【もんぺとあたし / なべ編】もんぺ博覧会5日目。オランダのデザイナーの質問攻めで生まれた動画とオランダもんぺ。
もう4年近く前になりますが、うなぎの寝床に加入する直前に「ちょっと海外から久留米絣を見にデザイナーがくるので通訳をしてもらえますか」と声をかけてもらって、博多駅で落ちあったのが、オランダから来ていたテキスタイルデザイナーのエミリでした。
なんだかふらーふらーっと歩く癖のある不思議な人で、フランス訛りの英語(オランダ在住のフランス人)で囁くように、久留米絣やテキスタイルのことを聞かれて、最初はどうしようかと思いました。
当時は私もまだ久留米絣の織元に行くのは2回目くらいで、まったく絣の技法についても産地についても知識がなく、通訳するためにいろいろと質問をしながら、必死に理解をしようとした覚えがあります。
その後、エミリも含めたオランダ在住のデザイナー3人組と一緒に、久留米絣を一からデザインするプロジェクトがはじまりました。
製造に協力してもらった下川織物の下川さんも含めて、オランダとスカイプをつなげ、絣の工程や技法について説明するも、あまりにも複雑で言葉だけではなかなか伝わりません。
たとえば、機械織りの久留米絣には24反(約288m)というロットがあります。1mだけとか、10mだけとか、サンプルを作ることもできないのです。これは分業制で成り立つ「くくり」の工程で、200本ほどの糸の束を12束一気にくくるためです。
また、久留米絣は黒とか紺とか、暗い色が多いですが「なんでもっと明るい色・淡い色がつくれないの?」という質問も。これはよこ糸の柄合わせをするヌキ巻きという工程で、薄い色だと白との違いが見えにくく、綺麗に柄合わせができないためです。
こうした久留米絣特有の特徴や問題の原因も、工程を見てもらえれば、納得してもらえるのですが、海を越えている相手にすぐに来い!というわけにもいきません。
そこで制作したのが、こちらの動画なのです。機械織り、手織り両方とも工程を記録し、海外の方にも見てもらえるように、字幕をつけました。いまでは、視聴回数は2万を超えました。
※久留米絣の工程動画:https://youtu.be/a7bxWww3AR8
その後2年をかけて、オランダの彼らも何度か産地にも滞在しながら、デザイン・制作を行い、生まれたのが「Opening traditions」という久留米絣です。
あえて柄合わせをしないランダムな柄で、淡い色から濃い色まで、くくりの束を12色に染め分けて、24mにわたって柄が変わるダイナミックな久留米絣のアート作品。そしてその中の2色を抽出しつくったオランダもんぺ。
(詳しくはこちら:https://bit.ly/2WyePzm)
久留米絣の工程の「常識」を逆手に取ったデザインで、新たな可能性を提示してくれる面白いプロジェクトになったと思います。もんぺとしても他にはない面白い柄で、絣を見慣れた方でも「お!?」となる通好みの一本となっています。
私にとっても、彼らとの取り組みは、久留米絣の工程や技法について、深く突っ込んで学ぶきっかけを作ってくれました。
もんぺ博覧会でも、この工程動画は流しています。これをきっかけに、いまや世界的にも貴重になった、絣の技法のことや産地のことなど、ぜひ知っていただければと思います!
また、わたくし渡邊がご案内する「久留米絣ディープラーニングバスツアー」そして「もんぺでオルレ」もまだ若干名の空きありです!ご来場&お申し込みお待ちしております!渡邊
【久留米絣のもんぺ通販】※オランダもんぺは通販では品切れ中。もんぺ博会場にはおいていますので、お早めに!
https://bit.ly/1cbplzm
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