絵を描くように、染める / funatabi atelier 【MONPE Limited Edition 染め】
染料を絵の具の様に描く。funatabi atelier(フナタビアトリエ)の大木もと子さんは、そんな染めを手がける染色家の一人です。まるで”絵画”のようなテキスタイルには、どんな思考があるのか。染めを自由に捉える大木さんにご自身のしごとについて伺います。
このコラムは「MONPE Limited Edition 染め」に関連する特集記事です。
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Photo:塚本直純
過程の蓄積
道のりこそが”旅”である
funatabi atelierの大木もと子さんは、武蔵野美術大学テキスタイル専攻でシルクスクリーンや臈纈染(ろうけつぞめ)などを学びます。その後、アパレル企業にてテキスタイルデザイナーとして勤務後、2017年に独立。自身のアートワークを布に落とし込んだテキスタイルブランド、m. Funatabiの活動を開始します。
完成形だけじゃなく、そこまでの過程も好きなんです。
大学時代に染色を学ぶ中で、様々な工程を経てできる色の厚みとその表現に魅力を感じたそうです。
染めという行為の上で、意図せず起こる色の現れ。大木さんが描くテキスタイルには、そんな偶然の連続を大切にしているように感じます。完成という目的地だけでなく、そこまでの道のりが”旅”であるように。funatabi(船旅)という屋号にはそんな気持ちがこもっているとお話ししていただきました。
Photo:塚本直純
「綺麗なものが好き。美しい場面を作りたい」大木さんはそう素直に言っていた。布に絵を描くという純粋な行為から始まり、纏いたいという要望があって服づくりへとつながっていく。
Photo:塚本直純
「染めは”パターン”という思い込みに対して疑問があった」と話す大木さん。素朴な問いかけから、自由な発想のテキスタイルが生み出される。
“絵”として向き合うこと
“染”として向き合うこと
絵は自由。けれど、逆に染めの現実的な工程が冷静さを保たせてくれる。
自由な発想と表現の”アート”的な領域と、染めという仕事の”工芸”的な領域の二つを行き来する大木さん。自由と制約、柔軟さと厳格さ。それらが対立するわけではなく、歩みをよっているような印象を受けました。
絵を描くこと、布を染めること。それらも材料や時間、現実的な工程の上で成り立つことでもあります。その上で何を感じ、何を表現できるのか。それらを模索しながら形にしていく”道のり”に、大木さんのテキスタイルワークの魅力が詰まっていると感じます。
絵を描くように、染める
大木さんに製作して頂いたMONPEは、大きく分けて2種類の技法で染められています。
・植物染(botanical dye)
現代風MONPE (S)
草木を染料として用いた染色技法です。植物を生地の上に置いて色を布に染み込ませるので、草木がいた痕跡が色として残っているような模様が描かれています。
植物はバラ、紅花など、通年手に入るものの他、その時手に入る季節の花々を使用しています。他にもログウッドや蘇芳(すおう)、玉ねぎの皮といった、草木染めの素材も使用し、その時の花の種類や状態が、染め上がりに影響します。
現代風MONPE (M)
Farmers’ MONPE (M)
Farmers’ MONPE (L)
・墨染(sumi dye)
Farmers’ MONPE (S)
墨による手描きの技法です。一見白と黒のモノトーンですが、無数の色の濃淡による奥行きがあります。筆で描くことで残る刷毛目の表情が、水墨画のような世界を思わせます。
現代風MONPE (L)
※数量限定のため「抽選」での販売となります。詳細はこちら
「染め」という営みと風景
「ネイティブスケープ」を体感するMONPE
うなぎの寝床では、その土地固有の文化と物語を重んじながら未来へと繋いでいく人々がいる風景「Nativescape(ネイティブスケープ)*」を考えてきました。
過去から繋がってきた営みを、今いる人たちがどう解釈し、どう表現するのか。今回は、様々な背景を持って「染め」に携わる3人のつくりてにMONPEを染めて頂きました。それぞれのつくりての表現を、またその先にある「Nativescape」を、MONPEを通して体感していただけたらと思います。
*Nativescape (ネイティブスケープ)
「ネイティブ(その土地固有の)」と「ランドスケープ(風景)」を足した造語。うなぎの寝床では、土地性・歴史性を重んじ、未来に対して思考し続ける人が、営みを持続しながら活動する風景をネイティブスケープ(NATIVESCAPE)として定義します。
取材:荻野