「山×ものづくり」プロジェクト始動 / YAMAPとうなぎの寝床
日常にある道具を山と結びつけ、違う視点で昔からある道具の良さに光を当ててみようと始まった「山×ものづくり」のプロダクト開発。福岡県福岡市を拠点に登山地図GPSアプリを通して、人と山をつなぎ、山を楽しむ文化を未来へつなぐ事業を展開しているYAMAPと、福岡県八女市を拠点に地域文化商社として活動するうなぎの寝床が、一緒にものづくりを考えるプロジェクトです。
今回はその手始めに、山で使う道具として漆塗りの木製食器「ヤマオウリョウキ」と、それを包む風呂敷「ヤマフロシキ」を作りました。山の道具といえば、通常はチタンやアルミ、ナイロンなどの化学繊維といった過酷な環境に適応し、頑丈で軽量な素材が選ばれるものですが、今回はあえて使う人にも手間を要する素材である木や木綿を使い、それでないと出ない温かみとも言える魅力を込めました。
山と共に生きてきた人々が、自然と向き合い生み出し使ってきた道具たち。新しいものではないけれど、いまも受け継がれる技術を生かして現代の暮らしで使えるものを。
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登山アプリのYAMAP、地域文化のうなぎの寝床
遠い活動のようで、伝えたいことは同じ
一本のメールが届きました。「山の登山アプリをつくってる会社ですが、アウトドア視点を持ちながら伝統工芸のことも伝えていきたいです。現在、久留米絣を使ったパンツをつくっていて、うなぎさんとも何か一緒にできないですか?」とこういう内容でした。ホーと思い、代表の白水とものづくり担当原さん2人でYAMAPさんの本社を訪ねました。玄関を入ると雑居ビル(昔の事務所)の4Fの普通のドアを開けると、6畳くらいのがらんとした部屋の奥に少し木の廊下があり、その端に腰丈くらいのでかい木彫りのゴリラが出迎えてくれ、壁には電話が一個おいているだけ、さらに、電話のすぐ上に宮崎県日之影町の亀の子のしめ縄がかけていました。電話を祀ってあるようです。なんとも面白そうなところにきたなと思い、受話器をあげると自動で事務所につながり、会議室に通されました。
代表の春山さんは前の会議が少し押しているらしく、その部屋で一時待機していました。部屋を見回してみると、高い棚の上に禅宗が修行時の食事に使う応量器(おうりょうき)が飾っていました。応量器というのは、5個の器が入れ子になって、それで食事が完結する。シンプルでありながら素晴らしい機能美を持つ器です。漆器であり、轆轤(ロクロ)の仕事の中でも最も美しい物だと思います。
「この応量器いいねぇ。」と原さんと関心していると、春山さんがやってきました。お茶を出してくれて、その器は沖縄の読谷焼と手吹きのガラスだったように記憶しています。挨拶がわりにこの応量器いいですねというとこから始めると、器の話から、YAMAPの歴史、今後なぜ伝統工芸とコラボしたいのか?登山アプリの会社だが、人が自然や地域文化に触れる機会を増やしていくことで人間感覚を取り戻すことが大事だと思っているということ。色々と春山さんの言葉と意思のようなものが僕たちの中になだれてきて、なるほどITやアプリは手段であって安全に地域や山に触れたり、それを共有できたりする仕組みを作っているのだなとすぐ理解できました。
僕らうなぎの寝床も「もの」や「人」を通して地域文化を伝えるという意味合いにおいて、商品である「もの」は、地域文化や歴史、自然を伝えるための媒介物(ツール)でもあり大事なことは、地域文化に触れる機会を増やして自分事化できる人を増やすこと。そういう意味で、やってることはYAMAPさんと全然違うように見えて、同じことをやってるんだなと感じたことを覚えています。
「では何をやりましょうかね?」と開発に話が移った時に、山と生活を行き来できるようなプロダクトを一緒につくれたらいいねと話が落ち着いていき「じゃ〜応量器やりますか。笑」と、部屋に入った時に目についたその漆器を山と生活で両方使える、スタッキングできるヤマオウリョウキの制作をスタートすることに決めました。そして、それを山に持っていくための包みとして風呂敷をつくろうと決め、大分は国東半島に工房を持つ型染とデザインを行うよつめ染布舎の小野さんにデザインをしてもらいました。小野さんは型染の職人でありながら、現代の民族画家だと僕は思っています。「山」をテーマに2つのデザインを起こしてもらいました。
僕はものづくり担当の原さんの人を見る目を結構信じていて、YAMAPのオフィスを出た時に「あの春山さんの目は生きとった、久しぶりに目が生き生きしてる人見た。ありゃーやるばい。」と言われていたのを覚えています。芯を持ちながらうなぎもYAMAPもミッションをコツコツとやりきりたいという想いを共有できたような気がしました。
代表 白水記 (この段落)
→対談記事公開中(YAMAP webサイト)
YAMAP 代表 春山さんとうなぎの寝床 代表 白水、春口が対談する様子を記事にして頂いています。より詳しい経緯が書いてあります。あわせてご覧ください。
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「山×ものづくり」プロジェクト 第一弾
・ヤマオウリョウキ
・ヤマフロシキ