【地域のこと/観光協会】「お楽しみとお買い物はみなさまの土橋市場」 / Yame Rediscovery vol.12
【地域のこと/観光協会】「お楽しみとお買い物はみなさまの土橋市場」 / Yame Rediscovery vol.12
境内に広がる市場の異世界感。
はじめて土橋市場に行った時、不思議な気分がしました。おしゃれなお店がいくつもあって、レトロで可愛い照明もついてるのに、流れる空気がかるくない。なんだろう、ちょっと不気味なぐらいに異世界感を感じました。
土橋市場は、土橋八幡宮という神社の境内の中にある商店街です。鳥居をくぐって、商店街を通っていくと、神社の社があらわれる、という造りをしています。商店街の中には、雑誌でも見かけたことのあるパン屋さんに雑貨屋さん、服屋さん、飲食店も、レトロでかわいいお店がいろいろ。お店を一覧できる地図もありました。それらのお店と連なってある数々のスナックがまた、すごくいい味出していました。平成生まれだけど「昭和にタイムスリップしたような」と言いたくなってしまう。
知り合いに紹介されて店を出すことも多いみたいで、開店3年目のたこ焼き屋さんもその一人です。たこ焼き屋さん曰く、新しくホットドック屋ができるはずだけどずっと内装をDIYしていて、1年ぐらい開店までこぎつけないそう。
そんなゆるーく流れる時間を許容してしまうような、外の世界とは隔離された空気感を土橋市場には感じました。それを端々に感じるのは、わざとわかりにくくしてるみたいなお店の配置、絶対に今は使っていない魚屋の古い看板、毛筆の「暴力団追放」の文字。
結界の中に生まれた闇市。
ぽっと建てるのは明らかに無理なカオス感の正体は、かつての闇市でした。
戦後、食料が配給制だった頃、土橋八幡宮付近では自分たちでとった野菜や魚を売り買いして、足りない分を補っていました。それが闇市です。食料を求める人で溢れかえって混乱していたところを、県議の働きかけで神社の境内の中に店舗を移すことになったそう。それが土橋市場ができた過程です。
なるほど、だから外と断絶した雰囲気があるのかと思いました。神社の境内というだけでもある意味、結界の中ではありますし。もしかして当時の神社の神主さんも「闇市は違法なものではあるけれど、境内の中で闇市を許すことで助かる人もいるのかもしれない」と考えたのかもしれません。
そう考えると「お楽しみとお買い物はみなさまの土橋市場」という看板の文句も、あっけらかんとした中になにか深い意味があるような気がしてきます。そんな一筋縄では生まれない雰囲気を、ぜひ現場で感じてみてください。もちろん、素晴らしいお店めぐりもご一緒に!河合