【地域のこと/観光協会】夏にひんやりとする、幽霊の掛け軸。鏡のように映す、私たちの三毒の煩悩とは。/ Yame Rediscovery vol.17

【地域のこと/観光協会】夏にひんやりとする、幽霊の掛け軸。鏡のように映す、私たちの三毒の煩悩とは。/ Yame Rediscovery vol.17

今年はほんとうにひどい暑さですね。この暑さ、吹き飛ばすのにぴったりなものといえば…怖い話。

八女福島にある正福寺さん(うなぎの寝床の旧寺崎邸のお隣です)には、毎年お盆の3日間8月13,14,15日だけ飾られる掛け軸があります。それが「幽霊の掛け軸」。直球に怖いですが、これにはどんなストーリーがあるのでしょうか?

こわい幽霊の掛け軸のお話、そしてそれをお盆の3日間に公開する意味を、掛け軸を所蔵している正福寺の住職さんに伺いました。前回の「お盆と仏壇」の話とも繋がる、はっとさせられる仏教の教えが隠されていました。

幽霊の掛け軸

江戸時代の元禄元年、1688年のことです。坂田音五郎という久留米藩のお抱え絵師がいました。音五郎は殿様からお声がかかるまで、八女の正福寺で宿をとって寝泊まりしていました。

音五郎が正福寺にいたときは、ちょうど本堂の建て替えの時期でした。工事のために大工さんたちが出入りしていますが、大工さんたちは仕事をしたくないと言います。

正福寺の今遊具や広場になっているところは、昭和39年まではその何百坪全部が墓地でした。そこに毎日幽霊が出るので、大工さんたちは気持ち悪くて仕事にならないと言うのです。幽霊はこの世に怨みつらみを残したまま、成仏できずにさまよっているのでした。

そこで、宿にいた音五郎は住職さんと話し合いました。音五郎は幽霊をきちんと絵に描きとめてこの世に残して、幽霊を供養してあげることにしました。

音五郎が絵を描いている間、正福寺の住職さんはその絵が描き終わるまでずっとお経を読み続けました。やがて絵が完成すると、幽霊は安らかに成仏してもう出てくることはありませんでした。

そのときに描いた幽霊の絵が、お盆に見ることができるという「幽霊の掛け軸」です。まさにここ正福寺で描かれたものだったのですね。その恐ろしさはぜひ自分の目で確かめてみてください。

怒っているときの自分の顔、鏡で見たことありますか?

そんな恐ろしい幽霊の掛け軸は、私たちへの戒めです。この幽霊の姿は、私たちが怒りを発したとき、欲を持ったとき、愚痴を言っているときの姿を表しているといいます。

まず、顔は怒りの顔。喧嘩をしているときや文句を言ってるときの自分の顔って、見たことないですよね?鏡で見ると自分だとわからないくらい怖い顔をしているらしいですよ。

幽霊が手を下げているのは欲を表しています。熊手のほうきでガサッとかき集める行為です。欲しいものをいっぺんにかき集めて楽をしたいという気持ちです。子供がおもちゃを他の人に盗られないようにする姿勢にも見えます。

そして、足がない幽霊の姿。これは、愚痴を言って周りの人がすっと離れていく様子を表しています。愚痴は、言えば言うほど人が離れていく愚かな行為。最初は聞いてあげたとしても、いつも愚痴ばかりの人とは付き合いたくもありません。

怒り、欲、愚痴は、人間がどうしても拭い去ることができない三毒の煩悩と言われています。私たち人間誰しもが持って生まれた、どうしようもない気持ちです。幽霊の姿は、この三毒の煩悩そのものです。怒りと欲と愚痴にまみれた姿なんです。

この幽霊の掛け軸は、怒り、欲、愚痴、三毒の煩悩が出たとき、相手にとっては幽霊のように怖い様子に見えているんだ、ということを私たちに教えてくれます。見た人は「怖い!」と言うこともあるそう。でも、自分もこんな顔になってるときもあるんです。この掛け軸は、ただの絵ではなく鏡なんです。

そんないろんな意味で怖い掛け軸を、お盆の期間だからこそ開帳して見てもらうことで、普段の自分の顔、様子を振り返る機会にしてもらいたい、住職さんはそうおっしゃいます。

こんな幽霊みたいな顔にならないように、周りの人たちに感謝しながらすごしていきたいものです。幽霊の掛け軸のご開帳は8月13日-15日。ぜひそんなことも考えながら見てみてください。河合

◉「幽霊の掛け軸」お盆の開帳について
正福寺
〒834-0031 福岡県八女市本町東矢原町323
0932-22-2549
8月13日-15日(拝観料無料)

◉Yame Rediscoveryとは?
八女福島観光協会とうなぎの寝床による、福岡県八女市の福島地区の魅力を伝えるコーナーです。地域に眠っている魅力的な人・食・ことなどの観光資源を「Rediscovery=再発見」し、お伝えしていきます。

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