【地域のこと/観光協会】仏壇の産地である八女福島で、いま一度、仏壇の意味を考えてみた @Yame Rediscovery 15

【地域のこと/観光協会】仏壇の産地である八女福島で、いま一度、仏壇の意味を考えてみた @Yame Rediscovery vol. 15

伝統工芸品の「仏壇」の生産地として有名な八女福島のまちですが、そもそもの仏壇の意味ってあんまり意識することがありません。ものづくりに関わると、素材や工程を見るとこはありますが、仏教の世界での仏壇の意味って知らないことが多かった!

うなぎの寝床でも、いま新しい仏壇を考えるプロジェクトに関わらせてもらっており、仏教や仏壇について、リサーチしたりお話ししたり、少しずつですが理解を深めていっている今日この頃です。

8月、九州ではお盆の時期です。仏壇まわりに人が増えるこの時期に、ほんとうの仏壇の役割、そしてそこにご先祖さまが帰ってくるという一大イベントであるお盆について、八女福島のお寺さんや仏壇屋さんに聞いてみました。

お盆には家族が揃って幸せ。でもそれって誰のおかげなんだろう?

まずはお盆について、「切子灯篭(きりことうろう)」から紐解いていきましょう。切子灯篭とは、上についている球から細く切った紙が垂れ下がったお盆の飾りで、提灯の原型ともいわれています。この形は、ちょっと怖いですが女性の逆さ吊り、苦しみを表しているんです。

これが、お盆の由来である「盂蘭盆経(うらぼんきょう)」というお経と関係があるそうで、盂蘭盆経とお盆本来の意味について、八女福島にある正福寺の住職さんに聞きました。

“お釈迦さまの弟子の一人に、目連(もくれん)さま という人がいました。ある日目連さまが、亡くなった自分の母親を神通力という特殊な力を使って見ていると、なんと餓鬼の世界に落ちて苦しんでいました。目連さまは驚いて、お釈迦さまにどうしたらよいか相談しました。

すると、お釈迦さまは「7月15日に仏や僧や大勢の人たちが集まって修行をするから、あなたにできるかぎりの飲み水と食べ物を施しなさい。それを施すことによってその功徳が実って、必ずあなたのお母様は救われます。」とおっしゃいました。

目連さまはその日から毎日、必死に川から水を運びつづけ、山に入って食べられそうな物を集め、修行僧たちに施しました。そして修行の最終日、みごとにその功徳が成就して、目連さまの母親はふっと苦しみの世界から救われました。”

これが盂蘭盆経というお話です。ここでどうして目連さまの母親は餓鬼の世界、つまり食べ物飲み物を口に入れることのできない世界に落ちてしまっていたのか。

ここ数十年、わたしたちは毎日十分に食べることができていますが、ほんの50年前、それよりもっと前は、家族全員でほんの少しの食料を分けなければいけない、食べ物のない時代でした。子供にひもじい思いをさせないため、ちゃんと育て上げるために、親たちは自分の食料を子供にまわします。「今日はお腹空いてないから、お前たちがぜんぶ食べなさい」と言って。

つまり、親の苦しみの上に子が育つというわけです。それは自分と親だけではなく、その前にも何代、何十代、何百代と続いてきた壮大な命のリレーです。誰かひとりでも欠けたら今の命はありません。

しかし私たちは成長すると、自分が子供だったことを忘れ、親に育ててもらった恩も忘れ、自分一人で育ってきたような錯覚に陥ってしまいます。そうやって忘れてしまったご恩に、せめて3日間ぐらいは気付きましょうというのがお盆なんです。

お盆に家族が揃って、今こうしてみんなで幸せに過ごし、美味しいものを食べられているのは、一体誰のおかげなのでしょうか。それは、苦しみながらも子を育ててくれた先祖代々の親たちのおかげです。

先祖代々つないできた命のリレー、今バトンを持っているのは私たちです。家族が全員揃ったところでそれを見つめて思うことが、本当のお盆の意味。

目連さまの母親は、そうやって子供のために苦しんできた親たちの象徴だったのです。そしてその様子をかたどったのが切子灯篭。先祖代々の親たちの苦しみが、お盆の装飾に現れていました。

今を生きる、家族のための仏壇。手を合わせて心を整えよう

お盆の時期にはご先祖さまが家に帰ってくるといわれていますが、一年中仏壇の中には仏さまがいらっしゃいます。この仏さまというのは、御本尊である阿弥陀如来さまやお釈迦さまのこと。ご先祖さまがいないときも、常に仏さまが仏壇にいらっしゃるのです。

八女福島にある明永寺の和尚さんの言葉を借りると「お仏壇は、生きている人のためのもの」。お浄土の世界に行って何不自由なく暮らしているご先祖さまは、残された私たち子孫のことを心配しています。

そこで、私たちは「日々充実した生活ができるように」と仏壇の前で仏さまを想い、心を整えます。仏さまとコミュニケーションをとり、しっかり見守られていることで、お浄土にいるご先祖さまも安心するんです。

これをサッカーで例えると、ピッチで走り回るプレイヤーが私たち、周りで応援しながら見守っているのがご先祖様。ご先祖様がボールをあやつったりはできませんね。応援して見守るだけですが、それがあるからプレイヤーもがんばれます。

仏壇の前で心を整えて仏さまを想ってみると、こちら側も見守られているような、ひとりではないような安心感。逆に見られているからこそ、悪いことに手が伸びないなんてこともありますね。

城後仏壇店の城後さんがおっしゃるには、仏壇は「家族の絆」。

自分のご先祖さまが浄土の世界に行き、仏さまにお世話になっています。そしていずれは自分もお世話になると考えると、そこに大きな時間のつながりが見えてきますね。壮大な家族を想うことで、今一緒にいる家族をより近く、より大切にしようと想える。それが仏壇の果たす役割ではないでしょうか。

ライフスタイルと一緒に仏壇も変わって、最近はどんどん簡素化される流れです。でも、形は問題ではありません。きちんと心をこめて仏壇の前で手を合わせることで、ご先祖さまは安心するし、なにより今を生きる自分の強さ、家族の強さにつながります。

今年はより、家族のことを考えるお盆になりそうです。そして、仏教の世界はまだまだ広くて深い!宗派や地域によって様々な仏教がありますが、どれも先人の考え抜いた哲学であり、今を生きる術です。おうちにある仏壇から、その扉をあけてみては?河合

◉Yame Rediscoveryとは?
八女福島観光協会とうなぎの寝床による、福岡県八女市の福島地区の魅力を伝えるコーナーです。地域に眠っている魅力的な人・食・ことなどの観光資源を「Rediscovery=再発見」し、お伝えしていきます。

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