的な原理によって成立します。

ただし、生活の中では「布地」や「服」という最終的な成果物として我々の手元にあり、そうしたモノで理解することがほとんどです。疑うことなく「布は布」で、「服は服」と捉えることができます。

しかし、テキスタイルをよ〜く観察すると違った姿が見えてきます。光井花さんの「錯視の久留米絣」を見てみます。

*錯視(さくし):
視覚における錯覚。形・大きさ・長さ・色・方向などが、ある条件や要因のために実際とは違ったものとして知覚されること。

光井花さんがデザインした「The Optical Illusion Ikat -錯覚の久留米絣-」。絣の糸のズレの効果を印刷の版ズレ(color misalignment)でCMYが見える現象に見立ててデザインしている。

パッとみて、なにが起きているのか?バグなのか?頭がショートするような感覚になります。しかし、実際に寄って見てみると、タテ糸とヨコ糸が交差した織物であり、紐解けば1本の糸です。チェック模様はくくりによって柄を表現する絣で構成されています。何も特殊な技法ではなく、普段見ている久留米絣と全く同じ原理できているのです。

引きで見た時と寄りで見た時のギャップは、視覚的感覚と現実のギャップと言えます。たてよこの糸の交差が織物ですが、我々は日々それを「面」としてしか見ていないからこそ、錯覚させられているのではないでしょうか。

1本の糸が連なり、交差し、生まれているテキスタイル。ついその現実を忘れていると、ハッとさせられました。気づいていないだけで、我々は常に錯覚させられているのかもしれません。

タテ糸にCMY色のストライプが並び、ヨコ糸に格子柄の絣が交わることで視覚効果が生まれている。

 

現場に踏み込んだアウトプット

光井さんは、生地制作のために下川織物(久留米絣織元)に滞在。久留米絣の製造工程を学ぶ中でデザインが生まれました。産地の現場に足を踏み入れ、得た気づきや発見がデザインへと昇華されています。

光井さんの解釈した久留米絣の新鮮さは、特別なことや気をてらったことではなく、むしろものづくりの根っこの部分から生まれていることに魅力を感じます。

 

・MONPE ハナノユラギ(光井花 × うなぎの寝床)
光井さんがデザインした久留米絣、第1作。久留米絣を学ぶ中で魅力に感じた「予期しない模様のゆらぎ」をテーマに、柄のズレもデザインとして取り入れ、揺らいだ花柄をタテ絣、ヨコ絣、タテヨコ絣で表現している。

・KURUME IKAT PROJECT
光井さんがデザインした久留米絣のバッグとクッション。テキスタイル自体の美しさを最大限に活かし、どちらも久留米絣の生地幅でハサミを入れることなく設計されている。

・LENTICULAR PRINT PROJECT(かくれんぼティーシャツ)
こちらは久留米絣ではなくTシャツプリントの丸昇(愛知・名古屋)と制作。見る角度によって絵が変わる『レンチキュラー効果』から着想。発泡プリント技法を応用し、2種類の生き物が見え隠れする = かくれんぼする。

・ムンカー錯視トートバッグ
周囲の色に影響されて、本来とは違う色に見えてしまう『ムンカー錯視』から着想。カラフルに見える動物たちは、実は同じ色でプリントされており、バッグの色の影響で様々な色に見えている。

 

HANA MITSUI fukuoka textile展
2025年 6月26日(木)〜 7月13日(日)

●うなぎの寝床 旧丸林本家
休み :火曜・水曜(祝日営業)
時間 :11:00〜17:00
住所 :福岡県八女市本町267(会場アクセス
電話 :0943-22-3699
駐車場:14台
*6/28(土)はトークイベント準備のため16:00閉店

●うなぎの寝床 アクロス福岡店
休み :火曜
時間 :10:00〜19:00
住所 :福岡県福岡市中央区天神1丁目1-1 1F 匠ギャラリー内(会場アクセス
電話 :092-753-7223
駐車場:あり(有料)

企画展詳細はこちら

 

【トークイベント】地域産業とデザイナーの共同開発の方法と実験

2025年 6月28日(土)17:00〜18:30
受付開始 16:30〜

登壇者:
光井花 / テキスタイルデザイナー
下川強臓 / 下川織物(久留米絣織元)

企画・コーディネーター:
白水高広 / うなぎの寝床

定員 :20名(先着予約制)
参加費:500円(税込)*小学生以下無料
会場 :うなぎの寝床 旧丸林本家
住所 :福岡県八女市本町267(会場アクセス

ご予約はこちら(※定員のため募集を締め切らせていただきました)

読み込み中…