【うなDIGTIONARY #1 】ガラスってなんだっけ?

グラスや窓、ビン、メガネ、電球など身の回りにはいろいろな形をしたガラスがあります。一様にガラスと呼ばれますが、それぞれに種類があり、特徴が異なります。ガラスは身近なものではありますが、何からできているのか、どういう種類があるのかなどを意識することはなかなか少ないのでないでしょうか。今回は、うなぎの寝床で扱っているガラス製品やつくり手を通して、ガラスについて考えてみたいと思います。

目次
◯ うなぎの寝床で取り扱うガラスのつくり手
◯ ガラスは人類初の人工素材 !?
◯ ガラスは石からできている
◯ 身近なガラス3種類とカリガラス
◯ ガラス製品のつくり方いろいろ
◯ あとがき
◯ つくり手ごとの商品紹介


うなぎの寝床で取り扱うガラスのつくり手

現在(2020年8月)、うなぎの寝床では、太田潤手吹き硝子工房(福岡)副島硝子工業(佐賀)萩ガラス工房(山口)の3つの工房の商品を取り扱っています。

太田潤さんの手吹きのガラスは、酒瓶や窓ガラスを溶かして作られている再生ガラスで、ソーダガラスです。不純物を取り除いて溶かして作られるため、再生ガラスならではの手間がかかります。着色はほとんどしておらず、もともとのガラスの色を活かして作られています。無地のつるりとしたものだけでなく、モールと呼ばれる文様を施すなど、日常食器として陶磁器との相性を考えて作られています。小石原焼のルーツをもつ太田さんは沖縄でガラスを学びます。再生ガラスならではの気泡の入った、柔らかさと温もりを感じるガラスです。

萩ガラス工房のガラスはカリガラスになります。山口県萩市笠山で採取した石英玄武岩を使用したガラスです。代表の藤田さんが自ら軽トラで運び粉砕機で粒にして使用します。この石英玄武岩にはカリウムが含有されているのが特徴で、ソーダ灰を入れてソーダガラスにすることもできますが、萩ガラス工房ではこのカリウムを活かしたカリガラスをつくっています。原石からガラスまでの一貫生産を行っています。ソーダガラスに比べて300℃も高い温度で溶解する必要があり、それに耐えうる設備や光熱費が必要となります。萩ガラスの緑色は石そのものに由来し、着色料で調整していない自然の色です。日本で土地の特徴を活かしたガラスつくりを行う数少ない工房です。

副島硝子工業は、江戸時代後期から100年以上ガラスを作り続けています。佐賀藩が当時としては珍しいガラス窯を設置し、化学実験のためのビーカーやフラスコを作り、明治時代に入るとランプや食器などを作るようになりました。江戸末期から続く宙吹き技法のひとつ「ジャッパン吹き」を伝承しています。表面がとても滑らかで柔らかい曲線のガラスです。

ガラスは人類初の人工素材!?

ガラスは5000年以上前に初めてつくられた人類初の人工素材と言われています。紀元前1世紀頃に、シルクロード、北・南海路を経て日本へと伝わりました。日本最古のガラス玉は弥生時代の遺跡から発見されており、正倉院の宝物にはペルシアやイスラムのガラス器が収められています。室町時代後期、1549年にフランシスコ・ザビエルが来日。海外との交流により多くのガラス製品が輸入され、日本でも盛んにガラスが作られるようになりました。長崎で始まった近代ガラスは大阪、江戸、薩摩へと伝っていきます。江戸時代のガラスは、熱に弱くすぐ割れていましたが、リサイクルが進み大量に生産されました。しかし、長崎とヨーロッパとの貿易が栄え始めると国内のガラス産業は衰退。明治時代にはガラスくずの輸入が始まり、再びガラスが生産されましたが、明治政府は企業による工場生産を目指し、小規模なガラス会社が生産を担っていきます。発展と衰退を繰り返し、私たちの日常生活で使われるようになりました。

ガラスは石からできている

私たちの生活に欠かせないガラス。当たり前のように身近にあるガラスは何からできて、どうやってつくられるのでしょう。
一般的なガラスの3大原料は「珪砂(ケイサ)、ソーダ灰、石灰」です。まず、「珪砂」は石英の粒。珪砂が結晶化したものが水晶で、ガラスの主成分となります。硅砂を構成するケイ素は地球の表層の6割を占めています。次に「ソーダ灰」という草木を燃やした白い灰の粉。硅砂だけでは非常に熱に強く溶けにくいので、ソーダ灰を入れて溶けやすくします。最後に「石灰」という白い粉。学校の白線に使用されるものです。珪砂にソーダ灰を入れると溶けやすくなりますが、出来上がったガラスは割れやすくなります。石灰を入れることで強度を上げます。
これらの原料を高い温度の釜で溶かし、形をつくり、冷やします。形をつくる方法は、型吹き・型押し・鋳造・宙吹きなど様々な技法があります。

