
「もんぺ巡業」や「もんぺ出張」では、自分たち自身が各地に足を運び、直接もんぺを届け、これまで見聞きしたり、学んだりしてきたことを私たちの言葉で伝えていきたいと考えています。オンラインで情報を得たり、買いものできたりする時代ではありますが、画面の上だけでは伝えきれないことも、まだまだたくさんあります。各地でお客様や現地の方と顔を合わせることで感じたこと、知れたことを記していきます。
親戚のような人たちが暮らす島、宮島

世界遺産の島・宮島は、世界中から人が訪れる日本随一の観光地。しかし、私はとてもありがたいことに、親戚のような人たちが暮らしている場所として、小さい頃から島の違う一面を垣間見せてもらっていた。 夕方のフェリーで観光客が去っていったあとの、鹿と月しかいない夜の静けさ。メイン通りから外れた路地にひっそりと点在する、食料品店やお肉屋さん。それぞれの仕事を終え集まる島の人たちの賑やかな集まり。そこには、普段観光で訪れるだけでは見えない宮島の「日々の営み」が確かに存在している。
親戚のような大聖院の皆様にご縁をいただき、お寺でもんぺのイベントをさせていただくようになって早10年。最初は国内外の観光客の人たちに対して、少しでも久留米絣を知ってもらえれば…ともんぺを持っていったのだが、想定以上に島民の方々がたくさん来て買っていってくださり驚いたのを覚えている。牡蠣屋さんや文具屋さん、旅館や飲食店の皆様や、もみじ饅頭屋さん。さまざまな業種の方々が島で暮らしたり働いたりしていて、忙しい仕事の合間を縫って、みなさん大聖院まで長い石段を登って上がってきてくださる。
会場でご近所・お知り合い同士が一緒になることもしばしば。「これ、絶対似合うから穿いてみんしゃい」と、ファッションショーがはじまり、わいわいがやがや。宮島もんぺ巡業はいつもとても賑やかだ。もちろん島外からも、毎年めがけてくださる方もたくさんいらっしゃる。久々に大聖院さんを参拝したとおっしゃる方や、弥山の清掃登山の帰りに必ず寄ってくださったりする方など、コミュニティーの輪が広がっていくのもまた嬉しい。
普段は、グループ会社のUNAラボラトリーズでツーリズムの仕事にも携わっている身として、改めて自分自身が取り組んでいきたい観光は「人間と営み」がテーマだなと感じる。自分とは違う暮らしをしている人、違う考えを持っている人、違う生業をしている人と出会い、話し、繋がりを結んでいく。
私にとって、もんぺ巡業とは、そういう新しい出会いの場だ。人と人はもちろんだが、「もの」との出会いの場でもある。会場で紹介している「久留米絣」をはじめとした日本全国のテキスタイルは、私にとってはただの物質的な布ではなく、それを作る人々や産地の思いが凝縮され織り込まれた本みたいなものだ。
どんな物語が織り込まれているのか、来場された方々に解説したり体感してもらったりしながら、人と布の縁を結んでいくような感覚。特にここ数年は、よつめ染布舎の小野さんや、神藤タオルの神藤さんなど、思いを持ってものづくりをされている作り手の皆さんとの共同出展をしているので、二重にも三重にも輪が広がっていっている。
大聖院さんについて紹介
最後に、長年に渡り、寺院という神聖な場所での開催にご協力をいただいている大聖院さんについても紹介させていただきたい。
宮島と聞くと「厳島神社」「海」を真っ先に思い浮かぶが、実は宮島は島そのものが御神体として祀られてきた。古代から自然崇拝・山岳信仰の対象とされてきた聖なる島で、その中心にあるのが標高535mもある「弥山」という山だ。
大聖院は、およそ1200年以上も前、806年に唐より帰国した空海が、その弥山に入って修行を重ねて開創したのが始まりだ。かつて、神道と仏教が一つであった「神仏習合」の時代には、大聖院は厳島神社の別当寺(神社を管理・統括する寺院)として、明治維新に至るまで厳島の祭祀や法会を司る中心的な役割を担ってきたお寺なのだ。

宮島を訪れる際には、海の厳島神社だけではなく、ぜひ御神体である山側の宮島のほうにも足を運んでみてほしい。私もずいぶん昔だけど、軽いハイキングの気持ちで弥山に登ってみたら、なかなかの山道で、ヒーヒー言いながら登った覚えがある。でも原始林が残り、修験道でもある弥山はとても神聖な空気が感じられて、別世界に行って帰ってきたような感覚になった。
そういう山岳信仰や修験の歴史とも密接に繋がっている真言宗(密教)の大聖院さんでは、お寺なのに「ご祈祷」を行っている珍しいお寺だ。参拝の際には、弥山の守護神である「三鬼大権現」を祀る摩尼殿でのご祈祷を受けると、とても貴重な体験ができるかも…!
なお、前述の空海の弥山修行の際に焚かれた護摩の火は、「消えずの火」として一度も途絶えることなく今なお、大聖院で護り継がれている。しかし、今年の5月、弥山の山頂近くで「消えずの火」を守ってきた大聖院の「霊火堂」が火災により全焼する被害が発生してしまった。
大聖院さんでは再建に向けて、クラウドファンディングを実施されているので、よかったらぜひ見てみてほしい。
https://camp-fire.jp/projects/970995/view

また来年、秋の宮島でたくさんの方にお会いできるのを楽しみにしています。 今年も開催に向けてご協力くださった皆様に心から感謝を込めて。
うなぎの寝床/UNAラボラトリーズ 渡邊
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