ゴミは資源のはずである 【対談 / 四国瀬戸内もんぺの旅 in 上勝町】

四国瀬戸内もんぺの旅 at ゼロ・ウェイストセンター(5/10 〜 5/11)」に関連した特集記事です。
「四国瀬戸内もんぺの旅」について詳しくはこちら

ものを作る意味って何だろう?

愛媛大洲店の沼倉です。四国瀬戸内のものづくりを紐解いていく中で、とても気になっていた場所がありました。それが徳島県・上勝町です。

上勝町は「ゼロ・ウェイスト宣言」を日本で初めて行い、ゴミを出さない社会を目指しした取り組みを行っています。先日上勝町を訪問しお話を聞く機会がありました。地域の資源を大切にし、モノをなるべく捨てない。ゴミが出たとしても分別を行い、再資源化する。ゴミを出さない行動を町民の皆さんが当たり前にやっていることが印象的でした。

うなぎの寝床は「モノ(例えばもんぺ)」を作り販売をしています。「モノ」を作るということはその製造工程でゴミ(捨てなければならないモノ)が発生しますし、お客様に購入頂いた「モノ」は最終的に必ずゴミとなり捨てられることになります。モノがありふれている社会でゴミを生み出さないことを考えると、モノを作る必要はないのではないか?そこにどんな意味があるのか?上勝町に伺った後、疑問を抱くようになりました。

この疑問について、上勝町で暮らし、上勝町で様々な事業に取り組んでいるすぎとやまの代表の杉山さん、ゼロ・ウェイストセンターの大塚さん、そしてうなぎの寝床で自社商品の生産・販売をしている富永に聞いてみることにしました。

ゴミは資源のはずである。その視点からモノとの付き合い方を改めて考えなすことができた対談でした。今回はその一部をお届けします!

聞き手・書き手:愛媛大洲店 沼倉

プロフィール

杉山久実 / 合同会社すぎとやま代表
上勝町の地域おこし協力隊として地元の杉の木を使ったファブリックブランド「KINOF」を2018年に立ち上げ。2020年に合同会社すぎとやまを設立し、日本の杉を使った国産自然糸ブランド「KEETO」事業を開始。他にも地域の特産品を活かした商品開発も手掛けています。

大塚桃菜 / 株式会社BIG EYE COMPANY Chief Executive Officer
高校時代、ファッション留学をきっかけに服に関わる社会問題に関心を持つ。大学卒業後、徳島県上勝町の「ゼロ・ウェイストセンターWHY」に就職、現在は同施設を運営する株式会社BIG EYE COMPANYのChief Environmental Officerを務め、持続可能な地域づくりに取り組んでいます。

 

左上:うなぎの寝床 富永 / 右上:うなぎの寝床 沼倉
左下:大塚さん(ゼロ・ウェイストセンター) / 右下:杉山さん(すぎとやま)

「協同」 上勝町で暮らす人々の精神性

― 上勝町はゼロ・ウェイスト宣言を行い、ゴミを出さない社会を目指した取り組みを行っている町。実際に行ってみると、地域の皆さんが肩ひじ張らずに自然体で取り組んでいることが印象に残りました。上勝町の暮らしについて話を伺ってみると「協同」の精神が今なお残っているのだそうです。

杉山さん:
困っている人がいたら、それを得意な人が助けに行く精神が今も残っているように感じます。

大塚さん:
上勝町は「協同」だなと思います。例えば、番茶のシーズン、農家さんたちがそれぞれの茶畑を行き来して茶摘みを成立させるというのが今でも続いているんです。小規模な自治体、財源も限られていて、人も不足しているから続いていることかもしれないけれど、それはシステム化された都市にはない上勝が生き残るための一つの手段でもあり知恵なのかなと思います。

