わたから見えるネイティブスケープ【1】 「見えないところを見てみよう!」

– わた作り、はんてん作りの現場で見えたプロの技って? –

「地域文化って何だろう?研究会」も7回目と回を重ねてきました。今回は「わたから見えるネイティブスケープ展」と題し、「わた」について研究していきます。

「ふわふわで、ぽかぽかで、あったかい」わたの正体を解明し、研究していくために、わた作り、はんてん作りの現場へと実際に足を運び、その製造工程や職人のてしごとを見学してきました。

○はんてんの商品一覧はこちら

 

「わた」ってこんな風に作られるんだ!

10月初旬 某日
まずは、ふとん、はんてん、クッションなどの中材となる「わた」を製造している原綿問屋の「新川桂」を訪問。

ここでは、海外、おもにインドなどのアジア圏から輸入している原綿を加工し、コットン100%、またはコットンとポリエステルを混ぜたわたなど、その用途に応じてわたを独自の配合でブレンドし、ふわふわなわたを作り上げています。

 

精製される前のコットン、「原綿」を間近で見たことはありますか?

はじめは、どっしりと重みがあり、硬く圧縮された姿で原綿場へと入庫される物体。
その状態から様々な過程を経て、私たちに馴染のある柔らかなわたへと姿を変えていくのです。

 

用途別によって配合されたわたは、専門の機械を通り不純物が取り除かれ、よりよい状態に仕上げるため攪拌(かくはん)する工程、繊維を整えるために櫛(くし)で梳(と)かすようなコーミングの工程を経て、空気を含むふわふわで軽いシート状のわたに仕上げられていきます。

 

少数精鋭、この日は2名で工場作業が行われていました。緻密なわたのブレンド、さらに重さの誤差をなくすための目視での計量など、細やかに人の手が入る作業によって、精度の高い丁寧な仕上がりのわたが誕生しているのかもしれません。

 

この新川桂で作られたわたを使って独自の手法で「はんてん」を仕立てているが宮田織物です。

 

「はんてん」ってこんな風に作られるんだ!

10月中旬 某日
日を改めて、今度は、「わた入れはんてん」ができるまでを見学するために宮田織物を訪問。 わたを使った商材には、「ふとん」「はんてん」「クッション」など、うなぎの寝床でも紹介している様々なアイテムがあります。

外からは見えない「わた」は、はんてんの着心地や質の違いを生む重要な素材のひとつ。 わたの品質をはじめ素材へのこだわり、卓越した技術が結集し、作られている「わた入れはんてん」に注目してみました。

1. まずは生地作り

30年以上前からコンピューターグラフィックスを使い、織り上がりの生地の色・柄・サイズなどを検討しながらオリジナルの柄を考案をしていきます。生地の風合い、厚みや柄の複雑さによって、「レピア織機」または「シャトル織機」という2種類の織機を使い分けて、はんてんの生地を織っていきます。

 

2. 傷がないか、色が変わっていないか…生地の検品

織り上がった生地は、表地だけではなく裏地の状態も検品します。さらに下からライトをあてて生地の厚みにムラがないかどうか(部分的に透けて見えるなど)様々な角度から生地の精度をチェックします。

 

3. はんてんの表地と裏地を縫い合わせていく

裁断用の機械を使い、生地をカット。それぞれのパーツごとに裁断されていきます。

裁断用の機械を使うことで、一度にたくさんの生地がサイズの誤差なくカットできるそうです。裁断された表・裏地は、ミシンを使って一点ずつ縫い上げられていきます。

 

4. わた入れ、手綴じ作業はすべて手作業(わた入れ体験してみました!)

ここからは二人一組での作業。はんてんの表・裏地が重ねられた上に、新川桂で作られたわたのシートを二人で息を合わせてふわーっと広げていきます。はんてんの上に重ね合わせられたわたは余分な所を手で取り除き、必要な分だけを使いはんてんの中へわたをおさめます。

その後、わたを入れた部分の手とじ作業に移ります。表地に縫い目のあとがひびかないよう縫いとじていきます。実際に職人の方とペアを組ませてもらい、研究員Uもわた入れに挑戦してみましたが、これが思った以上に難しい!

手に力が入りすぎるとわたが伸びてしまい、せっかくのふわふわとしたわたの触感が台無しに。力を抜きすぎると今度はわたが綺麗にピシッとはんてんに入っていないため、中でわたが偏ってもったりしてしまうのです。隅々までわたが均一に入り、かつ必要な部分にだけ少しの厚みを加えるなどの工夫もあるため、丁度良い塩梅に美しくわたをはんてんの中に入れていく技術を体得するには、やはり修業が必要でしょう。

一点一点のはんてんに、毎日この作業をおこなっている職人の狂いのない技術に脱帽です。

 

5. 最後にもう一度検品

わた入れが終わったはんてんの検品は、点検箇所がたくさんあります。

はんてんの中のわたが偏っていないか(少しの厚みでもボコッとした手触りに)、両袖、後ろ身頃の中心が合っているか、紐の位置も合っているのか(中心がずれると歪みが生じるそうです)、ポケット部分が縫い綴じられていないか、ネームや品質表示がちゃんと付いているか、など。綴じたところ、一か所一か所をていねいに目視をしながら検品します。

作業の抜け漏れがみつかったら、各担当部門へ戻し、やり直しを行うという流れになります。

 

見えたのは「わた入れはんてん」をつくるための技術の集合体

これらの工程を経て、ようやく「わた入れはんてん」が出来上がります。

新川桂でのわた作りの現場も、宮田織物でのはんてん作りの現場も、人の目には見えづらい部分への配慮や人の手が繰り出す熟練の技術がはんてんの魅力を作り上げているのではないか?と現場を訪れて作業工程を目の当たりにしたことで、より感じる部分が多くありました。

今回の製造の現場では、わた作りやわたを必要とする商品作りの「見えないところを見てみよう!」を体感できたように思います。

 

11月の企画展「わたから見えるネイティブスケープ展」では、吸湿性、通気性、放熱性、弾力性、保温性など、目に見えないところで数多くの機能性や実力を発揮している「わた」の実力を研究し、「わた」の心地よさの理由を解明していきます。

 

【企画展×UNAラボツアー コラボ開催】
宮田織物工場見学&はんてんのわた入れ・手とじ体験モニターツアーを開催予定!

UNAラボラトリーズが開催予定をしているこのツアー開始に先立ち、モニター価格でのツアーを予定しています。
工場見学、職人と一緒にはんてんのわた入れ・手とじ体験をし、実際に自分でわた入れしたはんてんを職人に最終仕上げをしてもらい、数か月後にお手元に届きます。

開催日時:2022年12月9日(金)13:30~15:30予定
※詳細のお問い合わせは、「株式会社UNAラボラトリーズ 担当:桜井宛」

Tel:092-982-7956
Mail:tour@unalabs.jp

○【モニター参加者募集】 宮田織物工場見学&はんてんの綿入れ・手とじ体験|株式会社UNAラボラトリーズ

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参考:
○ うなDIGTIONARY【#5】 宮田織物のわた入れはんてん『心地よさには理由あり』

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