“Creative Challenge Project” 始動
うなぎの寝床は、地域文化商社として久留米絣を伝える上で色んな取り組みをしています。
昨年より、久留米絣縞卸商協同組合に加入、内部の方とも色んな事で意見交換も重ねて来ています。他産地の繊維産業の状況と変わりなく、久留米絣も廃業、生産減少との声を聞く事も多いです。久留米絣の創始者、井上伝は糸を括り染め織り、柄を織物の中に表現して無地で織られていた織物に違う可能性を見出したのだと思います。それから、色んな染、織の技法が加わり200年以上受け継がれています。その積み重ねた技術・技法を元に久留米絣の可能性を織元さんと考えたいと思い始動させました。
Creative Challenge Project とは?
「久留米絣の可能性に挑戦し続けるプロジェクトです」
Creative Challenge Projectでは、糸を括る、染める、織るなどの久留米絣の技法や技術を応用し、新たに活かしながら、久留米絣の可能性に挑戦していきます。現代だからこそ、この産地だからこそできることを考えて、問い続けるプロジェクトです。
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challenge No.1 下川織物✕うなぎの寝床
テーマ 「染の技法を重ねて描くように織る」
久留米絣は主に縦24㎝✕横36㎝の図案の中で、経糸、緯糸を括り染めるという事で柄を表現します。括った糸を織りあげていく中、糸が微妙にずれ、かすれた柄に、惹き付けるものがあるとも考えます。この表現の中に他の技法を取り込む事により表現に深みをだせないか?と考えました。
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【 過程と工程 】
2019年9月初回の取り組みでお願いしたのは下川織物さんです。3代目の下川強臓さんとは、現在に至るまでうなぎの寝床の定番商品である絣も多く織って頂いている事、今から先の久留米絣に対しても色々と議論しながら作れるのではないかと考えました。
テーマに沿った考えを、持ち込んだデザインと共にどのような技法を使用するか話しました。まず、技法として考えたのは二段括りです。これは、括りの工程を重ねて2回行い、染を行った後で、重ねた2回目の括り糸をほどき更に残った1回目の括り糸が残った状態で染める。染が重なった所が1回しか染まらない所2回染まった所と全く染まらない所で差が出来て色合いに幅が出ます。昔は、この技法も行われる事も多くありましたが現在はその括る機械も無く動かせる事が出来ずここは別の方法を探る様にしました。
元のデザインに対しての図案
括りの設計図。括る位置や色の出方を確認して修正を加えました。
10月~11月には、図案の修正、経糸、緯糸の色の出し方等意見を交換。糸を括る工程から染工程へ。どのようにしたら、上手く重ねた様の色合いが出せるのか?その中で今回採用したのが、注染という技法でした。経糸緯糸は図案通りに括り染色。そのあとに、上からジョウロにて染料を流し込み染色するのです。この染の技法は2代目の下川富彌さんが始め、最初は染まりが足りないところに重ねて染める事がきっかけで、始めたそうです。今は、注染のみの糸で織られた久留米絣も織られていますが、今回の様に経緯の絣図案の上に意図を持ちながらの注染染めは染める間隔も図案に沿うように染めてもらうのも手間のかかる仕事です。
糸に濃淡の色合いが加わり機械にかかるのを待ちます。
11月末~機械にかかり始めましたとの連絡を頂き、現場にて確認と微調整。イメージした感じに織り進んでいました。規則的に織られる図案通りの経緯絣の柄に計算して重ねて注染したものがゆっくりと織られていきます。
生地が織りあがります。
3月生地が揃い、MONPEの型にまずは落とし込みしました。出来上がったMONPE Creative Challenge Project №1下川織物はオンラインショップより購入頂けます。
オンライン販売はこちら
Creative Challenge Project No.1下川織物を終えて
今回は、括りの技術について話を始めましたが、下川織物で富彌さんが技法として取り入れていた注染でのグラデーションを使用することで最終表現しました。括りの技術に注染の技術をプラスする事で、より深みのある柄の構成が出来たと思っています。終了後、強臓さんと話したのですが、最初は、何かをテーマにして一からデザインし久留米絣の柄に取り組むことは、現状自分だけでは難しい、日頃の作業に追われる事でいっぱいです、と。でも、最後には、実はこんな柄を考えていてこの注染の技法を入れて完成させます。と話してくれました。その柄はまだ秘密ですが制作していました。笑。このprojectの先にこのように続く事が一番嬉しい事です。下川さんの新しい絣が楽しみです。
原
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