【地域のこと / 観光協会】息を吐くだけで飛んでいく金箔。仏壇つくりの技術の一端に触れられる金箔貼りワークショップ体験レポート。緒方佛壇本店 / Yame Rediscovery vol.35

【地域のこと / 観光協会】息を吐くだけで飛んでいく金箔。金箔雛作りワークショップで、仏壇技術を体感。/ Yame Rediscovery vol.35

職人の道具と技術を間近で体験、金箔お雛さま作り

八女福島には沢山の仏壇屋さんが店を構えています。古くから周辺の地域は信仰心の強い土地柄であったそうで、町中にもいくつもの寺院がありますが、江戸時代に入ってキリシタン禁制が法制化されたことが仏壇づくりの発端となったといわれています。

毎日寺院に通うことが難しくても仏さまに向かって手を合わせ、日々の感謝の意を表すことができるよう、寺院をミニチュアにしたものが仏壇。つまり、仏壇には日本の寺社建築の意匠や、精巧なミニチュア寺院を生み出すための技術が詰まっているのです。

八女福島の仏壇は漆と金箔を施した「金仏壇」が特徴。八女の仏壇づくりは分業制で、木地、彫刻、宮殿、金具、蒔絵、金箔、漆などに分かれており、金箔貼りや漆塗りは死者の霊が生まれ変わる浄土の荘厳な姿を表すために用いられる重要な技術です。

現在八女福島一帯で行われている「雛の里・八女ぼんぼり祭り」の期間中(3/10まで)は、様々な場所で雛祭りにまつわるイベントが開催されています。中でも今回は、八女福島が誇る仏壇技術の1つ「金箔貼り」が体験できるという「金箔体験 お雛さまづくりワークショップ」に参加するため、緒方佛壇本店を訪れました。

コツは、一度決めたら動かさないこと

コツは、一度決めたら動かさないこと

職人さんが普段使っているという道具を使いながら、丁寧なアドバイスのもと金箔貼りを体験していきます。まずは、金箔を貼る部分に筆で液を塗る作業から。この時に液が付いていないところがあると、金箔が絶対につかないので丁寧に。

その後、「箔ハサミ」といって金箔を挟んで移動させるのに使う竹製の道具を使用して金箔を扱っていきます。この箔ハサミを使って、金箔をスッと手のひらにひっくり返したあと、先ほど液をつけた部分を覆うようにして箔を貼っていきます。

満遍なく箔で覆ったあとは、綿で不要な部分を削ぎ落とすようにして、最後磨きをかけます。優しくクルクルと磨いていくと、さっきまで重なっていた部分が均等な厚みになっていくんです。とても不思議だったので聞いてみたところ、金箔は細かい金の粒子の集まりなので、磨いていくと粒子が均等に並んでツルッとした仕上がりになるのだそうです。

「金箔貼りの一番のコツは、一度ここに貼ると決めたら動かさないことです。」と職人さん。息を止めないと今にも飛んでいきそうな軽さの金箔を自由自在に操る職人さんの手は無駄がなく、とても繊細な動きなのでこれを間近でみられることもまた、ワークショップの醍醐味だと思います。


先代の父の技術を伝えたいという想い

緒方佛壇本店でこうしたワークショップを開催するようになったのは、4代目社長の緒方容栄(よりえ)さんの想いによるものでした。

「毎日触れるものだから、以前は工場での職人の作業を当たり前の光景だと思っていたんです。」と容栄さん。しかし、福岡県による伝統工芸に携わる人々への講座に通って勉強をするにつれ、工場があること、職人がいること、そして技術がそこにあるということの大切さに気づき、外に出ることのない職人の技術を紹介したいと思うようになったのだそうです。

「いまは引退していますが、父の金箔貼りは誰もが認める技術だったんですよ。それを守っていきたい、伝えていきたいなと思って。」伝統工芸の技術の素晴らしさを知ることはできても、それを実際に見て体験する機会というのはそう多くはないものです。

容栄さんを支えるのは、ベテランの職人さんをはじめ、3人の息子さんや伝統工芸士を目指し日々鍛錬する若き職人さんたち。伝統工芸の技術の多くは、継承者不足という問題を常に抱えていることも事実。一方で、こうした若き伝統工芸の担い手による取り組みは、これまで伝統工芸に触れる機会のなかった人々を惹きつける魅力があるように思います。

緒方佛壇本店では、ぼんぼり祭りの期間以外にも、工場見学や漆の研ぎ体験ができる塗箸ワークショップの受付も随時募集中とのこと。息を吐くだけで飛んで行ってしまう、とても繊細な金箔の扱い方を教えてもらい、仏壇作りの技術の一端に触れられる貴重な機会です。うなぎの寝床・旧寺崎邸からも徒歩1分。よかったらぜひ期間中、足を運ばれて見てはいかがでしょうか。原・渡邊

◉緒方佛壇本店
住所:〒834-0031 福岡県八女市本町397−1
時間:9:00-19:00
問合:0120-133-367

◉金箔体験 お雛さまづくりワークショップ
期間:ぼんぼり祭りの期間中、3月10日まで
時間:9:00-19:00
会場:緒方佛壇本店
問合:0120-133-367
参加費:500円 (要予約)

 

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