日本の毛織物産地から届けるコート「blanket」

うなぎの寝床では、新しくウールコート「blanket」のご紹介を始めました。
日本の毛織物産地から生まれたコートです。

私たちうなぎの寝床は「久留米絣」などの綿織物の産地である九州筑後地方にありますが、皆さんは日本に毛織物の産地があるのはご存知だったでしょうか。ヨーロッパと並び3大産地とも言われる技術を持った毛織物の産地も国内にあるということは、あまり知られていないことだと思います。

日本の主な毛織物の産地は愛知県の「尾州産地」と大阪府の「泉州産地」です。尾州産地の大鹿株式会社が立ち上げた自社ブランド「blanket」。二つの毛織物産地の高い技術を集めて徹底的にこだわり抜いて作られた「blanket」のコートで、日本の毛織物産地についてご紹介できればと思います。

 


<産地で作り産地から直接届けるコート>

ウールのピーコートやダッフルコートは、どちらかというとやはり海外のイメージで、良いコートはヨーロッパなどの海外で作られているもの、と思ってしまいます。

でもその生地が日本の産地で作られていたものだった、ということがあったとしてもそこまでを私たちはなかなか知ることが出来ません。

国内外の様々なブランドの生地や服を作り続けてきた、老舗毛織物メーカーである大鹿株式会社のデザイナー彦坂さんは、優れたウール生地を作る産地があることがあまりにも知られていない、知ることができない状況と、他の産業と同様に繊維産業として厳しい状況であるということに危機感を感じ「blanket」を作るに至ります。

毛織物産地で長年培われてきた産地の人たちの技術がつまったコートを、産地で作り直接届けることで伝え、知ってもらうこと。また細部まで全てにこだわりぬいたコートを作り続けることで産地が持続し、ものづくりが続くこと。

「blanket」のコートは、日本の毛織物産地の技術と思いが込められたコートです。

 


<日本の毛織物産地「尾州」と「泉州」>

尾州産地
スーツやコートなどの服地を中心とした毛織物産地。
愛知県一宮市を中心とした愛知県尾張地方の西部から岐阜県西濃地区にまたがる地域。

泉州産地
毛布やブランケットなどを中心とした毛織物産地。
大阪府の南部の泉大津市を中心とした地域。

◆尾州産地について

日本最大の毛織物産地で、国内生産量の80%を占めています。

一級河川である木曽川の水に恵まれたこの産地は、綿花や桑(蚕の餌)の生産に適した土壌があり、染色や仕上げに適した軟水の豊かな水に恵まれて綿織物や絹織物などが行われ、古くは奈良時代のころから繊維産業を軸に発展してきました。毛織物への転換のきっかけは、第一次世界大戦時。軍服を作るための毛織物需要が高まる中、海外から毛織物が輸入されなくなり、尾州地域がウールを扱うのに適した湿度と木曽川の水質が染色や仕上げ整理に適していたこともあり、尾州産地で毛織物が生産されるようになりました。

尾州の繊維産地としての最大の特徴は、糸から織物になるまでの全ての工程が地域の中で行われ、分業の協業体制が確立されていることです。それぞれの工程を専門で行う企業が集結しており、専門で行っているからこそ様々な工程ごとに技術力が磨かれ、その技術力の高さを産地内で保有しています。高い技術力が集まり協業体制が整っていることで、産地全体がひとつの工場のようにものづくりが行われています。

尾州産地で加工して作られたウール生地は高品質で高性能な毛織物として、世界でも有数なものとなっており、イタリアのビエラ、イギリスのハダーズフィールドと並び世界三大毛織物産地となっています。

◆泉州産地について

泉州地域は気候や土壌が稲作よりも綿の栽培に適していたことから、江戸時代のころから綿花栽培が行われ、綿織物の生産が行われていました。現在は白生地綿織物を中心に、毛布やタオルなどが作られる産地となっています。

そんな泉州産地の中の泉大津市を中心とした地域では、毛織物と毛布が作られており、現在泉大津市とその周辺地域は毛布製造で国内生産の約90%を占めています。

毛布は江戸時代末期に輸入されるようになり、泉大津市は明治時代に毛布製造が始まりました。それまでは「真田紐」が生産されていた地域ですが、輸入された毛布の評判の良さから毛布製造が始まり、牛の毛を使った牛毛布やその後綿毛布がつくられます。輸入された毛布の肌触りのよさに近づくために試行錯誤を続け、その結果、乾燥したアザミの実”チーゼル”で起毛するなどの様々な技術が生まれました。その後、戦争時に寒い土地で軍用にウール毛布が使われて以降ウールの良さが世の中に浸透し、羊毛毛布が作られるようになっていきます。牛毛布から綿毛布、そして羊毛毛布へと様々に工夫と試行錯誤を繰り返して毛布製造が行われ、現在は羊毛をはじめ、綿、カシミヤ、シルクなどの様々な素材の毛布が作られています。毛布製造の糸から生地になるまでの細かい工程をそれぞれ専門の業者が分担して行う分業体制と協業体制で行われており、毛布の良し悪しに影響するといわれる起毛は「起毛師」と呼ばれる職人が長年培った経験のもと手で風合いを確かめながら行うなど、工程ごとに専門で行われるため、高い技術が培われています。

