【地域のこと/観光協会】火が灯るところには、人が集う。祭りの夜に、提灯が結ぶ人と人のつながり / Yame Rediscovery vol.22
先日読んでいた本の中で、ホモ・サピエンスを猿ではなく人間たらしめた2つの知恵が、「石器」と「火」を使えるようになったことだったと書いてありました。
火は自然界に存在するものではありますが、日が昇ったら起きて日が沈んだら眠る、自然界の法則を破り、真っ暗な夜でも煮炊きをしたり、活動したりできるようになった、一種の革命だったのではないでしょうか。
火が灯るところには、食べ物が集まり、人が集まり、儀式や宴会が繰り広げられます。これは古代も現代も、一緒かもしれません。お祭りをともす「灯り」にも、そんな原始の感覚にも通じる高揚感があるような気がします。
同時に火や灯りは、世界中どこをみても宗教と密接に関わりのあるものでもあります。日本においては、お盆の時期に「盆提灯」を玄関や仏間に飾るのは、ご先祖さまの魂がその灯りを目印に帰ってこられるように、とされています。
あちらの世界とこちらの世界を、つなぐものでもあるのかもしれません。
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八女は実は「盆提灯」の一大産地です。盆提灯だけでいえば、全国シェアNo.1です。他にも仏壇・石灯籠の産地でもあり、かつては和ろうそくの産地でもありました。あちらとこちらを繋げるものづくりが一通り揃っています。
しかし、産地であるからこそ、作るまでは見られますが、実際に提灯が使われている風景を日常的に見られるわけではありません。
そんな中、今年の「あかりとちゃっぽんぽん」のお祭りでは、八女で生産している「盆提灯」500個ほどが、夜の白壁の町並みにずらずらっと灯されると聞き、八女提灯協同組合の組合長である伊藤三男さんにお話を聞きました。
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伊藤さんは、かつてのお祭りの姿を、懐かしそうに楽しそうに教えてくれました。
もっと若い人も多かった八女の町。仏壇職人も提灯職人も、電気屋さんも車屋さんも町内にはいて、毎年ねぶた祭りのように、自分たちの技術の総結集として自作の「あかり絵」を作り上げて、町内を練り歩いたのだそうです。
形もテーマも大きさも自由だったため、町区対抗戦のように白熱していき、一度は制作現場のホールから、持ち出しきれないほど大きな「あかり絵」を作ってしまい、一度解体する羽目になったこともあるのだとか。
お話を聞いていくと、お祭りの出し物というのは、それそのものではなく、作り上げて競い合うそのプロセスが、近所の仲間たちとの結束を強め、ひいては町全体の連帯感を生む行事だったんだと、実感ができました。
「お祭りは参加する人も見る人も、楽しめてこそ」と語る伊藤さん。かつて自分たちの結束を高め、日頃の技術を見せられる晴れ舞台でもあったお祭りを、今年は夜の提灯飾りという形で多くの人に見てもらいたいと話してくださいました。
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ちなみに、伊藤さん率いる「伊藤権治郎商店」さんは、八女の中では珍しく、盆提灯ではなくお祭り・神社仏閣・事業用などの特殊提灯を作る提灯屋さん。お祭りの期間中は、息子さん二人が企画した妖怪・魑魅魍魎が描かれた提灯の展示イベント「おどろおどろ」も開催するのだそうです。
様々な形の提灯に、自ら手描きの絵で妖怪や春画などを描くという、とても面白い取り組みです。
薄暗い町屋の中を歩きながら、まさにあちらの世界とこちらの世界の接点となる「灯り」を体験することができるでしょう。
他にも町並みには提灯付きのバンゴが設置され、八女の地酒やおつまみなどを楽しんだりすることもできるのだとか。今年初めての取り組みで、どんな幻想的な雰囲気が生まれるのか、楽しみです。お祭りでしか体験できない、八女の灯りの世界をぜひ訪れて見てください。渡邊
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「あかりとちゃっぽんぽん」イベント概要
HP: https://yame.love
●八女福島の燈籠人形公演
9月22日(土)~24日(月休)13:30、15:00、16:30、19:00、20:30の1日5回公演
口あけ公演は、9月21日(金)20:00 ※9月11日公演時間修正済※
場所:八女市宮野町・福島八幡宮境内
芸題:吉野山狐忠信初音之鼓
主催:八女福島の燈籠人形保存会
●町屋まつり
9月22日(土)~24日(月休)11:00~
●ショートショートフィルムフェスティバルIN福岡
9月22日(土)、23日(日)11:30~21:00
●八女うまかもんフェスタ
9月22日(土)、23日(日) 11:00~21:00
●宵のあかり竹燈籠と提灯
9月22日(土)、23日(日) 点灯15:00~21:00