織のあるネイティブスケープ【1】 平織り・綾織り・朱子織りって何だろう?

「織」には種類があるらしい!

「地域文化って何だろう?研究会」の3回目となる企画展「織のあるネイティブスケープ展」がはじまりました。

この「織」をテーマとするにあたり、私たち研究員は「そもそも織とは何なんだ?」という視点から調査することにしました。私たちが毎日着ている衣服は、おおまかに分けると「織物(textile」か「編み物(nit)」に分類されます。今回の研究ではそのうちのひとつ「織」にフォーカスし、まずは「3つの織り方」があることから調査をはじめてみました。

この3つの織り方は「三原組織(さんげんそしき)と呼ばれ、経糸(たていと)に緯糸(よこいと)を通して作られる基本の織り方で、平織り(ひらおり)、綾織り(あやおり)、朱子織り(しゅすおり)の3つの織物組織のことを言います。
なんとなく耳にしたことがあるようにも思いますが、この言葉を聞いてどんなものなのかをイメージすることは、織物の仕事に本格的にかかわっている人以外には難しいものです。

そこで少しだけ、私たち研究員がそれぞれどんな特徴や織物の例があるのか簡単に調べてみました。

※織物組織とは=経糸と緯糸を一定の規則に従って組み合わせ、面状に織り上げることを「組織する」といい、組み合わせ方を「織物組織」といいます。 ~きもの用語大全より~

 

(1)平織り(ひらおり)とは?

平織りは英語で「Plain weave(プレーン・ウィーヴ)」と言われ、経糸1本と緯糸1本を交互に交差させて織る手法で、3つの織り方の中では一番簡単純(簡単)な織り方です。

糸の交差する点(組織点)が多く、しっかりと硬く頑丈な仕上がりになります。薄くてもハリやコシのある、耐久性の高い生地に仕上がることが特徴です。 また、摩擦に強く丈夫です。糸の交差回数、そして糸の隙間も多いため薄手に仕上がります。そのため実用的で薄手のシャツなどに用いられることが多いようです。また、経糸と緯糸が生地の裏表均等にあらわれるので、他の組織よりも生地の裏表がわかりにくいことがあります。

平織の代表的な例としては、ギンガム、オーガンジー、シャンブレー、帆布(はんぷ)、ガーゼ、シーチング、ブロード、ローン、オックスフォード(オックス)、キャンバス、縮緬(ちりめん)など。

現在うなぎの寝床で紹介している商品の中で1番多くみられるのが「平織り」のもの。
例えば、久留米絣のもんぺ、会津木綿でつくられたHARAPPAのエコバック、帆布でできたタケヤリのトートバッグなどが平織りの代表格。平織りである久留米絣のもんぺの生地には、裏表がなく生地自体が丈夫なのは、この織り方で製作されているからなんですね。

 

(2)綾織り(あやおり)とは?

綾織りは英語で「Twill weave(ツイル・ウィーヴ)」と言われ、「斜文織り(しゃもんおり)」や「ツイル」とも呼ばれています。経糸、緯糸3本以上で構成されて、経糸と緯糸を2本ずつ抜かすなどして交差させて作られています。糸の交差によって生地の表面に、斜めに文様(模様)が入って「畝(うね)」のように見える特徴があり、この畝のような線を「綾目(斜文線)」と呼びます。

できあがった模様は左右非対称になります。平織りに比べ、糸が交差する点が少ないため、摩擦にやや弱く耐久性がも少々劣るのですが、衝撃に強くしなやかで、光沢感のある生地に仕上がります。糸の密度を高くして厚地の生地を織ることもできるので、ジーンズやチノパンのような作業着にもよく使われます。ソフトな手触りで、伸縮性(ストレッチ性)があり、シワになりにくい織物を作ることができる織り方です。

綾織りの代表的な例としては、デニム、サージ、ギャバジン、サキソニー、チノクロス、ビエラ、フランス綾、カルゼ(畝のはっきりした右綾の毛織物)、ヘリンボーン(変化織りのひとつ)など。綾織りは他の織り方に比べ、非常に種類の多い織り方だそうです。

「綾織り」の商品の代表例としては、F.F.G 福山ファクトリーギルドのデニム、インスタイルの国産い草で織られたござ商品などをうなぎの寝床では紹介しています。衣類だけではなく、ござのような日用品にもこのような織を用いたものがあるんです。

 

(3)朱子織り(しゅすおり)とは?

朱子織りは英語で「Satin weave(サテン・ウィーヴ)」と言われ、他の織り方に比べると、組織点が少なく、経糸、緯糸のどちらかがほどんど表面にあらわれず、表面に経糸または緯糸を長く浮かせた織り方です。サテン生地を思い浮かべてみるとわかりやすいと思います。経糸または緯糸が4本飛んで下に潜り交差するもの「4本上:1本下」を「5枚朱子」と呼びます。

経糸と緯糸の交差する点がほとんど目立たないため、表面が滑らかで光沢があり、繊細で美しい仕上がりとなるのですが、その半面、糸が浮いている距離が長いことから、摩擦に弱く引っ掛かりやすい欠点もあります。華やかで高級感のある生地になるため、普段使いの衣類に使われるというよりは、フォーマルウェアやパーティー用のドレス、ブラウス、ジャケット、高級アイテムなどの裏地やネクタイに使用されることが多いのも特徴。

朱子織りは三原組織の一つではありますが、綾織りの一種ととらえることもあり、綾織りの変化組織と言われることもあるようです。

綾織りの代表的な例としては、サテン、ベネシャン、ドスキンなど。
現在うなぎの寝床で紹介している商品の中には、完全に「朱子織り」と分類されるものはありませんが、「朱子織り」の要素もやや取り込んで、織を表現している商品もあるようです。

 

MONPEやジーンズ、ステテコにタオル…さまざまな商品を見て触れて

今回の研究をスタートするにあたり、うなぎの寝床には、「織」を代表するMONPE(もんぺ)やジーンズをはじめとするさまざまな布製品だけではなく、いぐさを使ったインスタイルのような、一見「織」には結びつきにくい製品もあることがわかりました。

基本の3つの織り方ってどんなものなのか、そして地域特有の織物がうまれてきた背景や歴史についてなど、手に取って触れてみながら「織」について学んでいくのも楽しいかもしれません。

(研究員K、研究員U)

◯織物・編物の商品を見てみる

 

参考文献
・シケンジョテキ(2020. 10. 13)「【オンライン織物研修 ⑫】三原組織のキャラクター」
・MUUSEO SQUARE「『平織り・綾織り・朱子織り』の特徴と違い。三原組織を考える」
・ゴム紐・平ゴム製造販売津田産業(2019. 10. 28)「織物の三原組織(さんげんそしき)についてゴム紐の専門家が説明をします」
・藤掛株式会社「綾織りとは」
・藤掛株式会社「繻子織り(朱子織り)とは」 
・きもの用語大全「織物組織とは」

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