うなぎの寝床では、久留米絣を日常で体感してもらう一つの方法として、2015年からMONPEを販売してきました。なるべく生地を無駄なく使える型を設計して制作していますが、裁断するとどうしても股下のハギレやMONPEには用尺が足りない生地が出てきます。そしてMONPEをつくり続ける限り、このハギレが増え続けることは避けられません。 こうしたものを再活用し、ハギレセットを販売したり、あずま袋、MINI BAG、がま口などを制作してきました。
そして今回、MONPEの裁断で出る三角のハギレを活用する「PATCHBY(パッチバイ)」を立ち上げ、製品開発をしました。このコラムでは、なぜPATCHBYを作ったのか、その思いや過程をご紹介します。
30以上の工程を経て生まれる久留米絣
とことん使い切って伝えたい!
おそよ30工程以上。手間をかけて織られている久留米絣のことを知れば知るほど、最後の最後まで使って伝えたい。これはUNA PRODUCTSの製品をつくる時に考えていることです。
そうした中で、裾に生地の耳を使ったスカートをつくったり、なるべくハギレを出さないような直線のパターンでKAPPOGIを制作しています。
最初につくった現代風MONPEは、着尺の久留米絣生地で効率よく取れるのにはどうしたらいいか?を考え、パターンを設計しています。しかし、裁断すればどうしても股下のはぎれや、MONPEにするには足りない長さの生地が出てしまいます。こうしたものを再活用し伝えられるように、ハギレセットや、あずま袋、MINI BAG、がま口などを制作してきました。 ただ、それでも日々生産する中でハギレはどんどん生まれます。
MONPEを生産して残る生地で何かできないか。そうしてハギレを使った製品づくりが始まりました。
MONPEを裁断して出るハギレ
久留米絣のためのスカート
久留米絣の反物の幅は約35~38cm。反物2枚を横方向に縫い合わせ、裾は生地の耳にあたる部分をそのまま使用しています。
KAPPOGI(久留米絣)
2枚並べた生地を中心で接ぎ合わせるようにして身頃をつくっています。襟ぐりを丸くカットする部分以外ハギレが出ません。
「無理のない生産」をどうつくるのか?
縫製工場「久留米サンモード」との取り組み
PATCHBYの制作に協力していただいているのは、長年うなぎの寝床のMONPEを縫製して頂いている「久留米サンモード」さんです。
MONPEをはじめ様々な縫製加工をされている久留米サンモードさんは、裁断すれば生まれるハギレが廃棄される現状に、工場として向き合い続けてきました。そうした中で、ハギレを使用したいくつかのサンプルを持ち込み、密な話が進みます。何度も繰り返し工程や効率の確認。熱のこもった打ち合わせが続きました。
最初は現代風MONPEのパターンが抜き取られた後のハギレの山から一枚一枚ピックアップし、パーツとして形を整えるべくこれまた一枚ずつはさみでカットして、ようやくパーツを揃えて縫製していました。しかしながら、これでは時間や人手がかかりすぎて継続的な生産ラインにつなげられませんでした。
MONPEのパターンデータの刷新
どうしたら効率的に、無理のない生産ができるか?試行錯誤を重ねるなかで導き出した策が、「MONPEのパターンデータの刷新」でした。MONPEの裁断時のパターンデータとして、PATCHBY用のパーツを入れ込むことで、MONPEの生産と同時にPATCHBYに必要なパーツも裁断できるようにしました。
現代風MONPE Mサイズの裁断生地から「身頃・ポケット・股上・股下」のパーツを抽出。腰部分はMONPEには用尺の足りない生地から制作。
脚部パーツは12枚(表6枚+裏6枚)。6着分のMONPEを裁断するときにできるパーツです。これらとその他パーツを組み合わせてパンツが出来上がっています。
PATCHBY、誕生!
最終的に出来上がった最初の型は「TUGI PANTS」。サルエル風のパンツで、MONPEよりもさらにゆったりとしたシルエット。ウエストはMONPE同じゴム仕様で調整紐付き、男女兼用の1サイズです。
他にも PATCHBYシリーズとして様々な型を試作していますが、あくまでMONPEを生産する上でしか生産されないものとなります。
TUGI PANTS
ハギレの活用を目指し、MONPEの生産に合わせて制作するため、柄の入り方はそれぞれ異なります。
木綿往生
お米を一粒残さず食べるように、織物を使い切ることを目指して
織物ができるまでを遡ると、木綿の栽培から始まります。春に蒔いた種が芽吹き、秋には綿花が弾けます。収穫した綿花から糸を紡ぎ、染めて、織って、ようやく生地が出来上がります。そこに費やされた時間や労力を考えると、やはり捨てるのはもったいないことなのではないでしょうか。これは、田んぼで実ったお米を一粒残さず食べなさいと教えてきた日本人の精神性にも似ています。
染織家で倉敷民芸館の初代館長も務めた外村吉之介氏が残された言葉の一つに、「木綿往生(もめんおうじょう)」というものがあります。晴れ着として世に誕生した織物が、くたびれて野良着になり、穴があいて雑巾になり、最後は繊維を解いて紐となり、油の中で火を灯して往生する、という木綿織物の一生を説いた考え方だそうです。
食べ物と同じように、一切の無駄を出すことなく、すべてありがたく頂くという考え方は古くから伝えられてきました。この考え方が、モノをつくる中でも、つかう中でも、連綿と受け継がれていくことを目指して、PATCHBYに取り組んでいきたいと思います。
こうしてできた、PATCHBY。第12回もんぺ博覧会 in 福岡・天神にてお披露目します!
会場にはPATCHBYだけでなく、色柄豊富で多種多様なもんぺがずらり。是非会場に足を運んで、穿き比べ、久留米絣の着心地を体感してください!
第12回 もんぺ博覧会 in 福岡・天神
アクロス福岡 匠ギャラリー1+うなぎの寝床 アクロス福岡店
2025年 6月11日(水) ~ 6月23日(月)
休み 火
営業 10:00~19:00
住所 福岡県福岡市中央区天神1丁目1-1 1F
電話 092-753-7223
駐車場 あり(有料)
その他のお知らせ

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