【考えること】土と空の間で、糸を紡ぐ。翔工房のこと。

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翔工房との出会いはもう何年前だろうか。僕は大学で建築を学び卒業したものの就職せず「次はデザインだ!」と息巻いて福岡のデザイン専門学校に入学した。しかし、少しもの足りず3ヶ月でやめてしまう。そして専門学校で出会った友人と僕と今一緒にお店をやっているハルと三人で、今では仕事と呼べるかどうかわからないがデザインの仕事をはじめた。もちろん食えるほどお金があったわけではないが、結構楽しく、真面目にデザインをやっていた。この時は福岡に住みながらの活動だった。久留米での案件があったので電車やハルのバイクで行き来していたのだが、とある縁から九州ちくご元気計画という厚生労働省の事業に3年間限定で関わらせてもらうようになった。簡単に言えば地域活性化のための事業である。商品開発をしたり、今あるいいものを売っていくための勉強会をしたりと...僕はうきは、久留米、小郡の担当で農業・工業・商業関わらず、様々な方と勉強会を進めていた。その中の一つが翔工房だったのだ。これが何年前の話しだろうか?もう6年前だ。

翔工房の主宰である田篭さんは、はじめ僕らと関わっていくことに関して、あんまり乗り気ではなかった。しかしやると決めたらビシッとやる方で、もう後戻りなんて考えられない。本気なんだ。僕も担当として何かをしないといけないという使命感があった。プロデューサーの江副直樹さんと翔工房のメンバーと一緒に、どうやったら翔工房がよくなっていくか毎月勉強会を行って考えた。

翔工房は「染め」「紡ぎ」「織り」全てを熟知している工房だ。翔工房というより主宰の田篭さんが熟知している。そして、生徒さんもレベルが高い。今こういう全てを学べる工房はめずらしく、こういう地方のゆったりとした環境だからこそできるという立地的なものもある。そこでただの織物教室ではなく、織物の先生や作家レベルをしっかりと育てていくプロジェクトをスタートさせようと試みたのがSHOテキスタイル研究所である。ただの趣味で織物を学ぶのではなく、より高いレベルを目指して学ぶ場である。3年前ほどに立ち上げ、それぞれにテーマを持って作品発表をしている。今回うなぎの寝床で行う展示会は、その研究生の作品発表の場でもある(もちろん販売する)。僕の目から見ると(偉そうに言える立場ではないが)3年前よりかなり良くなってきていると思う。荒さが少しずつなくなって物のクオリティはあがってきている。もちろん主宰の田篭さんの作品は別格なのだが、研究生の作品もすばらしい。

僕が社会人に成り立てのころからデザインも頼んでくれていて、WEBや紙媒体は今でもやらせてもらっている。田篭さんと色々やりとりをさせてもらって学んで来た部分もかなり大きい。

今回の企画展では、新しい取り組みとして「服をつくる」という分野に取り組んでいる。ウールの服である。手紡ぎの糸を入れ込んで織った布は、空気を含んで軽くとても暖かいのが特徴だ。もちろん既成の服よりは大分高くなってしまうけれど、それが妥当な値段だと思う。一般の人がポンと買える値段にはならない。しかし、それでいいと思っている。それは織物という労働と文化を知ってもらうためのきっかけになれば良いと思う。そして、そういう希少性がありより良い物を欲しいという方には、ぜひ身につけてもらいたいと思う。今回はワンピース、前ボタンのワンピース、カーディガン、ジャケットを展示受注する。ぜひ見るだけ、触るだけでも良いので足を運んで欲しい。

お店も3年目に突入したが、まだまだこの地方の良さを全然伝えることができていない。もっと発信した方が良い情報も、まとめた方が良い情報もたくさんあるのだけど、キャパが少なすぎてやれていない。少しずつ仕事の効率化も考えて、伝えれる量を増やしていきたいと思う。木曜日からの展示会お楽しみに。

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