【本を読む】創造する脳 茂木健一郎

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コンピューター(機械)と人間の関わり方について考える。

なんとなく、手にとって移動中に読みました。「情報」「IT」などが主流な時代が来たというのは、もう受け入れなければいけない事実であり、その中でコンピューターと人間が、どういう役割を分かち合うのかを嫌でも考えさせられる時代になりました。その中で「創造」という点に関しては、人間(動物)にできてコンピューターにできない強みだと思います。その「創造」について考えるためのヒントをもらった本です。機械と人間の感覚や感情の関係は、今からもどんどん変わっていくように思います。「はじめに」という所に載っていた、下記の三つの関係が、僕の中では最近気になっていた労働の質の変遷です。

1.肉体労働の時
かつて、物理的に力を出して仕事をする人間の能力は大切なものだった。エジプトのピラミッドも、日本の城も、基本的には人間の筋肉の力によってつくり出された。その当時は、肉体労働が、社会を動かしていく上でとても大切な資源であった。”

2.ホワイトカラーの時代

“蒸気機関が発明され、産業革命が起こると、単純な肉体労働はそれほど評価されなくなった。情報を書類に記録し、まとめていく官僚を含むホワイトカラーが大量に必要とされるようになった。先進工業諸国における学校教育は、基本的にホワイトカラーの養成を目指していたわけである”

3.ITの時代

“さらに、1940年代にコンピューターが発明され、今日のようなIT(情報技術)全盛の時代を迎えると、今度は人間の創造性が高く評価されるようになってきた。<中略>もはや、決まりきった情報処理を大量にこなす仕事は、コンピューターにやらせておけばよい。以前だったら大量のホワイトカラーが事務処理をしなければならなかったような仕事が、今ではクリック一つで簡単にできるようになった。”

この三つの時代の変遷は、そんなに長期間で変わってきた歴史ではないと思います。今僕はものづくりに関わる仕事をしていますが、職人というのは、1の肉体労働の部類に入ると思います。しかし、ただの肉体労働といいうよりも、感覚と技術が伴った肉体労働というニュアンス(創造を含む肉体労働)です。そういう仕事が海外にどんどん流れてきているように感じています。それは、成熟した社会ではある程度仕方がないことだと思いながら、どうにか残していきたいという思いもあります。今からはITや過去の技術を積み重ねて生まれる新しい技術をうまく使いながら、ものづくりをしていかないといけないと思っています。

僕は、社会人になるまで「全てものづくりも、食事でも、なんでもかんでも原始的に機械も使わずにものづくりをした方が絶対にいい。」という思い込みと強い思いがありました。しかし、実際はそうはうまくいかない。日本で物を手仕事でつくり、生計をたてるというのは、本当にむずかしいということが、いろんな現場を見てわかりました(本当に一握りの人間は手仕事で生計をたてるという事ができますが、誰でもという時代ではありません)。趣味としてや、アーティストとして手仕事にこだわるのはいいと思います。しかし、それを誰かに売って生計をたてようと思うと、やはり肉体労働での単純作業の部分(人間の創造性が必要ない部分)は機械で行った方が良いと思っています。適材適所なので、全てがという訳ではないのですが、やはり効率化できる部分はする。手仕事でしか出せない風合いや、そういう作業は手でやるということが必要に思います。

今、海外で安い人件費でつくられた物でも、質が高いものもたくさんあります。国内で生産するということは、それを超えていかなければなりません。知恵を絞って、創造力をフルに働かせないといけないと感じています。何がベストな選択かは、まださだかではありませんが、いろんな作り手の方と話しながら、そこにあったベストの形を考えていきたいと思います(別に頼まれている訳ではありませんが...)

僕がこの本を読んで考えたことはこんな感じ。私生活でも、仕事でも、今まで意識していなかった部分が明確に見えてくる本だと思います。ご覧あれ。白水

創造する脳

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