【もんぺ巡業・出張 現地レポート:沖縄編】やちむん通りの入り口から「壺屋の景色をつなぐ」

「もんぺ巡業」や「もんぺ出張」では、自分たち自身が各地に足を運び、直接もんぺを届け、これまで見聞きしたり、学んだりしてきたことを私たちの言葉で伝えていきたいと考えています。オンラインで情報を得たり、買いものできたりする時代ではありますが、画面の上だけでは伝えきれないことも、まだまだたくさんあります。各地でお客様や現地の方と顔を合わせることで感じたこと、知れたことを記していきます。

壺屋の『いりぐち』からのぞく過去・現在・未来

日本屈指の観光地、沖縄・那覇の国際通り。
そんなにぎやかな場所から徒歩5分の場所に、今回の会場となる「育陶園 壺屋のいりぐち」はあります。 昨年「やちむん通り」の入口にオープンしたお店は、やちむんに加え、デザイナーの方とのコラボ商品やスタッフの皆さんが選んだ沖縄の雑貨なども並ぶ場所。2階では今回のもんぺ巡業のように全国のつくりてによるポップアップイベントも行われています。沖縄や全国の幅広い文化やつくりてとの新たな出会いを楽しむことができます。 

もともとこの場所には長年地域で親しまれてきたお店があったそうですが、数年前にそのお店が移転することに。やちむん通りの入口、壺屋の顔ともいえる場所だからこそ、壺屋らしい景色や文化を大切にする場であり続けてほしい。そういった思いから育陶園がその場所を引継ぎ、6店舗目の店舗を出店する決断をされたそうです。

会場となる2階へ続く階段の壁には沖縄の赤土が使われている

今回の巡業では、開催前に育陶園の方にご案内いただき、壺屋のまちを歩いて回る機会がありました。かつて首里城まで続いていたという細い道が張り巡らされ、登り窯の跡や工房が今も残るまち。陶芸体験工房や職人さんの仕事場を訪ねながら路地を歩いていると、育陶園が行っている「壺屋を訪れて体感する」というまちづくりを強く感じることができます。

そこで改めて考えたのが、育陶園が掲げる「壺屋の景色をつなぐ」という言葉です。訪れる前も何となく理解したつもりでいましたが、実際に現地を歩き、お話を聞く中で、その意味を肌で感じることができたように思います。 

 国際通りの喧騒から徒歩数分という立地でありながら、壺屋には驚くほど穏やかな時間が流れています。しかしその一方で、開発や地価の上昇によって昔ながらの景色は少しずつ失われつつあるそうです。すべてを昔のまま残すことは難しい。それでも、そこに暮らし働く人の生活や仕事を守りながら未来へ進んでいく。そうした考え方は、壺屋焼の歴史や育陶園の取り組みからも感じられました。 

公害問題に伴う条例により登り窯が使用できなくなった後も、製法を変えながら壺屋でのうつわづくりを続けてきた人たちがいました。そして育陶園もまた、伝統的な壺屋焼を大切に受け継ぎながら、店舗ごとに異なる提案を行い、現代の暮らしや感性にもなじむ多様なうつわを届けています。過去の姿をそのまま残すのではなく、変化を受け入れながら大切なものを未来へ手渡していく。その姿勢に触れたことで、壺屋の景色を「残す」ではなく「つなぐ」という言葉を選ばれている理由に、少し近づけた気がしました。 

かつて使用されていた登り窯。現在では背景にマンションが見える

また、育陶園では職人の方々の働く環境の改善や、自分たちで作ったものを自分たちで届ける仕組みづくりにも力を入れられています。かつては卸売中心の時代もあったそうですが、現在はつくりてとつかいてをより近い距離で結びながら活動されています。さらに3Dプリンタなどの新しい技術も取り入れ、伝統と革新の両立にも挑戦されています。伝統を守るとは変わらないことではなく、これから先も続いていけるように変化し続けることでもあるのだと学びました。

獅子づくりの工房に並ぶシーサーたち

 

景色をつなぐ、人をつなぐ 

今回の巡業でも、多くの方との出会いや再会に恵まれました。 旅行中に偶然立ち寄られ、「もんぺ、前から気になっていたんです」とご購入いただき、そのまま穿いていかれた方。 親子3世代でもんぺを愛用いただいていて、家族全員でわいわい楽しくお買い物を楽しんでくださった方。 昨年の巡業でもんぺを初めて購入し、「気に入ったので今年も新しいもんぺを買いに来ました!」という方。

「もんぺ自体は知っていたけれど、実際に触ってみたかった」というお声もとても多く、嬉しさとともに改めて巡業の意義を感じました。 また、「来年もぜひ来てください!」というお声も数多くいただき、お客様と直接お会いできる機会の大切さを実感するとともに、大きな励みとなりました。 

何より印象に残ったのは、人の温かさです。育陶園スタッフ複数の方から「社内のコミュニケーションを大切にしている」という話をお聞きしましたが、皆さん本当に仲が良い。休憩時間に連れだってもんぺを見に来てくださり、楽しそうに試着されていました。巡業前日には工房2階で夕食をご一緒する機会もあり、畳の部屋に長机を並べて囲む食事の時間は、まるで親戚の家を訪ねているような温かな雰囲気でした。

差し入れでいただいたちまきとチャンプルー。
沖縄の料理を沖縄のうつわにあわせた時の美しさに思わずため息

八女では長袖でないと涼しいくらいの気候でしたが、沖縄はまだ半袖で過ごせる暑さでした。その土地ならではの気候や暮らし、お客様との出会い、そして育陶園の皆さんのものづくりへの姿勢に触れ、多くの学びをいただいた3日間でした。

そんな沖縄での時間を振り返る中で、八女との共通点にも改めて気づかされました。
戦禍を免れ、やきもののまちとしての風景や文化が今も息づく壺屋と、戦災や大規模な開発を免れ、歴史ある町並みや手仕事の文化が残る八女には、歴史とともに受け継がれてきた営みが今も暮らしの中に息づいているという共通点があります。 

地域に根差した文化を守るだけでなく、今の暮らしの中で生かしながら未来へつないでいこうとする育陶園の考え方には、久留米絣やもんぺを通じて地域文化や風景を現代の暮らしへ届けようとする、うなぎの寝床の取り組みにも重なるものを感じました。 

人がいてこそ、お店もものづくりも続いていく。その当たり前だけれど大切なことを改めて感じた、心に残る巡業となりました。

陶芸体験ができる「育陶園 壺屋焼やちむん道場」。
正面には大小さまざまなシーサーが並ぶ

同じく育陶園店舗「nan*ne」でいただいた、生麺がこだわりの沖縄そば。
もちろん器は育陶園のもの

倉庫・物流拠点 織田 

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