そもそも「リネン」ってなんだろう? 《知れば驚きリネンの話 前編》

麻ってなんなの? リネンってなんなの?

うなぎの寝床の荻野です。

MONPEの型を通して日本・世界各地のテキスタイルを穿き比べて体感する「産地コラボMONPE」。今回はそのシリーズに、日本のリネン産業に長年携わる帝国繊維とコラボした「MONPE 近江リネン」が仲間入りします。

やや光沢があって、つるっとした落ち感のあるリネンの生地。「麻からできている?」「どことなくヨーロピアンなイメージ?」など、漠然とした印象が個人的にはありますが、それが実際にどんな素材なのか、あまり考えたことがありませんでした。

今回は、実際に帝国繊維の内田さんからリネンについて、「知れば驚き!」なお話を伺ったのでご紹介します。

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「麻」ってなんだろう?
– 麻は概念なのだ! –

「麻」とは、植物の葉や茎から採取できる繊維の総称で、20種類近くあると言われています。
植物から採れる繊維の総称として「麻」と一括りにしますが、本当はそれぞれ全く別種の植物です。そのため、同じ麻と呼んでも原料となる植物によって糸のつくり方も異なれば、出来上がる生地の風合いや性質も異なります。

日本における「麻」という言葉は、もともと自生していた大麻(おおあさ、たいま)や苧麻(ちょま)の繊維を指す言葉でした。のちに海外から亜麻(あま)などの植物繊維が持ち込まれたことで、植物繊維全般に対して「麻」の名称を使うようになりました。

日本工業規格 (JIS) において、麻の名称で流通させてよい繊維は亜麻(リネン)と苧麻(ラミー)のみとされています。また、家庭用品品質表示法においても、麻と呼ばれる繊維は亜麻、苧麻の2種類を指しています。

麻は上で話した通り、植物から採取できる繊維の「総称」です。その定義は良くも悪くも曖昧で、広くとらえたり狭くとらえることで意味が変わってくるのだと思います。

 

「リネン」ってなんだろう?
– 麻は麻でも「亜麻」からできる – 

リネンは、亜麻(あま / 別名:フラックス)という植物から採取した繊維を使って作った糸や生地、製品の総称で、日本で麻の名称で流通している繊維のほとんどを占めています。サラリとした質感で光沢があり、使うほどくたっと肌に馴染むように変化するのが特徴です。

原料である亜麻は、ヨーロッパ北部などの涼しい地方で栽培されています。6月ごろに開花期を迎え、日の出とともに淡い青紫色の花を開きます。お昼には散ってしまうという儚くも可憐な瞬間を見せてくれるようです。

 

亜麻を育てること、土を育てること

リネンの原料となる亜麻は「輪作*」で栽培されています。土壌の生物多様性を守りながら、安定した作物生産を続けることを目指しており、土地本来の力を活かした農業の一つとも言えます。世界全体での亜麻生産の多くを占めるフランス・ノルマンディー地方では、肥料や農薬を使うことなく、ジャガイモやトウモロコシ、麦などを植えながら6〜7年の周期で亜麻の輪作が行われています。

亜麻の輪作は、十分な肥料や農薬も、科学的な分析もない時代から行われてきました。何とか生産性を上げるために数千年の試行錯誤の末に編み出された、人類の知恵の一つです。人間の営みを自然環境の一部として捉えるという広い視点が、亜麻の栽培に活かされ、結果としてそれが長期的に収穫量を増やすことにも、「土・環境」を育むことにもつながっているのではと思います。

*「輪作」と「連作」

「輪作」とは、同じ土地に異なる種類の作物を交代に繰り返し栽培する農業の手法の一つです。
同じ作物を同じ土地で育て続ける「連作」の場合、土壌の栄養分が偏ります。バランスが崩れることで、特定の病気や虫の発生を招き、収穫量や品質に影響を及ぼす可能性があります。短い期間で生産量を求めても、肥料や農薬を使用する必要性も出てきて、結果として栽培を継続していくことが難しくなることがあるようです。

その対策として、複数種類の作物での「輪作」が行われています。それぞれの作物の特性が互いに補い合い、土壌の養分や微生物のバランスを保つことで、土地の力を維持しながら病虫害の発生を防ぎ、安定して農業を続けることができるように考えられています。

 

リネンの特徴

・吸水速乾性
水分や汗を素早く吸い取り放出してくれるため、吸水性がありながら乾きが速く、さらっとした風合いを維持してくれる。

・触るとひんやり
繊維がストロー状の中空な構造。熱伝導率が高く肌表面の熱を吸収し、素早く放出するため、穿いた時にひんやりとした肌あたりを楽しめる。

・汚れにくい
亜麻(フラックス)に含まれるのり成分「ペクチン」が汚れを防ぎ、洗濯で落としやすくする。

・強靭な繊維
リネンの繊維は伸縮性がなく、強度がある。
また、水に濡れると強度がさらに増すという性質があり、繰り返し洗濯しても耐久性がある(この性質を活かし、かつては消防用ホースなどに使用されました)。
硬さやハリがある反面、シワになりやすい。

【こばなし】 フレンチリネンは本当にフレンチ?

リネンの製品でよく「フレンチリネン」という言葉を聞きます。「リネン」と聞くとどことなくヨーロッパのイメージがあり、その言葉自体がリネンの印象にもなっている気も個人的にはするのですが、帝国繊維の内田さんは「実は表現として正しくないのでは?」と考えられていました。

原料である亜麻(フラックス)はフランスも主要な生産地ですが、現在は原料からリネン糸をつくる紡績業はほとんど残っておらず、紡績はほかの国(主に中国など)で行われているそうです。

リネンの定義を「亜麻(フラックス)という植物から繊維を取り出して加工したもの」とするのであれば、原料の生産はフランス、糸の紡績は中国の場合、「フレンチフラックス・チャイナリネン」と表現した方がよいのではと仰っていました。

リネンと言う素材に対して、とても誠実に向き合われているんだなと自分は感じました。

素材として触れたこともあり、知っているつもりだったリネンですが、紐解いていくと新たな発見の連続でした。
麻やリネンについて、いろんな視点で捉えることで、より深くものを見ることができそうです。

荻野

後編へつづく

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