仕入れる範囲を絞ることで見えてくる、これからのお店のあり方。

取り扱い

情報過多の時代、地方をあえて限定することでで見える
「つくる」ということを前提としないお店のあり方。

僕らは福岡県南部の16市町村を対象にした「筑後地方」を中心にものづくりを伝えていきたい。ということを言っていますが、実は「筑後地方」という行政区にはあまりこだわってはいません。行政区は歴史も踏まえた一つの目安ではありますが、現代となってはものづくりに関してはそこまで重要ではありません。

大学時代、ハルと「もう世の中にちゃんとした物なんて溢れてるから、作る必要ないよね。」という事をよく話していたことを思い出します。建築を勉強していた僕たちは、毎日コンペや設計演習を行い「つくるための教育」を受けてきます。そのつくるということが前提となっていること事態に疑問がありました。それから5年、社会人として商品開発などの仕事を経験し、今はお店をやっています。それは「つくる」ということは前提ではない世の中と接点を持つ方法でした。

今は「車で一日でいけるくらい」という条件で物を探し、販売しています。新しくつくるのではなく、今つくられているもののあり方や、一般消費社、業者への伝わり方を変えるという仕事です。「車で一日でいけるくらい」という考え方は下記に基づいています。

昔の交通のインフラは徒歩。城下町内で全て揃う。
今の交通のインフラは車。車移動圏内で全て揃う。

僕の想像するに、かつて城下町では、お城があってお殿様がいて、その回りに御用窯があったり、鍛冶屋、畳屋、桶屋など物をつくる土壌と修理する土壌が大体徒歩で行ける範囲内、または一日で歩いていける範囲内で収まっていたと考えられます。それがその時代の生活圏です。

そこで、その考え方を現代に置き換えると、今は車が中心ということで大体車で一日で行ける範囲が現代の生活圏だと言えるでしょう。なので、僕らは「車で一日で行けるくらい。」という領域である程度物を揃えるようにしています。すると筑後地方が中心になってきます。修理できるものは、より近くで修理を受けた時に作り手としっかりコミュニケーションを取り、迅速に進めることができるような体制をとっています。

まずは、車で一日でいけるくらいで集め、そこにはない特徴のものが、他の地域にあって、必要だったり紹介した方がよさそうな物や人、文化的な背景が存在したら輸入して取り扱うという考え方です。

ちくごのものづくり

修理の可能性がある商品は、ほぼ八女・ちくご産。

筑後地方での取り扱いメーカー・工房は2015年現在で40件〜50件程度。桶の輪替えや包丁の研ぎ直し、木のお弁当箱、久留米絣の製品、竹製品など、取り扱い商品の中でも修理の可能性が大きいものは、ほぼ八女に集中しています。

福岡九州のものづくり

焼物、人形は郷土色も強いし修理も少ないので輸入可。

そして、筑後地方外のものは10件から20件程度の取り扱いがあります。基本的には人形や焼物が中心となります。人形や焼物は手入れは多少必要ではあるとしても、修理の依頼はほぼありません。あとは郷土によっての特徴が違うので、バリエーションとして輸入して伝えていけるだけの情報量があるということで選定しています。

こういうコンセプトのお店が増えたらいい。
その土地の特徴を体現するのがお店

僕は、ある一定の地域に一つ、こういうアンテナショップのような形態のお店があればいいと考えています。行政が行っているアンテナショップはそういうコンセプトなのでしょうが、物を平等に選ばなければならない、選ぶ人の視点が弱い。という2点からとても雑多なセレクトになってしまいます。ただ、寄せ集めるというだけです。それはそれで重要なことなのですが、意図を持って取り組んだ方がより効果的だと考えています。

その土地土地には、背景があって文化があります。僕らが住んでいる地域はたまたま「ものづくり」という部分が盛んだったということです。漁業が盛んな地域があり、そこに視点をしぼっても面白いお店ができると思うし、よい物件が集まる地域だったら不動産のような形態のアンテナショップがあってもいいと思います。業種はあまり関わらず発信の変え方、紹介の仕方を変えることで、今までの物の見方を変えるという編集的視点のお店が増えればいいなと考えています。

前提条件を少し厳しくすることで見えてくることもたくさんあると思います。ぜひ他の地域の人も、自分たちの地を見つめ直し考えるきっかけとなれば嬉しいです。では。

白水

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