思い、巡らし、行動す 藍染絣工房 / もんぺ博覧会2026

うなぎの寝床が久留米絣と関わりはじめて10年以上が経ちました。
その間に良いことも、そうでないことも様々なことが起こり、変化がありました。ただ、変わらないのは、織元も私たちもみな、久留米絣を伝えたい、久留米絣を繋げていきたいと日々模索し、葛藤し、動こうとしていることです。久留米絣に関わるそれぞれが「今」考えていることや取り組んでいることを記してみたいと思います。

工芸の多くは自然が生み出した素材を、
人間が再編集しているにすぎない

「手仕事」と総称されるものづくりは、一見すると「人間の手」だけで作られると錯覚してしまうが、実は人間以外の働きがあって初めて完結することも多い。例えば日光によって乾かしたり漂白したり、バクテリアや菌によって発酵したり。現在、久留米絣産地にデザイナーとしても関わっていただいている吉田勝信さんが、「手間暇」の”ヒマ”はものづくりに介在する「他者性」を象徴している、と語られていたのが、とても印象的だった。

考えてみれば、工芸の多くは自然が生み出した素材を、人間が再編集しているにすぎない。和紙は、植物の繊維を解いたのち再び絡ませて構成する。土壁も土や石を篩い分け(ふるいわけ)、幾層にも塗り重ねて壁となる。もちろんそこに膨大な手間と時間がかけられるわけだが、人間が自然をコントロールしているわけではなく、自然の摂理に人間が合わせて手を添えているようだな、と思うことも多い。

 

天然灰汁建て発酵という
古来のやり方で藍染を行う「藍染絣工房」

藍染めは、まさに人間とバクテリアが協働して生み出す技法だ。特定の植物に含まれる「インジカン」という物質が酸化することで「インジゴ」染料が生み出されるが、インジゴは不溶性なので染料としてそのままでは使えない。そのために酸化乾燥したインジゴ成分が含まれる「蒅(すくも)」をアルカリ液に溶かし、微生物の働きによって「ロイコインジゴ」という成分に還元させ、藍甕の中の染料とする。このロイコインジゴが糸や布に付着し、空気に触れて酸化することで、再び「インジゴ」に戻り青色に発色するのだ。

広川町にある藍染絣工房では、木灰を漉した灰汁で蒅を溶かし、貝灰や小麦フスマで微生物による還元を手助けする、天然灰汁建て発酵という古来のやり方で藍染を行っている。水質や温度の管理はもちろんのこと、藍が疲弊しないような染色ルーティンも必要だ。染めを重ねることで徐々に年老いて弱っていく薄い染料をあえて残し、微妙な色の調整ができるようにしているため、細やかなグラデーションを得意としている。

コントロールしきれない藍という生物と付き合いながら、求める色を出していく、せめぎ合い。それはまるで、どんなに完璧を求めても、絶対に柄のゆらぎが生じる、久留米絣の技術にも通じるところがある。

AIなどのテクノロジーが急速に発達しているいまだからこそ、手間暇のヒマの「人間ではないもの」の位置付けは、とても面白いなと個人的には思う。人間の手には負えない「何か」とどう対峙し、付き合い、発展してきたか、というところに、国や地域ごとの文化の多様性も眠っているのかもしれない。

 

うなぎの寝床 / UNAラボラトリーズ 渡邊 ∈(゜◎゜)∋ ウナー

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