身近なガラス3種類とカリガラス

ガラスの主な原料とガラスの製法についてご紹介しましたが、次はガラスの種類についてです。ガラスの種類はとても多く、成分や使い道、製造方法などで分類され、種類や数え方によっては数千種類にもなるそうです。沢山あるガラスの種類の中で、私達が身近で普段使っているガラスはというと、大きく3つのグループに分けることができます。
1. ソーダガラス
2. 鉛ガラス
3. ほうけい酸ガラス

それぞれについて簡単にまとめてみました。
<ソーダガラス>
窓ガラスや、瓶、食器類に使用されている最も身近なガラスです。古代に最初に作られたガラスもこの種類のガラスと考えられています。3大原料を基本として作られ、ガラスの基本の「き」といった感じです。

<鉛ガラス クリスタルガラス>
高級食器や装飾品に使われるガラスで、スワロフスキーやバカラのガラスがこれにあたります。石灰の代わりに鉛を使用することで、屈折率が上がりガラスに透明感が出ます。柔らかいのでカットしやすくキラキラと美しく輝きます。精製は低い温度で出来てカットもしやすいですが、装飾の基準が高く、高い装飾の技術を求められるガラスです。

<ほうけい酸ガラス 耐熱ガラス>
実験用のガラス器具、薬瓶、照明器具などに使われるガラスで、私達の家庭では耐熱ガラスとして使用しているものです。ソーダ灰、石灰の代わりにホウ砂を使用しています。ホウ砂も鉱物の一種でホウ砂を混ぜたガラスは化学的な浸蝕や急な温度変化に強くて軽いガラスになります。

もう一つ、上で紹介した3種類の身近なガラス以外に知っておきたいガラスが「カリガラス」です。ソーダ灰の代わりにカリ(炭酸カリ)を使用しています。硬質で発色がよくガラスに艶があり、傷がつきにくいガラスです。

ガラス製品のつくり方いろいろ

現在日本に数多くあるガラス工房ではどのようにガラスがつくられているのでしょうか。
日本のガラス工房や工場の多くが原料を材料屋さんから購入し、調合したものを溶かして、形を作ったり装飾を施して仕上げています。また使用済みのガラスを溶かしてつくります。沖縄の再生ガラスがこれに当たります。ガラスの主原料である珪砂はオーストラリア産のものが主流。陶器や磁器、木工はその土地の材料を使うことが多いですが、ガラスはそのようなことがなく、土地性をガラス原料で表すことは少ないようです。ガラスの生産量は世界的に見て多い日本ですが、意外にも地域ごとの原料で作られているガラスはほとんどありません。一方海外では国ごと・地域ごとに原料が違い、装飾にもそれぞれの個性があるのが当然とのこと。ガラス製造に関しては、海外の方が歴史があるだけに発展し多様性があるようです。

私達が日々当たり前に使っているガラス。改めて「ガラスって何なのか」についていくつかの項目で紹介してきました。当たり前にあるものを、改めて知ったり、比較したりすることで新たな視点が加わることで、目にとめるきっかけのような何かが生まれると身の回りのものへの見方も少し変わるかもしれません。

2020年8月記

【ガラスを通して見えること】

同じジャンルのものづくりで作り手が複数にまたがってくると、個別の作り手の技術や思考などの要素だけでなく、「比較」することで理解が深まりそうな要素を意識し始めます。取り扱い品を通して、ガラス工芸分野の一端を紐解くキッカケにできないかと。現在取り扱っている、太田潤手吹き硝子工房(福岡)、副島硝子工業(佐賀)、萩ガラス工房(山口)の3つの工房は、それぞれ手吹きガラスという共通の要素はあるものの、技法や原料や歴史などで比べると全く異なる背景を持っています。キーワードを少し挙げると、ソーダガラス、カリガラス、クリスタルガラス、再生ガラス、琉球ガラス、ホウケイ酸ガラス、笠山の石英玄武岩、ケイ素、ジャッパン吹き、内ひび貫入ガラス、宙吹き、型吹き、精煉方(理化学研究所)などなど。ガラスの分野だけでも、知れば知るほど自然物や化学との付き合い方(扱い方)がものづくりなんだなと思います。まだ仕入れができていないガラス工芸の仕事があるので、今後も角度を変えながら、人とガラスの付き合い方をご紹介していきたいと思います。      /     キュレーション 春口