自分が今暮らしやすくなっているのは、どこかで誰かが手伝ってくれているからというのが最初の3年間は気づけませんでした。例えば、雪の日も役場の皆さんが一生懸命道路が凍らないよう薬をまいていたり、当たり前に受けているものが当たり前じゃないということがより見える。見えない所で誰かがサポートしてくれている、そこに対する思いやりを持っていないといけないと上勝の暮らしで学びました。

杉山さん:
大雨が降って水道から水が出なくなったことがありました。それを役場の人が夜に直そうとしてくれていたことを聞いて、それがどの人がやってくださったのかが分かるんです。役場の人だから、仕事だから当然ということではなく、その人に感謝を口に出して言います。人との距離が近くて、何か不便があったときは直接相談をしにいったら、その日の内にその不便を解消してくださるなど、顔と顔を合わせて取り組む「協同」というのは確かに上勝を表しているように感じます。

 

モノを作ることに、ポジティブさを持っていたい

― あらゆるものがシステムによって動いている社会では、誰がどんなことをしてくれているのかが見えないと感じます。上勝町ではそれが見えるからこそ感じる豊かさがあるように思います。また、杉山さんは上勝町には「あるもんで」という精神もあるとお話されていたことも印象的でした。あるもので工夫しながら生きる人々が暮らし、そういった姿勢があるからこそゴミを出さない取り組みが日常で息づいている。

では、その暮らしの中で新しくモノを作ることをどのようにお考えですか。モノを作るというのは、同時に「ゴミ」になるモノを作ることでもあると、上勝に行った際に感じたことでもあります。皆さんは「モノを作ること」をどう捉えているのでしょうか。

杉山さん:
モノを作ること、そして売ることを悩むことはあります。例えば、上勝の杉の木を使ったファブリックブランド「KINOF」ではタオルを作って販売しているけれど、タオルを持っていない人がいないのにこれ以上タオルを作って売ってどうするの?とか、ゴミを増やすだけなんじゃないかと考えることもあります。でも、作って販売をしないと生きてもいけない。

同時に、布製品を買う選択肢の中に「国産繊維・杉の木で作った糸で作った製品」もあることを知ってもらうために作っているし、上勝町の杉の木を木材や家具など使われる以外の活用方法が見つけられたら面白いんじゃないかとも思ってもいますし、葛藤はありますよね。

国産杉を使った糸「KEETO

大塚さん:
ゼロ・ウェイストセンターをデザインした建築家の中村拓心在さんは、ゼロ・ウェイストは「創造的な行為・クリエイション」だという話をされていました。ゴミをゼロにするのは何かを制限する様に聞こえるかもしれせん。だけどゴミを無理して削減をするとかではなく、今この地域にある資源を組み合わせてどう作っていくかを考えることでもあるなと思います。すぎとやまの活動は、今あるもの「上勝の杉」に新たな価値を作っている、クリエイションだなと思います。

大量生産、大量消費の視点で見ると、モノを作ることはマイナスのイメージを持たれてしまうこともあるけれど、本来は私たちの暮らしを豊かにする行為だと思うし、そこに対するポジティブさを持っていたいなと思っています。

富永:
作るという行為はどうしても発生しますよね。服であれば、現代で生活する上で服は着ないといけないから服を作る必要がある。では作る時に何を考えるかが大事だなと思います。例えば、うなぎの寝床では「なるべく生地を無駄にしないこと」、「役目を終えたモノでも新たな活用方法を見つけ価値を作ること」を考えてものづくりに取り組んでいます。久留米絣のもんぺを作っているのですが、その際に出てしまうハギレは捨てずに詰め合わせて販売をしたり、余った生地でバッグを作ったり、製造工程で役目を終えた糸で靴下を作るなどしています。

MONPEの裁断で出る久留米絣のハギレ

杉山さん:
KINOFを作った初めの頃にどうして作るんですかと聞かれて、上勝町の山の環境と素材についてや、あるもので暮らす上勝町の人々の考えを話すよりも、モノとして渡したいからと答えていたことを思い出しました。話すだけだったらすぐに流れていくけれど、モノとして使ってくれていると背景を想像しやすくなると思っています。

モノを作ることを全くの0にすることはできない。「だったらどうするのか」に向き合うことこそ大事だなと思いました。杉山さんが「いきなり100点を目指すのではなく、30点を50点にするように少しずつ良くしていく」と話されていて、思考停止にならず考え続ける姿勢を学んだように思います。

 

正しくゴミ(資源)になるモノを買う

― 作るということについて話を伺いましたが、ではモノを「買う」ということをどう考えているのでしょうか?

