【雑感にょろり】和紙のカタチ 自然の構造を作り変える

【雑感にょろり】和紙のカタチ 自然の構造を作り変える

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楮(こうぞ)が原料の、八女手漉き和紙。長い繊維を漉き分ける技術。

国指定の八女の伝統工芸品の一つ、八女手漉き和紙。八女の柳瀬地区という矢部川沿いのエリアを中心に、6件の工房が残っています(最盛期は2000件ほどあったそうです)。和紙が原料には、楮(こうぞ)・三椏(みつまた)・雁皮(がんぴ)の3種類がありますが、八女では楮が原料の和紙がほとんどです。楮はクワ科の落葉低木で、大きくなると3メートルくらいになります。その楮の木の樹皮の部分を剥ぎ、野菜を調理するかのように、煮て洗って晒して叩いて砕いて、白い繊維状にしていきます。昔は矢部川沿いのあぜ道や畑など、地元でもあちこちで栽培していたそうですが、現在は熊本の山鹿の楮を使っているそうです。九州の楮は他地域に比べると繊維が長いのが特徴(最大4.4cm)で、準備に手間がかかり漉くのにも技術がいりますが、丈夫な紙になります。

繊維の構造。自然の形を分解し、再び作り変える。

6件残る工房の一つ、溝田和紙さんのところへ先日伺った際、ちょうど「晒し」の工程を見ることができました。もともとは茶色だった楮の樹皮からキズなどの不純物を取り除き、美しい白色になっていました。広げて見てみると、植物ならではの繊維の構造。絡まり合う一本一本の繊維を分解し、別の形でふたたび絡ませたのが「和紙」なのだと実感します。あくまでも自然の素材が変形しただけのものなのです。

過酷な和紙づくり。日本のインフラを支えた仕事。

中国発祥といわれる紙作り。その技術と知恵の積み重ねはつくづく素晴らしいと思いますが、実際の作業は過酷です。八女地方では昔から「ゲズの木に登るか、手漉きにゆくか」という俗言があり、和紙を作る家に嫁ぐのは、とげのあるゲズの木(カラタチ)の木に登るくらいの覚悟が必要という意味だったそう。冬が最も締まりの良い紙ができる時期といわれ、川や水を使った工程が多く、寒さとの戦いでもあったからです。それでも障子紙や提灯の灯りなど生活のインフラだった和紙作りは、なくてはならない仕事だったんだろうと思います。渡邊

 

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