染のあるネイティブスケープ【2】 うなぎBOOKSの自由研究~草木染め編~
染のあるネイティブスケープ展の開催にあわせて、うなぎBOOKSでは「自由研究」と題して、玉ねぎの皮とコーヒーを使った「染めもの」を作成し、その工程と染めあがった作品を展示しました。
古くから広く親しまれてきた「草木染め」を知り、正しい手順と化学反応の妙について書籍で理解を深めながら、キッチンで料理をするように行う草木染めの体験。
今や合成染料と工業的な染色技術の向上により、発色の良い、美しい色に均一に染上げられた商品が当たり前に手に入るようになりましたが、日本の四季折々を彩る草花を使い、自らの手で染色を行うことで、つくりての商品や職人の技術、ひいては身の回りの植物への見方が変わり、「染めもの」への造詣が深まるのではないでしょうか。
自由研究を行う上で、私達が実際に参考にした書籍と、その手順を紹介します。
■ 書籍について
参考にした書籍は三冊です。
『楽しんで、ナチュラル染色』
『Veritecoの草木染め 春・夏・秋・冬 手づくりのあるくらし』
『草木染めレッスン帖』
どの本を選んでいただいても、はじめて草木染めを体験される場合の入門書として十分な内容ですが、本によって「工程写真が大きいもの」「布以外の作例が豊富なもの」「染色に使われている植物・媒洗剤の違い」など、少しずつ異なっています。
自由研究で行った「染」は、三冊のエッセンスを少しずつ採り入れた、複合的な内容になっています。
各書籍の内容については商品ページにてご紹介しています。
■ 道具について
・豆乳
・玉ねぎの皮
・ミョウバン
・洗い桶
・ボウル
・ざる
・鍋
・輪ゴム
・菜箸
・スケール(はかり)
・さらしなど染色したいもの
・ゴム手袋
ご家庭にあるもの、スーパーで購入できるものばかりです。
玉ねぎの皮は染めるものの重量の50%の量が必要になりますので、捨てずにとっておいて下さいね。
■ 濃染処理をする
濃く染まるように、布地にタンパク質成分を付与する下処理を行います。
一般的に、植物性繊維の布地(綿・麻など)は、動物性繊維に比べてタンパク質成分がほとんどないと言われています。
前日まで、染色する布地(自由研究ではさらしを使用)を水で薄めた豆乳に浸して揉み洗いし、その後乾燥させておく。
■ 媒染液にひたす
ミョウバンを溶かした媒染液を作り、さらしをミョウバン液につける。
ミョウバンは水に溶けづらいので、最初に少量のお湯で溶かしてから水で希釈して下さい。
媒染剤に含まれる金属イオンが、布の繊維と色素をつなぐ役割をし、発色を良くします。
媒染には、染料よりも先に行う先媒染と、後に行う後媒染があり、媒染剤や染料の種類により工程が異なります。玉ねぎの皮は先媒染が良いとあり、先媒染にて行いました。
30分くらい浸けたらさっと水洗いして絞っておきます。
■ 染液を用意する
玉ねぎの皮を水から火にかけ、沸騰後3~40分煮出したらざるでこす。
玉ねぎの皮など野菜くずは立派な「おだし」がとれる素材でもあります。
キッチンが、何とも空腹を刺激する、いい匂いに包まれました。
■ 染液で煮る
出来上がった染液にさらしを入れて、沸騰後30分ほど弱火で煮ます。
途中何度か箸で返すなどして様子を見ながら行ってください。
煮終わったら火から下ろして、冷めるまで待ちます。
この時、さらしを畳んで一部を輪ゴムで括ったり、くしゃくしゃっとボール状に丸めて紐を巻きつけたりすることにより、模様染めも楽しめます。
どんな柄になるのか、染めたものを開く時のドキドキと感激は筆舌に尽くしがたい体験です。
■ 水洗いして、干す
染め上がったら水で布をよく洗い、日陰で干します。
乾燥したらアイロンを当てる(あて布をして)ことで、より色が定着しやすくなります。
しばらくは色落ちなども考えられますので、お洗濯の際には十分にお気を付けください。
草木染めで染色をしたものは、長く利用していくうちに色あせなども見られます。
経年による変化を楽しみながら、退色したものを染め直してみるなど、手入れをしつつ長く使ってみるのも素敵です。
本の販売をするだけではなく、そこから一歩、お客様の生活に踏み込んで「染」を体験していただく提案を、よりイメージを喚起しやすい形で。「本と人をつなぐ」方法を日々模索しているうなぎBOOKSにとって、この自由研究の展示は、本と人を「染」という観点でつなぐ、新しい提案になるのではないかと思いました。
ご家庭で、暮らしを手軽に彩る「草木染め」を、本を読みながら実践されてみませんか。(研究員H)