富永:
うなぎの寝床はモノの売買だけでなく、お客様が商品を選ぶ際の考え方の選択肢も、モノを通して増やせたらいいなと思っています。

大塚さん:
広告とかでそこまで考えなくても気軽にモノにアクセスできてしまう。誰かが着ていてかっこいいであったり、安いであったり、ものを選ぶときの選択の幅が狭くなっていて自分の意志を反映することが少ないなと思います。だけど、うなぎの寝床でもんぺを買う多くの方は、デザインで選ぶこともあるけれど、つくり手に思いを馳せて選んでいると思います。

富永:
そういう考えでモノを買う、使うというのは自己満足かもしれないけれど、精神的な豊かさにも繋がる気がしますよね。それに長く使おうと思いますよね、ただ消費するだけじゃなくて。

― 杉山さんはどうでしょうか。

杉山さん:
正しくゴミになるモノを買うということですね。作るとき、買うときに先にゴミのことを考えてしまう自分がいるんです。上手に言えないのですが、今はこの言葉しか浮かばないです笑 例えば、上勝の杉を使った商品が役目を終えて、埋めるのであればそれは上勝に資源が戻る、循環するイメージになりますよね。なるべくそうなるモノを作りたいし、買いたいと思っています。

富永:
ゴミは元々「資源」だったと捉えるとイメージが変わります。ポジティブにゴミを買うと言えたら良いですよね。ゴミは手放すときだけのことを言っているけれど、捨てる時が必ずくるから、それまでを考えて正しくモノを買うという考えは大切な気がします。

 

上勝町はゴミを13種類43分別をします。ゴミを分別したことによって、処理にお金がかからなくなる、ものによっては再資源化することで逆に町にお金がはいることもあるそうです。そういう地域で暮らし行動しているからこそ、ゴミになること含めてモノを選ぶ、考えるというのが自然にできているように感じます。杉山さんと大塚さんのお話を聞いて、ものとの向き合い方を前向きに、そして新しい視点から見ることができたと思います。一人では決して得られることができなかった考えがいくつもあった対談でした。

そして今回の対談のような、モノとの向き合い方を見つめなおすイベントを5月10日(土)-11日(日)、対談をさせて頂いたすぎとやまの杉山さんと上勝町ゼロ・ウェイストセンターで行います!ものづくりの背景をお話しながら、モノを作ること、使うこと、捨てることについて改めて考えなす機会になれば良いなと思っています。きっと何かを持ち帰って頂けると思います。

 

四国瀬戸内もんぺの旅 in 徳島

会期: 2025/05/10(土) 〜 05/11(日)
時間: 10日 10:30 〜 16:30 / 11日 10:00 〜 15:00
場所:上勝町ゼロ・ウェイストセンター
住所 :771-4501 徳島県勝浦郡上勝町大字福原下日浦7番地2

うなぎの寝床が取り組む「資源をなるべく無駄にしないものづくり」の考えに基づいた商品、KAPPOGIMINI BAGをはじめ、もんぺの製作時に出るハギレの詰め合わせを販売。そして色柄豊富なもんぺも約200本揃います。

また、すぎとやまより上勝町の杉の糸を使ったファブリックブランド「KINOF」や、日本の杉を使った国産天然繊維「KEETO」、そして上勝町の資源を活かした商品を販売します。ぜひお越しください!

詳しくはこちら

読み込み中…