「鉄」から見える、地球と資源と地域文化

資源の存在から生まれる
ものづくりと地域文化

フライパンに冷蔵庫、車に建物、橋まで、ありとあらゆるところで見かける「鉄」。生活を根底で支える素材であることは言うまでもありません。さらに、私たちの全身を巡る血液にも鉄が含まれているように、あらゆる生命の活動にとっても鉄は不可欠な存在と言えます。

うなぎの寝床 旧寺崎邸では店頭特集『「鉄」でおいしい まろやかコンビ』にて、南部鉄器の鉄と常滑急須の鉄(鉄分)について焦点を当てています。素材のチカラで美味しい茶の間をつくってくれる道具としての二つの「鉄」。詳しくリサーチしてみると、「地域資源と人」とのつながりが見えてきました。

 

地球は「鉄」の惑星だ!

出典:NASA Image and Video Library

それぞれの産地について触れる前に、まずは「鉄」という資源について。

生活に必要不可欠な存在とは言いつつ、素材としての「鉄」を見かけることはあまりないのかもしれません。しかし、実は地球には大量の鉄が存在しているそうです。

鉄の多くは、目にすることのできない地球の中心部に集中して存在しており、その質量は地球全体の約34%。地球の重さの約3分の1を占め、地球最大の質量を持っているのが鉄なのです! 地表の7割を水が覆う地球は「水の惑星」とも称されますが、大量に思える海水も総重量で言えば地球全体の0.02%程度。重さで見ると地球は「鉄の惑星」とも言えそうです。

こうした地球内部にある鉄が海底の隆起や火山の噴火によって地表に現れ、資源として採掘されています。

 

川から「鉄」が
暮らしの道具をつくる、岩手水沢の鉄文化

南部鉄器の産地のひとつ、岩手県・奥州市水沢地域では、鉄を含む花崗岩が広く分布する北上山地があり、付近の河川から「砂鉄」を採ることができました。

それだけでなく、鋳型(鉄器の型)の製作に必要な材料(砂や粘土)、燃料(木炭)などの資源も豊富だったことから製鉄・鋳造の産地として発展。鍋や釜、鉄瓶などの生活道具が作られました。また、岩手県の中央を縦断する北上川は、船での運搬経路としても使われ、全国各地へ物資を運ぶ「流通」の役割も担ったことも産地の発展の一因と考えられます。

近年は水沢地域での鉄の産出はほとんど行われていないようですが、地域の小学校では2007年からたたら製鉄の体験学習を行うなど、地域資源と文化との関わりは守り続けられています。

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土から「鉄」が
土管、トイレ、急須、多種多様な焼き物産地

常滑焼の産地、愛知県・常滑市は、大昔(約650万年前)にあった「東海湖」と呼ばれる巨大な湖の上に位置しています。湖だった地層に溜まった堆積物が良質な粘土を産出。この粘土が「酸化鉄」を多く含み、低い温度でも焼き締まる性質を持っているため、壺や土管など大きな焼き物をつくるのに適していました。また、三方を海に囲まれ、大きな焼き物を東西各地に船で運搬しやすかったことも産地になった1つの要因と考えられています。

江戸後期には、煎茶の流行から急須づくりも盛んに行われ、現在でも急須専門の窯元や商社が数多く残っています。そのほかにも、土管やタイルなどの建築資材、洗面器・便座などの設備、作家による芸術作品など、公共で使われるものから生活道具、芸術品まで、幅広く多様な焼き物がつくられ続けています。

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地球と資源と人とモノ
すべてはつながっている

今回は「鉄」という素材からそれぞれの土地性をみていきました。私たちが暮らす惑星の大部分を構成する要素であり、あらゆる場面で活用される「鉄」。それぞれの地域で資源として産出され、周辺環境や素材の特性を活かして道具が生まれていることがわかります。

道具はその機能だけでなく、私たちと自然の恩恵をつなげているのかも知れないと、文章を書いて考えさせられました。 地球と資源、土地と人、人とモノ。すべてはつながっているんだろうと思います。

荻野

 

参考文献

・NIPPON STEEL「モノづくりの原点-科学の世界 VOL.15 鉄の起源」(2004.10)

・東京大学総合研究所博物館「鉄-137億年の宇宙誌」

・砂鉄川たたら製鉄学習館 HP

・旅する、千年、六古窯 HP「常滑」

 

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