【考えたこと】遺産である。しかし、現役である。
遺産から学び、
現代に昇華できる知恵が集約した場所。
実は、今日から青森にいます。青森県立美術館での企画展に、すこーしだけ関わっており(ほんと間接的に少し)、あたかも自分達が関わったかのように、青森に行きたいがために、金魚の糞みたいに製作をした下川織物と宮田織物さんについてきました。僕らは、もんぺの型を提供しています。
青森空港は、福岡空港から直接の飛行機がなくて、いろいろ調べたところ、名古屋経由のフジドリームエアラインズが最も安いという結論にいたり、名古屋経由で青森へ上陸することを決めました。名古屋は目的でもなんでもない経由地でしたので、何も調べず、でも5時間くらい時間があったので、名古屋市内へ。百貨店などを見学した後「あ、トヨタある!」と気づき、トヨタ産業技術記念館へと向かいました。
久留米絣の織機は、
今もトヨタの自動織機を使用中!
トヨタに何故向かったかというと、トヨタは現在、自動車製造で認知されていることが一般的ですが、自動車の前は織機をつくっていました。現在も織機部門は残っており現代に合わせた生産効率を目指したものをつくっています。
そして、久留米絣、先日展示会を行った備後節織などは、このトヨタの古い織機を使って今も布を製造しているのです。この記念館には、どういう想いで創始者の豊田佐吉さんが織物を機械化し、自動織機が作られ、発展していったのかという部分から、織物の原始的な仕組み、紡績の原始的な仕組みから、その技術を応用していって、現代の布づくりが行われているという、過去から現代までの知恵・知識の伝達の過程をとても分かりやすく、人間的に紹介してくれています。
正直なところを言うと、こういう「産業記念館」なるところは、大体受付におばちゃんが一人いて、チケット渡して「ごゆっくり」とにっこり笑いかけてくれる。あとは勝手に散策するというスタイルが多いですが、さすがトヨタ、ばっちり解説をしてくれました。紡績の仕組みがしっかりとわかりました。やっぱりしっかり利益をあげている企業が、こういう歴史や知恵を公開してわかりやすく一般に伝えることができる施設をつくるということは、素晴らしいことだと思います。
僕らも(違うか、とりあえず僕が)、筑後地域でこういう博物館的な場をつくりたいなーと思っているので、かなり参考になりました。
遺産であり、現役であり、
それは、産業でなければならない。
まず入りでポスターがあって、コピーが素晴らしいと思いました。「遺産である。しかし、現役である。」ここ何年かで考えていることを的確に言い表したコピーでびっくりしました。トヨタがやってきたことは、知恵の積層であり、時代が変わって行けば、その形態はどんどん変わっていきます。それは遺産となっていくのですが、その知恵と仕組み自体はまったく古びておらず、現代の社会に適合できるように転換されていっています。もともと織機を作っていたトヨタは現代に合わせ車を製造するようになり、家や金融など、その周りに関しても事業をしっかりと起こしていってます。
久留米絣に関して見てみると、僕は「産業と遺産の間」だと思っています。伝統工芸と呼ばれるものは、すでに遺産化された物も多くあると思いますが、久留米絣に関しては、その知恵や技術がまだ現代に通用するレベルで受け継がれている。ギリギリの状態で適合してきていると思います。受け継がれてきた「知恵」は古き良きものとして「遺産」になろうとしている側面と、産業化していっている側面と両方見受けられるのです。僕はそこが結構面白いなと思い、未来を感じているので関わっています。
今、トヨタ織機が売っている織機はエアージェットやウォータージェット、レピアと呼ばれる高速織機です。時代と共に、効率を求め、より速く、より不良品が少なく、よりクオリティーが高く、それを求めていき、恐ろしい速さの織機が可能になっています。実際実演してくれるのですが、びっくりする速さです。人間がこの速さでやろうとすると、多分腕がちぎれます。
でも、僕はそこに久留米絣の生きる道があるような気がしてます。機械でやれることを追い求めて、それは時代に合わせて変わってきたことで、素晴らしい進歩だと思っています。しかし、それによって見落とされた部分、失った風合いがあると思っていて、それがまだ久留米絣には残されています。衣類を身につけるのは人間なので、その違いを理論ではなくて、感覚で僕は感じれると信じています。古いトヨタ織機を信じているというより、人間の本来の「心地よい」とか「なんか、いいね。」という曖昧な感覚を僕は信じています。
現代の最先端の技術から、原理まで知ることで、それがより確信に変わっていきました。みなさんがどう感じるかはわかりませんが、ぜひ行って欲しい場所です。では、今から青森探索です。