【地域のこと/観光協会】伝統コマを作る隈本木工所に、新しい風が吹く / Yame Rediscovery vol.39

【地域のこと/観光協会】伝統コマを作る隈本木工所に、新しい風が吹く / Yame Rediscovery vol.39

八女地域は九州の中では伝統工芸の集積地といわれるほど、仏壇・提灯・和紙・竹細工・久留米絣などの大小さまざまな種類の伝統的なものづくりが残っています。

そのうちの一つが「八女コマ」です。マテガシという非常に硬い木材を使い、鉄芯をうったコマで、遊ぶときには相手のコマを叩き割ることで遊ぶ「喧嘩ゴマ」の一
種です。しかし、昔は男の子のスタンダードな遊びだったこのコマ遊びも、いまやレトロな文化となっています。

そこで隈本木工所6代目の隈本知伸さんは、木を削るロクロの技術を生かして「木のおもちゃ」をつくり、新たに職人として加わった柴田さんと一緒に、積み木や新しいデザインのコマも開発してきました。


今回、久々にお伺いしてみると、新商品「コロガルアニマル」で遊べるコーナーができていたり、体験ワークショップのスペースがあったり、コマのパッケージが変わっていたり・・・なんだか新しい風が吹いています。

何がきっかけで変化が生まれているのか?隈本さんにお伺いすると、「おーい」と奥に声をかけます。出てきたのは、昨年4月に入社した眞田賢一さん。九州大学で工業設計を学び、隈本コマの新しい商品の企画やデザイン、パッケージ開発などを進めています。

「もう次の世代に任せているんですよ。自分は彼らがやりたいと思うことに、技術的にどう応えられるかを考える役割です」と語る隈本さんもなんだか嬉しそうです。

コロガルアニマルは、従来のロクロ技術ではなく、数年前に導入した3D切削機を最大限活用して作っています。そのため手で削るのでは実現できない複雑な形が可能になり、生産効率もあがりました。

コロコロと転がるかわいらしい姿は、大人でも何度もやってみたくなってしまう病み付き具合。原点でもある、クルクル回すコマの姿にも通じます。若い世代の新しいアイディアがあったからこそ、生まれた商品です。


伝統的な「八女コマ」も、新しい姿に生まれ変わっています。鉄芯をつくってくれていた職人さんが辞めてしまい、一時材料確保が難航しました。ようやく新しい鉄工所を見つけることができましたが、値段は以前の何倍にもなってしまったそう。

昔のように子供がお小遣いで買えるようなコマはなかなか作れなくなってしまいましたが、今後は八女の伝統を伝える工芸品として、ギフトとして、祝物として使ってもらえたらという思いで、新しいパッケージもできあがりました。

八女にかぎらず多くの伝統工芸の産地は、何軒かの工房や職人たちが集まって「産地」を形成していますが、八女コマの場合はもう隈本さんのところ1件しか残っていません。

それは逆に言うと、従来の形を続けなければいけないという縛りなく、その伝統と技術は生かしながらも、新しいことに挑戦しやすい環境であるともいえます。

知育玩具や自然素材を使ったおもちゃなどに対するニーズは上がっていると、隈本さんは感じています。お客さんからの声に応えて「九州産木材」をしっかり伝えていくことも始めているそうです。これからますます新しいことが起こりそうな隈本木工所の動きに注目していきたいと思います。渡邊

◉隈本木工所(工房&ショップ)
〒834-0031 八女市吉田1507-3
Tel:0943-22-2955
定休日:日曜日
駐車場:あり

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