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【2000文字コラム 渡邊令】オランダ絣プロジェクト。久留米絣に新しい風を吹かせる、実験的な取り組みスタート。

6月 20th, 2016

【2000文字コラム 渡邊令】オランダ絣プロジェクト。久留米絣に新しい風を吹かせる、実験的な取り組みスタート。

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思いついたアイディアを書き留めていくエミリとニルズ@宮田織物
Emilie and Niels writing down ideas and inspirations@Miyata Orimono

外からの視点で久留米絣を捉える。
いい意味での「無理難題」で未来への種蒔き。

オランダ在住の3人組アーティスト。1年経って久留米絣プロジェクトに発展。

今週は、オランダからデザイナーのエミリ(Emillie Pallard)とニルズ(Niels Heymans)が来日し、一緒にテキスタイルを製作するため、どっぷりと久留米絣の世界に浸った一週間でした。今回は来日が叶わなかったもう一人のメンバー、篠田真紀子さんも含めた3人は、アムステルダムのデザインアカデミーで出会い、卒業後はそれぞれフリーランスでデザインの仕事をしながら、こうして時折一緒にプロジェクトを行っているそうです。3人とも現在はオランダ在住とはいえ、オランダで生まれ育ったのはニルズだけで、エミリはフランス出身、篠田さんは日本出身で、とてもインターナショナルなチームです。

今回のプロジェクトは、昨年6月にエミリが初めて八女を訪れ、何か一緒にできないか・・・という気持ちで久留米絣の織元を巡ったことからスタートしました。その頃、私はまだ八女に来ておらず、久留米絣についてもほとんど知らなかったのですが、通訳のお手伝いで同行することになり、織物の構造や専門用語も分からない中で、四苦八苦しながら訳したのを覚えています。あれから1年が経った今、前回よりは確実に久留米絣についての理解が進み、彼ら2人や織元さんも交え、興味深いディスカッションができて、個人的にも感慨深い時間でした。

フレッシュな視点を取り入れる。色や質感で実験をしてみたい。

これまでは、どんなコンセプトでどんなテキスタイルを作りたいのか、正直ほとんど分からないまま進んでいたので、今回の来日の際に聞かせてもらうアイディアや考え方をとても楽しみにしていました。そもそも私たちにとって、このプロジェクトに取り組む最大の意義は「フレッシュな視点を取り入れられること」。いい意味でも悪い意味でも、日本の「伝統文化」として捉えられる久留米絣の位置付けや、産地にとっては常識である工程や技術的制限などが多くあり、よそ者である私たちでさえ気付かない新しい可能性が眠っています。ヨーロッパという異なるバックグラウンドを持ち、テキスタイルデザイナー・工業デザイナーの視点でこの産地を見たときに、どのように映りどのように表現をするのか、その「実験」を一緒にするのが目的です。

2人から聞かせてもらったアイディアの中でも、特に面白いなと思ったのは「色の見え方の違い」でした。思い出してみれば、エミリは去年日本に来た際に「なんか色の組み合わせが不思議」としきりに言っていましたが、例えばトタンの屋根の色とか、工事現場で使われている機械の色とか、私たちの目には止まらない部分をバシャバシャ写真に収めていました。この地域の景色の中にある、様々な色と組み合わせを抽出し、織物に反映させてみようという試みはとても興味深いです。通常は20〜30cm四方のパターンの連続で織られる久留米絣ですが、彼らはその伝統と特性はしっかりと組み込みつつ、一枚の布全体を一つのストーリーと捉えて表現しようと試みており、とてもワクワクする提案がたくさんありました。

技術と表現のバランス。織元さんの試行錯誤にも触れる。

一方で織元さんにとって、彼らの提案は「技術的には可能だけど、あまりにも手間がかかるのでやらない」ものである場合も多々あります。通常の工程に組み込めるものをデザインするのも大切な軸であるとはいえ、実験的なプロジェクトである以上、織元さんにとっては負担となる可能性もあるため、少し心配していました。今回協力していただくことになった織元の一つ、下川織物さんへ見学に伺った際、2人からは早速「これは可能か」「これはどういう織りなのか」など、様々な質問が飛び出しました。その度に3代目の下川強臓さんは「あーそれなら、昔試して・・・」「あーあの生地どこだ・・・」「あーそれはこんな感じで・・・」と、テニスのラリーのように生地見本が返ってきました。
経営者である以上、織元さんは利益を生み続けなければなりません。そのため実験的な柄を常に生産できるわけではありませんが、下川さんはそんな中でもありとあらゆる実験をすでに試されていました。特に10年ほど前に取り憑かれたように色々試した時期があったそうで、その痕跡は下川さんの生地見本にしっかりと残っています。「普通の人は写真でアルバムを残すけど、僕は生地に生き様を残してる」という一見キザな(あれ、死語?)お言葉も、たくさんの生地を前にジーンと心に沁みました。

お金のはなし。「商品化」でしっかり利益を生めるように。

今回のプロジェクトはうなぎの寝床が元請けとなって生産コストを負担し、先日八女にも来てくださったオランダ大使館とDutch Cultureなどが展示会やプロモーションに関わる経費・旅費をサポートすることになっています。10月のダッチデザインウィーク(Dutch Design Week)で生地のインスタレーションを行うことももちろんですが、もんぺなどの「商品化」の道も探ることになります。これは久留米絣の工程上、最小ロットが24反(288m)という長さであることもあり、なかなか少量生産することができないためです。ただ面白い生地を作って、新しい可能性を提案するだけではなく、しっかり作った生地を商品化し利益を作るというのも、このプロジェクトの大切な要素なのです。まだまだ乗り越えなければいけない壁が多くありますが、久留米絣の未来に向けた種まきになることも願って、進めていきたいと思います。渡邊

【オランダチームのウェブサイト】
・Emilie Pallard : http://emiliepallard.com
・Niels Heyman: http://nielsheymans.com
・Makiko Shinoda: http://makikoshinoda.com
「第6回もんぺ博覧会」(詳細はこちら:http://bit.ly/26JUfcd
◎大もんぺ博覧会
東京展 | 渋谷ロフト | 6月9日(木)〜6月30日(木)
福岡展 | 松楠居| 7月16日(土)〜7月24日(日)
◎小もんぺ博覧会(うなぎの寝床のもんぺのみになります)
岡山展 | FRANK 暮らしの道具| 6月18日(土)〜7月3日(日)
【MONPE】
http://monpe.info
【久留米絣もんぺ通販】
http://bit.ly/1bLYM5p

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藍染絣工房も見学。メダカを見つけたエミリ。

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宮田織物の池田さん、原さん。ご協力ありがとうございました。

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織機で織られている生地を見学中@下川織物
Looking at how the textiles is woven on the looms@Shimogawa Orimono

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下川さんの生地見本を前に嬉しそうなエミリ@下川織物
Emilie looks delighted to see many past textiles @Shimogawa Orimono

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今回は動画プロジェクトも進行中です!お楽しみに。
Movie project also in progress!

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なぜかトライアルでお風呂のタオルとスポンジにやたら反応する2人。


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