【つくり手ごとの商品紹介】

太田潤手吹き硝子工房 (福岡県東峰村)
https://unagino-nedoko.net/product/tax_maker/ota/
ガラスの種類 :ソーダガラス
主な製法  :手吹き

太田潤手吹き硝子工房について
1. 窓ガラスや酒瓶などを使用した、手吹き再生ガラス。
2. 基本的に着色をせず、再生ガラスそのものの色を使って作っています。ラムネ色は窓ガラス、クリア・モスグリーン・ブルーなどは主に酒瓶からできています。
3. 表面に凹凸のあるモール模様のグラスは、型の中でガラスを吹き、模様を付けます。加飾しすぎず、素直で日常に馴染むガラス作りをしています。

萩ガラス工房(山口県萩市)
https://unagino-nedoko.net/product/tax_maker/hagigarasu/
ガラスの種類 :カリガラス
主な製法  :型吹き、宙吹き

萩ガラス工房について
1. 山口県萩市の笠山でのみ採掘される石英玄武岩を主原料にして作れるガラス。ガラスに必要な成分が多く含まれる石で、カリが入っているカリガラスに分類されます。
2. 石英玄武岩そのものの緑色(石に含まれる鉄分の色)。透明にする場合は光の三原色の原理で、青や赤に発色する金属を入れて色を調整します。
3. 超硬質ガラスで融点が高い分、成形する時間が短く高い技術を要します。極薄つくりのグラスや、タンブラー、ちょこ、しょうゆ差し、内ひびグラスなどがあります。
4. 内ひびグラスは、ガラスの熱膨張率の違いを利用した耐熱のガラス。耐熱性があり膨張率が少ないガラスの間に熱膨張率の高いソーダガラスを挟んで積層ガラスを作っています。使い込むことで挟まれたソーダガラスのひびが進行して、景色が変わっていくガラスです。

副島硝子工業(佐賀県佐賀市)
https://unagino-nedoko.net/product/tax_maker/soejimagarasu/
ガラスの種類 :ソーダガラス
主な製法  :宙吹き

副島硝子工業について
1. 一般的にガラスの宙吹きは鉄の竿一本を使用しますが、ガラスの吹き竿2本を使って成形する技法「ジャッパン吹き」が特徴。「かんびん」はジャッパン吹きで作られています。
2. 縄文グラスは透明なガラスに色ガラスを巻き付け、色ガラスが弾けて離れ、この模様ができます。虹色グラスは透明なガラスに砕いた色ガラスをくるっとまぶすようにつけ、再度溶かすと虹模様が出来上がります。
3. その他に、銀箔が貼られた盃などもあり、いくつかの技法で作られた商品をご紹介しています。
※「かんびん」、「盃」は現在店頭のみの販売となります。年内に通販での販売も準備中です。

ガラスのお手入れ・保存方法

私達が普段使っているガラスのお手入れ方法を、再度確認してみたいと思います。ガラスは温度変化により膨張・収縮をするため、歪みが起こり割れる可能性があります。急な温度変化に対応できる、熱膨張率の低い「耐熱ガラス」や「食洗器使用可能」と記載がないものは、お湯や食洗器の使用が破損や傷の原因になります。一般的なガラスのお手入れと保存方法については、使用後は柔らかなスポンジと中性洗剤で優しく手洗いします。ぬるま湯で仕上げると汚れが落ちやすくなります。ただし江戸時代以前のものは熱に弱いため流す時は水を使用ください。拭いたり磨いたりする布は毛羽が立ちにくい布(ガラス専用クロスやリネンクロスなど)を選ぶと仕上がりがきれいになります。また、ガラスは衝撃に弱いので、重ねての収納や振動が伝わる場所は避けてください。長い間、使わないと曇ったり臭いがついたりすることがあります。なるべく普段使いしつつ、やさしく丁寧いなお手入れがおすすめです。

【うなDIGTIONARY】とは

うなぎの寝床が掘って掘って(調べて聞いて)得た情報や知識を、うなぎの寝床の視点を通しつつ記録していくものです。日々活動していく中で、商品やつくり手、産地、素材について調べたり、聞いたりすることで情報を得ていきます。ある情報を知ると、そこから別の情報を知るきっかけを発見したり、疑問が浮かんできたりします。そして、また調べて情報や知識を得ることができます。リサーチして得た情報は次へ次へと繋がっていきます。今後も深く深く掘り続けていきたいと思うので、手にした情報は随時更新していきたいと思います。この「うなDIGTIONARY」を通して、何かを掘り始めるきっかけを手にしてもらうことができれば幸いです。

* DIGTIONARYは、DIG(掘る)とDICTIONARY(辞書)を掛け合わせた造語です。