ご紹介したように、日本には優れた技術が培われてきた毛織物の産地があります。

久留米絣の産地に拠点を置く私たちの地域には、生活の身近な場所に馴染んで織物に関わる工房や工場があるように、毛織物産地の尾州と泉州にも同じように毛織物に携わる工房や工場があるのだろうな、という思いがめぐります。

同じ織物の産地でも、綿と毛という違う原料で、また何を作っているのかで工程や培われている技術が違います。毛織物産地を知ることで、私たちの産地との共通点や違いを知り、再度自分たちの地域の特徴などについて知ることにも繋がるのだと思います。

そして改めて、普通に生活していると表にみえてきづらいものが、ものづくりには沢山あり、そういった今まで見えづらかったものが少しでもみえるようになればと思います。

 


<細部までこだわりがみえるコート>

尾州と泉州の泉大津は、尾州は主に服地で泉大津は毛布と、毛織物産地としての様々な技術が培われてきました。そして、この二つの産地から技術を集めて「blanket」のコートは作られています。

コートは決して安い買い物ではありません。そのため、ずっと長く着ることができる着心地と丈夫で長く着ることができるデザインで、それに応えられるコートを作るために、細部にまでこだわり抜いて作られています。

また、コートを紹介するコンセプトブックも作られています。それぞれの工程を担っている作り手の紹介やコートに対する思いが、丁寧に詰め込まれています。店頭でご覧になれますので、興味のある方はぜひ手に取ってみてください。

コンセプトブックの中から、簡単にですがコートの細部についてご紹介したいと思います。

◯糸◯

原料となる糸選びから始まります。羊毛は生き物の毛なので、その年の気候などにより毎年同じものはありません。また、輸入先の海外との時期のずれや年に一度の毛刈りを想定して取り寄せるなど、難しい判断が必要となります。仕入れた原料を目で見て触って確かめ、品質を安定させるためにブレンドして狙った風合いの糸が作られています。

◯生地◯

無地の生地は仕上がりの綺麗さや風合いが引き立ちます。長年の技術で糸を見極め、細かな機械の調整などが必要となります。たっぷりと空気を含む技法で通常の何倍もの時間をかけて低速で織ることで、糸に余計な負荷をかけず、高密度でもしなやかでふんわりとした生地になっています。

◯生地の仕上げ◯

織り上がった生地(生機)を、洗い、縮絨し、乾かし、起毛をかけます。
職人の感覚とデータをもとに、求められる風合いへと仕上げられていきます。起毛はその日の気温や湿度、色によって毛の出方が変わるため”起毛師”が経験と感覚で機械をコントロールして行われます。

◯刺繍◯

ハマグリ刺繍・ブランケット刺繍ともに、専用のミシンでかがられます。製品になった後に修正することが難しいので、裁断されたパーツに細心の注意を払いながら正確に刺繍が施されます。

◯縫製◯

厚手の生地なので、ゆっくりと丁寧に縫われます。縫製だけではなく、仕上がりには裁断やアイロンのかけ方なども大きく影響するため、裁断士が手裁断で裁断したりハサミの手入れも細かいところまで手をかけて作業は行われています。

◯ボタン◯

シャトル織機の”シャトル”をモチーフにした形で樫の木で一つ一つ作られています。形状を統一し納得するラインを作るため、削りの作業は全て一人の手から作られています。

また、“ダッフルコート 漆黒”のボタンは漆塗りで、本金を使用した沈金加工が施されています。

◯ラベル◯

出来るだけ使う糸を減らすことで、手刺繍の風合いや柔らかい印象が表現されたラベル刺繍が施されています。


 

日本の毛織物産地で、コートのために作り込まれた生地を使い、細部までしっかりと作り込まれている「blanket」のコート。
その肌触りや羽織り心地を実際に体感していただき、日本の毛織物産地について少しでも知っていただけるよう、ご紹介していきたいと思います。

【blanketの商品一覧はこちら】

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