【地域のこと/観光協会】国に光を、人々の心に灯りを。九州最大規模のロウソク工場 @国光産業 / Yame Rediscovery vol.45

【地域のこと/観光協会】国に光を、人々の心に灯りを。九州最大規模のロウソク工場 @国光産業 / Yame Rediscovery vol.45

ロウソクってそもそもなんだ?素材も使い方も多種多様だった。

「電球」が日常に登場するようになったのは、たったの100年ほどの前の話です。それ以前、暗い夜を灯すためには、行灯やロウソクが不可欠でした。

ただ一言でロウソクといっても、実はいろいろな種類があることをご存知でしょうか?鯨の脂肪で作られた蝋(ろう)もあれば、ミツバチの巣から生成した蜜蝋(みつろう)もありますし、いわゆる「和ろうそく」として知られる櫨(はぜ)の実から抽出するハゼ蝋もあります。

とはいえ、日本ではいずれのロウソクも江戸時代までは高級品だったそうで、庶民は菜種油や魚油の入った皿に、木綿の糸など灯心をつけて点火し行灯(あんどん)などを照明器具として使っていました。

そんなロウソク作りの歴史に革命が起きたのは、19世紀前半。石油から抽出する蝋に似た機能を持つ成分「パラフィン」の発見です。そしてロウソクの工業生産や機械の開発、芯切りをしなくてもよい芯の開発などが急速に進み、19世紀後半には安価で大量生産が可能になりました。

福岡県八女市にある国光産業株式会社は、そんなパラフィンのロウソクを作るメーカーです。かつて全国に200件ほどあったそうですが、現在国内に20件ほどで九州では2件しか残っていない、珍しい存在となりました。

今回はそんな国光産業の3代目で社長の馬場英行さん、4代目で社長付マネージャーの馬場尊弘さんにロウソク作りについて、お話を伺いました。


八女の名産「和ろうそく」からパラフィンへ。国光産業の歩み。

筑後地域はもともと櫨(はぜ)の実から作る「和ろうそく」の産地として知られていた土地です。国光産業のルーツも、実は和ろうそくにありました。1930年(昭和5年)、櫨の実や菜種から油や蝋を抽出し灯りの原料を広川町で作り始めたのが、初代創業者の馬場敏夫さんです。

戦前までは、そうした植物性の油と蝋の製造を行っていたそうですが、戦後に方針転換をはかります。和ろうそくよりも安価で広く普及しやすいパラフィンのロウソクの製造を始めるのです。社名である国光産業には「国に光を当て、人々の心に灯りをともす」という、創業者の思いが込められています。

主に製造してきたのは仏具用ロウソク。宗教用具として使われるのもあり、蝋が垂れたり臭いがしない、高品質のロウソクが求められたのこともあり、精製の純度も高く形状にも工夫が加えられたロウソクを作ってきました。現在、中国製のロウソクも多く市場に出回っていますが、酸化して黄色くなったり融点が低く柔らかすぎたりと、原料の品質の違いは確実にあるそうです。

しかし一方で、一般家庭で電気が普及しロウソクを使う頻度も減り、仏壇がない家も増える中、昔ながらのロウソクの需要は以前と比べたら減ってきています。その代わり増えてきているのが、キャンドル作家などが作る創作キャンドルのマーケットです。

国光産業では15年ほど前からキャンドル事業部門を設立し、そうしたキャンドル作家やメーカーに対して、ロウソク作りに必要な原料や道具などの通信販売をはじめました。

パラフィンはもちろんのこと、原点である和ろうそくの木蝋や蜜蝋、大豆からつくるソイワックス、ヤシからつくるパームワックス、最先端のジェルワックスなど、その種類は多種多様です。他にパラフィンの融点をあげるのに欠かせない「ステアリン酸」やキャンドル専用の糸芯なども販売しています。

今からはロウソクそのものをただ売るのではなく、90年の灯りづくりの積み重ねの中で培われた技術とノウハウを生かし、ロウソク作りの体験と創作性そのものを広めていきたい、というお二人の思いがあるのです。

大事件発生!一からの立て直したロウソク工場。

実は国光産業さん、2016年春に大事件が起こりました。火災が発生し工場が全焼してしまったのです。機械も在庫もすべて焼失し、社長の馬場さんはもう廃業しようと思ったそうです。

しかし取引先や顧客からの支えもあり、何よりも息子の尊弘さんの強いやる気に押され、9ヶ月をかけて工場を立て直しました。現在では80台にもなるロウソク製造機が立ち並び、月40トン分にもなるパラフィンでロウソクを製造しています。この規模で作っているのは九州では国光産業だけです。

今回工場で製造の様子を見せていただきました。ロウソク製造機には2種類があり、全自動でだるまロウソクをつくる機械と、半自動(ほぼ手動)で様々な大きなロウソクをつくる機械です。

いずれも構造はシンプルで、型の中に糸芯が1本ずつ通っており、その中に原料であるパラフィンが流し込まれます。それを水で冷やし固め抜いていき、糸芯を切って形を揃えていくのです。

パラフィンは半透明の白色をしていますが、糸芯である木綿の色によって、ロウソクの色が違って見えます。お寺では行事によって異なる色のロウソクが使われるそうです。

国光産業では自社製品以外にも、大手100円ショップやお香メーカーなどのロウソクのOEM生産も行っているので、もしかしたらあなたの家にも知らないうちに国光産業で作られたロウソクがあるかもしれません。

ロウソクがもつ「f分の1のゆらぎ」。再度多様化するロウソクの未来。

社会インフラではなくなったロウソクですが、火というのは不思議な力がある存在です。焚き火や暖炉の周りに人が集まるのと同じように、人間は集団で火を囲むという性質があるような気します。「f分の1のゆらぎ」ともいわれるように炎には癒し効果があるともいわれています。

今後どういった形で変化していくのか未知数なロウソクですが、その素材のバリエーションや変幻自在な形など、電気ではない炎の灯りとして、可能性が詰まっているようにも感じました。まずは地域にこうしたメーカーの存在があるということを知ることが、その第一歩かもしれません。

国光産業さんでは、随時工場見学も受け付けています。また、今週3月30日には会社駐車場で、earth candleさんによる「キャンドルナイト」というイベントも開催されるそうです。ぜひこの機会に訪れてみられてはいかがでしょうか。渡邊

◉国光産業株式会社
住所:福岡県福岡県八女市馬場18-2
TEL: 0943-30-3550
HP: http://www.kokkou.com/index.htm

「キャンドルナイト2019春」
2019年3月30日(土) 17:30-19:30(OPEN 17:00)
会場:国光産業株式会社
主催:earth candle・club earthメンバー

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