【考えること】ちゃんと伝える職人さん。
最近は、いろんな方をつくり手の工房へと案内する機会が多いです。うなぎの寝床は完全に民間による運営です。よく「助成金や補助金は入ってるんですか?」と聞かれることもあるのですが、そんなことはまったく皆無で自分達だけで資金繰りしています。それが普通だと思います。補助金や助成金が入ると、結局自分達が作った仕組みの中で生まれた資金やつながりの循環ではないので、不健全だと思っています。
僕らは、考えがあったり、お互いにプラスになることがあるのであれば、お店の方なんかも一緒に工房をまわったりします。本来商売としての考え方からしたら「競合」にあたるのかもしれません。でも、いろんな人にいろんな切り口で商品のことや、人のことを伝えてもらった方がいいと思っているし、一緒に企画をさせてもらう方々にはなるべく、この地方の「つくる」という生業の現状をしってほしいというのが正直なところです。なので、意識としては行政と民間の間くらいの立ち位置で運営しているようなつもりです。
僕らにはあまりできない「ワークショップ」をたくさん開催しているお店もありますし、そういう所に適した作り手の方を紹介したら、お互いにいいと思っています。
さて、本題ですが、つくりての所へいろんな人を案内すると、僕が何かをやることはあまりありません。職人さんというのは口べたなイメージがあるかもしれませんが、皆さんしっかりと自分の言葉で、物をつくる工程や、現在の状況などを話してくれます。僕も毎回「ふんふん」と話しを聞いてみると、毎回新しい情報が入ってくるのでとても面白いです。こられる方によって興味関心も違うので質問するポイントも違います。
戦後は、家内制手工業の大量生産が進み、問屋や商社を通して使い手の元へ物が届く。という流れがあったのではないかと思います。だから職人さんは「つくる」ことに専念し、黙々と作業を続け質を保ちながら量をつくっていく。というのが仕事だったのだと思います。だからあまり作る工程や、素材について「伝える」という事が上手ではなかった。分業もしていたし、全体のことを把握している職人さんももしかしたら少なかったのかもしれません。
しかし、今時代は変わって手工業ではなく機械による工場生産が主流になった。すると手仕事の物が少なくなってきて、つくりても作るだけに専念してもやれなくなってきた。→ 一生懸命、自分達がつくったものを伝えないといけない。→ 伝えるのが上手になってきた。という現象が起きていると思います。
しかし、しかし...それがあまりにも進むと、消費者が中心になりすぎて、消費者に迎合した商品がたくさん生まれるということにもなってきます(それが大事なところもありますが、塩梅の問題だと思います)。だから、意識としては「つくる」ということに比重をおきながら、誰かが訪ねてきたら、物のことや、素材の特性をしっかり伝える準備をしておくというのが、今のものづくりには必須なように感じました。
という最近人をいろんな工房につれていっての感想でした。
白水