【産地紹介】材料はまずは身近なものから。地域の特色がわかる編組細工。

【産地紹介】材料はまずは身近なものから。地域の特色がわかる編組細工。

現代の日本では交通網や産業が発達し様々な素材が手に入ります。多くのものが手頃な価格でどこにでも売られているので、お金さえ払えばほとんどのものが容易に手に入りやすく私たちはその恩恵を受けています。
しかし一方で自分たちの使っているものがどこからきたのか、どこで、だれが、どのような思考でつくったのかというところがごっそりと抜け落ちてしまっている一面も見受けられます。もちろん知らなくてもそれで困ることはほとんどないでしょうし、そんなことを考える余裕などないこともあります。しかし、うなぎの寝床や旧寺崎邸にきてくださるお客様は、口を揃えて、「へえそうなんだ」「おもしろいね」「楽しい」と仰ってくださいます。テレビをつけるとクイズ番組が多いのも目につきます。人には知的欲求というものがあるのだと思う今日この頃です。知らないよりは知っておいた方が良いこともきっとあるでしょう。

前置きが長くなりましたが、うなぎの寝床や旧寺崎邸には、竹や木の皮などを使ってつくられたかご、袋、道具などがあります。それらを見ていると地域の特色が見えてきます。いくつかご紹介しましょう。

◎九州の竹細工
竹は温暖湿潤な気候で育つため、九州は竹林が多くそのため竹細工文化も発展したようです。確かに周囲には竹林が多いなと改めて思ったのですが、地元出身で身近であるがゆえに私の中にはなかった視点でもあります。久留米にあるらんたい漆器という工芸品は竹でできていますし、大分では別府竹細工が知られています。うなぎで扱っている竹細工を作っている長岡由記さんと石田淳さんが拠点にしている八女市立花町は、たけのこの生産・加工も盛んな地域で、隣接する熊本北部に向かう道中でも竹林が目につき、県をまたいで山鹿市には渋うちわをつくる栗川商店さんが(=うちわの骨が竹)、南関町には竹箸を作るヤマチクさんなどがあります。
一口に竹といっても様々な種類があり、八女とうきはの一部でしか採れない白皮竹など生育地域が限定されているものも存在します。

石田淳さんの竹細工(ちりかご、弁当かごなど)通販→https://shop.unagino-nedoko.net/?mode=grp&gid=2021556&sort=n
長岡由記さんの竹細工(かごバッグ、スリッパラックなど)通販→https://shop.unagino-nedoko.net/?mode=grp&gid=2021557
来民の渋うちわ(栗川商店)通販→https://shop.unagino-nedoko.net/?mode=grp&gid=2021550&sort=n

 



◎東北地方の編組細工
以前東方地方を訪れた際、印象として街路樹の木が大きくて高くて立派だな!というのがありました。気候が変われば樹木の育ち方も変わります。
うなぎでで扱っている商品のラインナップを見ると、地域によって採れる素材の違いがわかるのでとても興味深いです。秋田県角館市にあるイタヤ工芸が作る編組細工の素材は、イタヤカエデ、くるみ、山葡萄のつるなど、九州ではあまりなじみのないものばかりです。イタヤカエデは、木を鉈で割り剥いだ薄い板状の「ひご」を作りそれを編んでザルやバッグなどが作られます。「ひご」づくりは大変手間のかかる作業です。山葡萄は寒冷地で育つ植物で、熊が棲んでいるような山奥で採取するため入手が難しく作ることもままならない希少なものだと言えます。イタヤ工芸の編組細工は旧寺崎邸店頭にて展示・販売しています。

 



◎沖縄の編組細工
沖縄もまた気候の違いや文化の違いが興味深いです。景観で言えば沖縄ならではの気候と独自の文化に加え、アメリカ統治時代の影響もありその違いが街の景色も形成しています。
温暖な沖縄の木々や花は独特です。そんな沖縄で作られる編組細工の材料もやはり九州ではあまり聞きなれないものが多いです。まーに、くーじ、アダン、ビーグ、苧麻(ブー)など…葉、つる、繊維などそれぞれの特徴を生かしながら、生活用品を作ったり、結束用の紐として活用されたり、沖縄土産としても知られる指ハブやクバ扇なども作られてきました。
旧寺崎邸ではオープン当初から沖縄のものを仕入れていたため、さんぴん茶、もずくスープ、黒糖などもあり、八女いながら沖縄文化にも出会える楽しい場所だなと思っています。

富本衛さんのまーにかご、くーじかご通販→https://shop.unagino-nedoko.net/?mode=grp&gid=2062478&sort=n
南風盛哲雄さんの苧麻のショルダーバッグ通販→https://shop.unagino-nedoko.net/?pid=145089714



◎い草製品(岡山、八代など)
い草は畳やござの材料となる植物です。一大産地は熊本県八代市。岡山の倉敷段通でもい草が使われていますが、現在は材料を八代から取り寄せているそうです。
ものづくりの歴史においては、何にしてもまずは身近に手に入るものからスタートするのが自然の成り行きかと思います。しかし何らかの要因でよその土地に材料を求めることもあります。地元で調達できなくなった、地元産のものより質の良いものを求めて、あるいはコストがかからない、取り巻く社会情勢の変化など理由や要因もさまざまです。
ちなみに、八女から近い三潴郡大木町も産地として知られています。沖縄のビーグは実はい草のことで照間ビーグがよく知られています。

添島勲商店(い草マット、スリッパなど)の通販→https://shop.unagino-nedoko.net/?mode=grp&gid=2021568&sort=n



◎籐(とう・ラタン)細工(東南アジアなど温暖な地方)
籐(とう・ラタン)はヤシ科の蔓性植物で日本には自生していません。しかし日本では1000年ほど昔から輸入され、武器や建築などに利用されてきました。日本では採れないので大変貴重なものでした。製造技術が伝わったのは明治時代の頃です。国内でも作られるようになり籐の家具や椅子などはハイカラでモダンなものとして持て囃されました。
ツルヤ商店さんは山形市で明治40年創業、籐製品の国内生産にこだわって、かご類を中心に作られています。昨今では海外製の安価な製品が出回るようになり、国内の籐工芸産業は縮小し現在日本国内で作られる籐工芸品は僅かとなっています。
ツルヤさんでは職人さん5人ほどが製作にあたっています。寺崎邸で扱っているものはhairuというシリーズでデザイナーの小野里奈さんと共に作られたものです。現在の生活に合うようにサイズや形を見直し、脱衣かご以外の使い道もたくさんあります。ツルヤさんのものは結合部分など、丈夫さを考えて作っています。

プラスティック製品の普及で上記のような植物を使ったかご類は少なくなりましたが、こうしてかいつまんで見てみるだけでも、一見何の変哲もないかごひとつの中に、地域性や歴史など学べることがたくさんあり、さらに素材特性や工程を知ることでものづくりに携わる方々の試行錯誤や苦労を知ることができます。鬼木

ーつくり手情報ー
ご紹介した製品の一部は通販での購入が可能です。
長岡由記/石田淳(福岡県立花町)→通販
栗川商店(熊本県山鹿市鹿本町)→通販
添島勲商店(福岡県大川市)→通販
富本衛(沖縄県石垣市)のくーじかご、まーにかご→通販
南風盛哲雄(沖縄県石垣市)の苧麻(ブー)のアンツク(網袋)→通販

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