藍染・草木染・泥染・墨染など、天然染料で染めた衣服や小物。たまに目にはするものの、どこか遠い存在に思える方も少なくないのではないでしょうか。天然染料で染めた衣服は、扱い方やお手入れなど一手間はかかりますが、天然素材ならではのゆらぎや経年変化を楽しめることも特徴の一つです。無地はもちろん、さまざまな染色技法でつくられる柄物もあります。
うなぎの寝床でも、藍染や泥染のもんぺなど、天然染料を用いるつくりての商品をいくつか取り扱っています。その中で今回は、主に天然染料を用いて、多様な染色技法によって一つずつ手作業で染める工房「宝島染工」(福岡県大木町)の商品を手に取ってご覧いただける店頭特集「宝島染工のしごと 染色の多様な表現」を、2021年4月29日(木・祝)〜5月9日(日)まで、うなぎの寝床旧寺崎邸で開催します。
ゆらぎのある天然染料に楽しさや美しさを感じ、向き合われ、形として提案している宝島染工の仕事を知ってほしい。さまざまな染色技法を用いて染めた衣服を長く着続けてもらい、その味わいや経年変化を楽しんでいただきたい。そんな思いから今回の特集を考えました。
この期間中は、店舗で普段取り扱いがない、シャツやパンツ、ジャケットなども宝島染工さんからお借りして展示・販売します。お越しいただける方は店舗で、店舗にお越しいただくのが難しい方はオンラインショップでも一部取り扱いがございますので、ぜひご覧いただけますと幸いです。
店頭特集 「宝島染工のしごと 染色の多様な表現」
日にち : 2021年4月29日(木/祝)〜5月9日(日) ※5/6(木)は振替のためお休み
時間 : 11:00〜17:00
場所 : うなぎの寝床 旧寺崎邸
住所 : 福岡県八女市本町327
オンラインショップで取り扱いがある宝島染工の商品一覧はこちら
宝島染工とは?
宝島染工は、代表の大籠千春さんが「天然染料ならではの美しさや面白さを、手の届かない作品としてではなく、現代の経済循環の中でも当たり前に選べる商品として提供したい」という思いから、2001年に故郷・福岡県大木町に構えた工房です。
藍や草木などの天然染料を使い、1点ずつを手作業で染めていることが特徴の一つで、天然染料の美しさや面白みを世の中に伝えて残していくため、オリジナル製品も企画。多くの人が手に取れる、少し特別な暮らしに寄り添う服作りをしています。
天然染料を扱うには知識と経験が必要なため大量生産とは対極にあると言えますが、染め工程の数値化や仕込み方法を工夫するなどし、少人数で中量生産できる体制を作り上げています。定番でつくっているシャツやショールなどは、天然染料を知って楽しんでもらうために、着る人の体型や年齢・性別を問わない色や形を意識しています。
宝島染工の「天然染料と染め」
宝島染工の代表的な藍染には、主にマメ科の「インド藍」を使っています。国産の藍と比べると安価ながらも純度が高く、生産量が安定しています。一部商品では、手に届く価格帯での中量生産に耐えうるよう、化学藍と半分ずつで染める「半建て」も取り入れています。
他にも、茶系に染まる「ミロバラン」や「カテキュー」、濃い赤色の「蘇芳」、薄ピンクの「西洋茜」、カテキンで下染めし、地元・大木町の泥の鉄分で染め重ねる「泥染め」、煤と膠を練り合わせた墨を使った「墨染」など、さまざまな天然染料による多様な表現を可能にしています。
◯インド藍
キアイと呼ばれる マメ科 コマツナギ属の植物の葉を収穫し、アルカリ水を加えて抽出、沈殿を繰り返し乾燥させた物を染料として使用しています。日本における藍染めの歴史は古く、江戸時代から庶民に愛され親しまれてきました。虫よけ、消臭、殺菌作用等の効用があるとされています。
▽宝島染工がインド藍を使用する理由
国産の藍(本藍)では、キアイと同じく、藍色の色素の元となる「インジカン」が含まれるタデアイ(タデ科)という植物の葉を発酵させて染料液を作り、染めていきます。主な産地は徳島県ですが、タデアイの産地、生産量が減少し続けている現代において中量生産、そして日常手の届く範囲の商品価格に対応するために、宝島染工では安定した収穫があり、純度が高いインド藍を使用しています。
◯ミロバラン
モモタマナ科の樹木で、実を染料として使用しています。
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◯カテキュー
アカネ科の小木で葉や若枝を染料として使用します。タンニンを多く含むため泥染めの下染としても使用しています。
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◯泥
カテキューで下染を行い、宝島染工が工房を構える大木町の泥で反応発色して染めています。カテキューに含まれるタンニン分と泥土に含まれる鉄分の反応によりタンニン鉄の茶に染まります。
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◯墨
墨は松など油分の多い木と菜種油などの油脂を不完全燃焼させて得た煤(すす)と膠(にかわ)(動物の骨や皮に含まれるゼラチン質状のもの)を練り合わせて作ったものです。墨汁の濃度によって色の濃淡を作り出します。
MONPE 宝島染工 墨 たたき
その他にも、草木染と藍染を両方使い、互いにはっきりと引きたつように配色がなされたものもあります。
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宝島染工の「染め技法」
宝島染工は、日本の伝統的な染色技法である「※防染」の技術のみを用いて、すべて手染めで染色を行っています。絞り染め・板締め・たたき染めなど、古来より続くさまざまな防染技法をアレンジしながら、独創的な模様を生み出しています。染め工程の数値化やコスト・納期設定に取り組み、色の揺らぎや経年変化のある天然染料を、中量生産で提供する生産体制を作り上げています。
※防染とは、糸でくくったり糊や・ろうなどを付着させたりして染液がしみこむのを防ぎ、他の部分を染色して模様をあらわす方法です。古来より﨟纈(こうけち-絞り染め)・夾纈(きょうけち-板締め)・纐纈(ろうけち-ろうけつ染め)の三纈(さんけち)と呼ばれた基本技術があります。
◯絞り染め
糸や紐で布をくくったり,縫ったりして染液が染み込むことを防ぐことで模様を表現する技法。
・柳絞り 芯を巻き付けながらたたみ絞ったものを染める染色法です。
MONPE 宝島染工 藍 柳絞り
・手絞り格子 手でたたみ絞ったものを格子柄になる様に染める染色法です。
MONPE 宝島染工 藍 手絞り格子
◯板締め
生地を折りたたみ、2枚の板の間に挟んで強く締め、圧力によって染料の浸透を防いで文様を染め出す染色法。
◯ろうけつ染め
蝋で布を部分的に覆って防染することにより,模様を染めあらわした染色技法。
天然染料の経年変化
宝島染工のビッグシャツ ブラック(藍染+泥染)です。使い続けていくと少しずつ色味が変化していき、生地もやわらかく馴染んでいきます。
つかいはじめ1日目
経年後(約4年間着用)
つかいはじめ1日目
経年後(約4年間着用)
天然染料に合う素材を選んで染められた衣服は、何度も色を重ねて出るとろみ、独特の深みを持っています。もし色が落ちてくれば染め直す事もできますので、宝島染工と継続的なお付き合いを始めていただけたらと思います。
天然染料と対話する時間や手間を楽しむ宝島染工の衣服を、ぜひご体感いただけると幸いです。