【つくりて訪問記】最古にして先端でありつづける、西村織物の挑戦

最古にして、先端であること

普段から店頭で商品をお取り扱いしているなかで今回、アクロス福岡店でのPOPUP開催をきっかけに、実際に現場へ足を運んでお話しを伺う機会に恵まれました。

福岡県筑紫野市に本社工場とギャラリー「ORIBA」を構える西村織物は、160年以上の歴史をもつ博多織最古の織元です。代々受け継がれてきた伝統と、磨き培われてきた確かな技術を礎に、博多織の帯づくりを中心としながらも、異分野とのコラボレーションや帯幅を活かした小物づくりなど、織物の新たな可能性を追求し続けているつくりてさんです。

理念として掲げるのは、「最古にして、先端であること」。その言葉どおり、伝統工芸の担い手として歴史を守り続けながらも、常に新しい価値を生み出そうと挑戦し続ける姿勢であることを今回、現場にお邪魔して随所に感じることとなりました。

すべては、自らの手で生み出す

西村織物では、博多織の図案作成から染色、糸繰り、整経、製織、仕上げまで、糸づくりを除くほぼすべての工程を自社一貫で行われています。それぞれの工程には伝統工芸士をはじめとする職人の技が息づいており、分業でありながらも一つひとつの工程に確かな技術と経験が注ぎ込まれることで、一本の美しい帯が生み出されています。

ギャラリーには歴代のアーカイブとして、さまざまな組織や意匠で織られた帯が大切に保管されていました。これらは単なる過去の作品ではなく、西村織物が歩んできた歴史の厚みと、受け継がれてきた技術の蓄積であり、ものづくりへの確かな自信と誇りを感じました。

また、毎年博多祇園山笠の時期に発表される限定柄の男帯「Yamaobi」もアーカイブとして保管されており、時代ごとの挑戦や歩みが丁寧に受け継がれていました。

染色も自社で行われており、取り扱う色数は800色以上。工場には絶妙に異なる色見本が数多く保管されており、その一部を見せていただきました。色の表現は伝統工芸士の裁量に委ねられる部分も多く、長年培われた経験や感覚を頼りに理想の色へと染め上げる「勘染め」の技術によって生み出されるものだといいます。博多織は職人の感覚と技術に支えられた伝統工芸品であることを改めて感じる瞬間でした。

帯から生まれる新しい循環

博多帯の美しさを着物だけにとどまらず、普段から身近に楽しんでほしい。本物の絹に触れる機会をもっと増やしたい。そんな想いから、帯だけではなく時代の流れに合わせた新たなものづくりにも取り組み、帯幅を活かしたアイテムとともに新しい循環を生み出しています。

着物で身に着ける帯の美しさをそのまま持ち歩いてほしいという想いから生まれた「おたいこばっぐ」は、八寸名古屋帯の幅をそのまま活かしたアイテム。織りが生み出す立体的な表情を楽しめるよう、半幅帯から仕立てた袋織ポシェットも展開されています。 そのほかにも、涼しげなゆかた帯から生まれた文庫本サイズのブックカバーや、色柄豊富な伊達締めを活かした伊達がま口など、帯地の魅力を日常で楽しめるアイテムが生み出されています。

帯としての役目を超え、新たなかたちで人々の暮らしに寄り添うものづくりからは、伝統を守るだけでなく、新たな価値へとつなげていく西村織物らしい挑戦の姿勢を感じられました。

また、織り続ける中で生まれる課題を解決するためにも取り組まれています。

織る過程でどうしても発生してしまう絹糸ののこり糸は、最高級の絹糸に変わりはないものの、細く繊細なことから再利用するには大きな課題でした。この課題を解決するニットメーカーとの出会いをきっかけに、絹100%の光沢感があり肌触りの良いニットアイテムに生まれ変わることとなります。色味や組み合わせは担当者の裁量によるもので、その時々によって違う、1点もののストールやネックウォーマーが生まれました。

異分野とのコラボレーション

織物の美しさをより多くの人に届け、可能性を広げるため、異分野とのコラボレーションにも積極的に取り組まれています。意匠から織りまでを一貫して手がけるからこそ実現できる挑戦です。

博多祇園山笠に向けて発表されている男帯「Yamaobi」は、博多人形師の中村弘峰氏のデザインにより誕生したコラボレーションシリーズです。毎年新たなデザインが発表され、人々を魅了しています。

献上柄の由来となっている独鈷(どっこ)と華皿文様を本来の姿に描き起こした定番図案の独鈷華皿シリーズは、毎年限定色が発表されています。

仏具である独鈷は煩悩を打ち砕く法具を、華皿は仏の供養の際に華を散布するための皿であり、由来を持つ文様を改めて見つめ直し、本来の姿を意匠として表現することで、博多織を象徴する献上柄を再解釈しています。

今回のPOPUPでは、独鈷華皿がプリントされた大風呂敷を取扱っています。

経糸に箔糸を用いた「佐賀錦」

金・銀・漆などを施した和紙でできた箔糸を経糸に、染色した絹糸を経糸に用いて織りあげる佐賀錦は、精緻を極めた手仕事によって織りあげられ、西村織物では、織機での量産を可能にしています。

箔糸は平たいため捻じれないよう1本ずつ整経が必要となり、手間と精緻を注いだ生地ではあるものの、西村織物では高品質でありながら手にとりやすい価格帯を実現されています。

今回のPOPUPでは、佐賀錦が施されたミニトート、メガネケース、名刺入れを取扱っています。

さいごに

本社工場の暖簾をくぐった瞬間、工場に響く織機のパタパタっと軽快な音に包まれました。ギャラリー「ORIBA」を訪れ、工場を見学する中で感じたのは、伝統を受け継ぐことと、新しい挑戦を続けることは決して相反するものではないということです。積み重ねてきた歴史があるからこそ、新たな価値を生み出すことができる、ものづくりへの真摯な姿勢が、西村織物の魅力そのものだと感じました。

うなぎの寝床アクロス福岡店では、2026年11月16日(月)までの期間限定POPUPを開催し、伝統的な博多帯を使った小物や上質な絹100%のストールなどのアイテムも展開しています。ぜひこの機会に、織りのその先を見据えた西村織物のアイテムをご覧ください。お待ちしております。

アクロス福岡店 福島

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