【タイ出張レポート】現地文化を理解しなければ、いくら日本の物が素晴らしくても、それは伝わらないし売れない。

タイ展示会

現地文化を理解しなければ
いくら日本の物が素晴らしくても
それは伝わらないし、売れない。

タイ出張から帰ってきました。3泊4日と短い出張でしたが、なかなか実りがある調査だったと言えると思います。僕らは、商工会議所のプロジェクトで今動いています。仏壇、提灯、石灯籠、手漉き和紙、独楽、それらの技術を使って、海外に対して物をつくって売って行こう、伝えて行こう!という趣旨のプロジェクトです。僕らうなぎの寝床は専門家として呼ばれ、プロジェクトのお手伝いをしています。今回のタイ出張は、展示会に出展し、市場調査をするというもの。

まずは、しっかり工程や歴史、
内情を把握することから。

来年から何かを作ることになるのですが、まず僕らが八女の産業の技術を知らないといけないということで、その技術調査から行いました。僕と渡邊さんで、各工房を周り、資料を集め、それを技術を分解していきました。なかなかに面白い作業です。今まで、おそらくこういう作業は幾度となくやられてきた作業だとは思いますが、みながそれぞれレポートを書いて終わり。どちらかというとクローズした資料になってしまっていて、みんなで共有できるWEBなどにオープンソースとしてアップされていませんでした。でも、それをちゃんと公開できればいいなと考えています。

今から産地で、デザイナーに関わってもらう場合などに、1から全部の工程を説明するのは非常に困難な作業です。しかし、作業効率などをしっかりと把握してもらうことが、物を作る時には非常に重要です。デザイナーがやりたいことをやるんじゃなくて、工程などを見ながら、そこからやれることを最大限引き出し、きちんと今の人々、ターゲットに届くような物に昇華することが大事です。しかし、作り手はそのまとめておくという作業が苦手な人種なので(これは、どうしようもなく仕方がない事実)、僕らみたいな、ものづくりの周りの人間がしっかりとまとめていく必要があります。まず第一はこの作業です。

タイのことは、タイの人に聞こう。
文化の違いを理解する。

前置きが長くなりましたが、タイではタイ人のMEDIATORのガンタトーンさんの話を聞くことができたのは大きな収穫だったと思います。MEDIATORはタイに進出したい企業や行政などの支援をしているコンサルタント期間です。ガンタトーンさんが、埼玉大学に留学経験があるので、日本語はもちろんペラペラだし、日本人の特性と経済状況、そしてタイ人の心理特性と経済状況をよく理解しています。僕らはそのガンタトーンさんにお話を伺いました。

日本は、中流階級、みんなある程度の所得がある。
タイは、30%の人間がある程度。物価の壁とピラミッド。

簡単に結論を言ってしまうと、ただタイに日本の物を持って来るだけだとまずは失敗するだろうということ。これは、大体予想がついていた事実ではあるのですが、特に八女の伝統工芸などは、日本においても高額な物です。それをそのまま海外に持って行って、物価が安い地域に持って行くと、現地感覚では恐ろしく高くなってしまいます。僕らが今売っているような商品、例えば久留米絣のもんぺとしましょう。久留米絣のもんぺは10000円します。それを、そのまま持って行くと20000円くらいの価格になります。運送費用、手続きや、相手方の手数料などいろいろ含めると。日本人にとっても高いと感じるものが、東南アジアの人にとってはより高いと感じるはずです。さらに言うと、綿織物などは東南アジア、インドなどは盛んで、大量に流通しているところに、同じ素材を投げても、なぜこれが良いのか、理解しずらいと思います。日本製という看板だけでは無理があります。

さらにさらに「伝統工芸」というと、日本においては厳かなきちんとしたもの。というイメージがなんとなくありますが、タイの人たちにとっては、手仕事のものは、田舎の農家の仕事だったり、都会で働けない人が仕方なくやっている仕事のようなイメージがあると聞きました。もっと家電とか、日本でいうデザイン雑貨のようなもの、工業製品に対しての憧れがあるようです。そういう同じ手仕事、伝統工芸というキーワードをとってみても、国が違えば印象が違うものです。

今タイで上手くいっているやり方。
これから考えていかなきゃいけないこと。

今、日本企業で上手くいっている物、売れている物というのは、日本で企画をして、それをタイの提携工場などに作ってもらうという方式です。ようは、知的財産とノウハウを切り売りしているということですね。確かにそういうことしか難しいだろうなと思います。去年インドにも行ったのですが、八女がやっているようなこと(手仕事と産業の間)は、クオリティは別として発展途上国だと普通にやられています。それは、工業化できずに仕方なくなっている側面もあります。八女においては、仕方なくというよりも、商業的な業者は、どんどん工業化していき、本当にこだわりの職人だけが今残っているという状況です。なので、クオリティはある程度担保されます。しかし、先進国でそれを続けていくのは難しいです。そうやって産業から伝統工芸へと指定され、なくなっていきます。

もし、日本の伝統工芸を東南アジアに持って行こうとすると、かなり限られた富裕層に向けての提案になってきます。しかし、その提案は大手の企業や、日本だけではなく、欧米の企業やものづくりも同じような事をやっていて、かなりのクオリティーと戦略を持ってやらないと難しいと感じました。今回のプロジェクトに関しては海外に対して売って行く、伝えて行く為のという前提がついているので、その部分を突き詰めて考える必要があるのですが、これはプロジェクトの外での話ですが、日本でやれる可能性も同時に探りながらやっていかないといけません。色々と考えさせられる機会となりました。

先進国から発展途上国に産業が移行していくというのは、資本主義社会に置いては自然な流れではありますが、同時に、日本において、何をしていかなきゃならないのか、ノウハウをどう現代に落とし込んでいくのかは常に考えていかないといけないことです。タイも物価と人件費がどんどんあがっていて、10年後、どうするのか、50年後どうするのか考えないといけないとお会いした紙をつくっている工場の代表の方がおっしゃってました。それぞれの国と人、文化。様々な環境の中でみんな適応していかないといけない社会ですね。大変です。こつこつとみなさんがんばりましょう。

白水

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